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第2章 となりの女神と狐様

11.新メニュー

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『どうでぇ! うっまいだろう?』

 西原は得意気に反り返った。霊界に自生しているキノコと山菜を使ったスープが完成したのだ。
 俺と蓮雫は食堂でそれを試食していた。

『キノコを干して使ったのがポイントだな。そのまま煮たり焼いたりもしてみたが、味があまり出てこなかったんだ。干した途端に、別物みたいに旨味が出てきたぜ!』

 確かに、スープにはしっかりとした出汁のような旨味を感じる。キノコを噛み締めると、さらにじゅわっと味が染み出した。山菜は食感が良く爽やかで、後味に少しほろ苦さが残るのが良いアクセントになっていた。

『こんなに変わるものなのだな……。食事等、身体を動かす為の力さえ得られればそれで良いと考えていたが……』

 蓮雫もすっかり感心している。

『違うぜ旦那! 美味いもんで腹も心も満たすから、もっと働ける元気が出るんだ。これは結構大事な事だぜ!』

『その点は同感だな。スープの出来は流石だよ。芋の方もシンプルだが美味いな』

 俺は蒸した芋に塩をかけて齧り付いた。

『米が無いからな。芋は畑の方で沢山獲れるみてぇだから、主食は蒸し芋にしたんだ。どっちも温度とタイミングさえ守れば、鬼達でも簡単に作れる。明日から暫くはこのメニューでいこうと思うが?』

『ああ、これでいこう。獄卒達も喜ぶだろう』

 蓮雫は微笑む。西原はコック帽代わりに頭に巻いていた天冠を外しながら続けた。幽霊が良くつけているあの三角のやつだ。髪はほぼ出ているので、あまり意味はない気がするが。

『なあ、旦那。今ある調味料もすぐに底をついちまう。友和が持って来てくれたみてぇに、俺ん家からも調味料やら道具やら持って来たいんだが構わねぇかい?』

『ああ、勿論だ。前回の偵察からも数週間経つし、あの神様の様子も確認してくるといい』

 西原はこちらに視線をよこす。お前はどうするという意味だろう。

『俺も行こう。その方が荷物も沢山持ち帰れるだろう』

『よし、じゃあ早速いくか!』

 西原は嬉しそうに袖をまくった。
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