23 / 92
第2章 魔王様バイトをはじめる
21
しおりを挟む
俺は無事に面談の約束を取り付けると電話を切った。
「午後のコンビニバイト、お前もこれからそこで働かせて貰えるか面談してもらう事になった。昼早めに来てくれってさ」
「仕事か、分かった」
「それまで六区の方案内してやるよ。人間界の観光なんてした事ないだろ?」
「……そうか? ではよろしく頼む」
マオは突然の俺の提案に驚いたようだったが、すぐに頷いた。
どうせこの先しばらく一緒に暮らすのなら、この街の事も知っておいて貰った方が良いだろう。
こうして俺達は、瞬間移動を使わず歩いて浅草の街を散歩する事にした。
日差しが厳しいが、この街の夏の景色は好きだったので、久しぶりにこうしてぶらぶらする時間が出来たのは嬉しかった。
建屋の合間から覗く空は、抜けるように青い。
何度か鳩のフンをくらいそうになったり、お婆さんのカートに轢かれそうになったりしたものの、マオが咄嗟に腕を引っ張ってくれて回避する事が出来た。
「お前の引きも相当なものだな……正直、魔法で防いだ方が楽なのだが?」
魔王は俺に代わってわざわざ車道側を歩く気の使いようで、少し呆れながらこちらを見た。
「う……分かった。災いから身を護る事に関しては、俺の許可なく魔法は使ってよし! でも、加減には気を付けてくれよ? 人を傷つけたり街を壊すのはナシな?」
「分かった」
魔王は俺の勝手な注文にも素直に頷く。こいつは本当に悪魔の王なのだろうか。
六区に入ると、外国人観光客や人力車とすれ違う機会がかなり増えてきた。
「あの、顔の無い絵画は何だ?」
記念写真用の顔ハメパネルを指差して、マオが不思議そうに呟いた。
「何かの拷問器具か?」
「街中にそんな物騒なもん置くか! あれは、あの穴に顔をはめて写真を撮るんだ……ほら、ああやって」
俺の指差した先では、ちょうど陽気そうな欧米人のグループが道の向こうからやって来て、携帯で写真を撮ろうとしていた。
俺達が見ていると、彼等はこちらに気が付いて、マオに走り寄ってきた。
「ア、チョト、シャシンイイデスカ?」
「な、なんだと?」
携帯を押しつけられて、異世界の魔王があたふたしている。
(やっぱり、彼等から見ても俺よりマオの方が話し掛け易いんだな……)
俺は人間として好感度で魔王に負けた事に少しだけ切なくなりながら、携帯を覗き込んだ。
「ほら、この丸いレンズをあいつらに向けて、こっちの画面で確認しながら、ここのボタンを押すんだ」
「んん?」
俺はマオの後ろから、手の位置を調整してやる。
「よし、いい感じ。じゃー撮りますよー! 3、2、1、押して!」
マオはなんとか、俺の指示通りシャッターを切った。
「ほら、上手く撮れたじゃん!」
マオは、今撮った画面と現実の彼等を見比べて、感心したように呟いた。
「時間を……切り取って保存する機械か? お前のケイタイでも出来るのか?」
「もちろん!」
俺達が話していると、観光客はきゃっきゃとはしゃぎながらこちらへやって来た。
「アリガトー! アナタモトリマスカ?」
彼女は自分の携帯を受け取ると、また手を差し出してきた。俺達の事も観光客だと思っているらしい。
「せっかくだから、撮ってもらうか?」
顔ハメ写真なんて恥ずかしかったが、マオが興味深そうに画面を眺めていたので、俺は自分のカメラを起動すると彼女に手渡した。
「ほらマオ、ここから顔だして!」
「……こうか?」
「OK! ハイ、チーズ!」
よく分からない芸人の絵から顔を出した俺達は、案外楽しそうに撮れていた。
「サンキュー!」
「アリガトー!」
携帯を返して貰うと、外国人観光客達は手を振りながら陽気に去っていった。
「魔王と地元でツーショット写真撮るとは思わなかったよ」
俺が笑いながらマオに写真を見せると、マオは目を輝かせてそれを見つめていた。
「午後のコンビニバイト、お前もこれからそこで働かせて貰えるか面談してもらう事になった。昼早めに来てくれってさ」
「仕事か、分かった」
「それまで六区の方案内してやるよ。人間界の観光なんてした事ないだろ?」
「……そうか? ではよろしく頼む」
マオは突然の俺の提案に驚いたようだったが、すぐに頷いた。
どうせこの先しばらく一緒に暮らすのなら、この街の事も知っておいて貰った方が良いだろう。
こうして俺達は、瞬間移動を使わず歩いて浅草の街を散歩する事にした。
日差しが厳しいが、この街の夏の景色は好きだったので、久しぶりにこうしてぶらぶらする時間が出来たのは嬉しかった。
建屋の合間から覗く空は、抜けるように青い。
何度か鳩のフンをくらいそうになったり、お婆さんのカートに轢かれそうになったりしたものの、マオが咄嗟に腕を引っ張ってくれて回避する事が出来た。
「お前の引きも相当なものだな……正直、魔法で防いだ方が楽なのだが?」
魔王は俺に代わってわざわざ車道側を歩く気の使いようで、少し呆れながらこちらを見た。
「う……分かった。災いから身を護る事に関しては、俺の許可なく魔法は使ってよし! でも、加減には気を付けてくれよ? 人を傷つけたり街を壊すのはナシな?」
「分かった」
魔王は俺の勝手な注文にも素直に頷く。こいつは本当に悪魔の王なのだろうか。
六区に入ると、外国人観光客や人力車とすれ違う機会がかなり増えてきた。
「あの、顔の無い絵画は何だ?」
記念写真用の顔ハメパネルを指差して、マオが不思議そうに呟いた。
「何かの拷問器具か?」
「街中にそんな物騒なもん置くか! あれは、あの穴に顔をはめて写真を撮るんだ……ほら、ああやって」
俺の指差した先では、ちょうど陽気そうな欧米人のグループが道の向こうからやって来て、携帯で写真を撮ろうとしていた。
俺達が見ていると、彼等はこちらに気が付いて、マオに走り寄ってきた。
「ア、チョト、シャシンイイデスカ?」
「な、なんだと?」
携帯を押しつけられて、異世界の魔王があたふたしている。
(やっぱり、彼等から見ても俺よりマオの方が話し掛け易いんだな……)
俺は人間として好感度で魔王に負けた事に少しだけ切なくなりながら、携帯を覗き込んだ。
「ほら、この丸いレンズをあいつらに向けて、こっちの画面で確認しながら、ここのボタンを押すんだ」
「んん?」
俺はマオの後ろから、手の位置を調整してやる。
「よし、いい感じ。じゃー撮りますよー! 3、2、1、押して!」
マオはなんとか、俺の指示通りシャッターを切った。
「ほら、上手く撮れたじゃん!」
マオは、今撮った画面と現実の彼等を見比べて、感心したように呟いた。
「時間を……切り取って保存する機械か? お前のケイタイでも出来るのか?」
「もちろん!」
俺達が話していると、観光客はきゃっきゃとはしゃぎながらこちらへやって来た。
「アリガトー! アナタモトリマスカ?」
彼女は自分の携帯を受け取ると、また手を差し出してきた。俺達の事も観光客だと思っているらしい。
「せっかくだから、撮ってもらうか?」
顔ハメ写真なんて恥ずかしかったが、マオが興味深そうに画面を眺めていたので、俺は自分のカメラを起動すると彼女に手渡した。
「ほらマオ、ここから顔だして!」
「……こうか?」
「OK! ハイ、チーズ!」
よく分からない芸人の絵から顔を出した俺達は、案外楽しそうに撮れていた。
「サンキュー!」
「アリガトー!」
携帯を返して貰うと、外国人観光客達は手を振りながら陽気に去っていった。
「魔王と地元でツーショット写真撮るとは思わなかったよ」
俺が笑いながらマオに写真を見せると、マオは目を輝かせてそれを見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる