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忘却の魔導士は不死鳥と再び誓約したい
第一話
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二人きりのテラスで、降り注ぐ流星群を切なそうに見つめながら、婚約者は微笑んだ。
『公国の天空城からは、昼と夜が入り混じった幻想的な風景が広がっているんだ』
アクアヴェイル・ブルーと呼ばれる澄んだ青い瞳がこちらを振り向く。
金色の髪がさらりと夜の風に揺れる。
『必ず一緒にみよう。約束する』
◇
「……うそつき」
暗く冷たい塔のなかで、セフィーネは震える声で呟いた。
あの幸せな時間は、もう二度と戻らない。
「そんなつもり、なかったくせに」
◇
憎しみは、英雄には向いていなかった。
『死神の鎌』を手に取った時、セフィーネの心にあったのは、ただ一人の男への復讐心だけ。
だから、これは――。
「そうね…ほんの、『余興』」
『火』を司る英雄、ティナ・カルナウスから、その力の源である不死鳥を奪いとってやる。
別に憎んでいたわけではない。
ただ、その他者の痛みを省みることのない、無自覚な強さと傲慢さ。
『属性継承者』という、その存在そのものに――
「うんざりしていたのよ」
鏡に映る『死神』の貌《かんばせ》が、静かに微笑んだ。
人ならざるチカラを得るため、差し出された聖杯の赤い水を飲み干したとき、一口ごとに身体中の血が凍り付き、痛みを感じる心が死んでいく気がした。
今ここにいるのは、『第一王女セフィーネ』?
それとも、『幻想の死神』?
「どちらでもいいわ」
復讐が叶うなら、何でも良かった。
無実の罪で幽閉された哀れな王女が、すべてを賭して復讐を誓った相手は、
かつて「あの空を一緒に見よう」と約束を交わし、そして閉じ込められた自分を見捨てた、あの男なのだから。
「どのみち、『余興』だもの。
『死神の鎌』は、英雄(あなた)の力すら奪えるのだと、知りなさい…!」
けれど彼女はまだ知らない。
その『余興』が、彼女自身の名前と記憶を世界から消し去ること。
そして――『属性継承者』と呼ばれる者たちを巻き込んで、世界の根底を揺るがす戦いの、幕開けになることを。
これは、憎しみの矛先を誤った一人の王女の物語。
そして――『力』を失い、何もかもを忘れた一人の英雄が、自らの拠り所を思い出すまでの、物語だ。
『公国の天空城からは、昼と夜が入り混じった幻想的な風景が広がっているんだ』
アクアヴェイル・ブルーと呼ばれる澄んだ青い瞳がこちらを振り向く。
金色の髪がさらりと夜の風に揺れる。
『必ず一緒にみよう。約束する』
◇
「……うそつき」
暗く冷たい塔のなかで、セフィーネは震える声で呟いた。
あの幸せな時間は、もう二度と戻らない。
「そんなつもり、なかったくせに」
◇
憎しみは、英雄には向いていなかった。
『死神の鎌』を手に取った時、セフィーネの心にあったのは、ただ一人の男への復讐心だけ。
だから、これは――。
「そうね…ほんの、『余興』」
『火』を司る英雄、ティナ・カルナウスから、その力の源である不死鳥を奪いとってやる。
別に憎んでいたわけではない。
ただ、その他者の痛みを省みることのない、無自覚な強さと傲慢さ。
『属性継承者』という、その存在そのものに――
「うんざりしていたのよ」
鏡に映る『死神』の貌《かんばせ》が、静かに微笑んだ。
人ならざるチカラを得るため、差し出された聖杯の赤い水を飲み干したとき、一口ごとに身体中の血が凍り付き、痛みを感じる心が死んでいく気がした。
今ここにいるのは、『第一王女セフィーネ』?
それとも、『幻想の死神』?
「どちらでもいいわ」
復讐が叶うなら、何でも良かった。
無実の罪で幽閉された哀れな王女が、すべてを賭して復讐を誓った相手は、
かつて「あの空を一緒に見よう」と約束を交わし、そして閉じ込められた自分を見捨てた、あの男なのだから。
「どのみち、『余興』だもの。
『死神の鎌』は、英雄(あなた)の力すら奪えるのだと、知りなさい…!」
けれど彼女はまだ知らない。
その『余興』が、彼女自身の名前と記憶を世界から消し去ること。
そして――『属性継承者』と呼ばれる者たちを巻き込んで、世界の根底を揺るがす戦いの、幕開けになることを。
これは、憎しみの矛先を誤った一人の王女の物語。
そして――『力』を失い、何もかもを忘れた一人の英雄が、自らの拠り所を思い出すまでの、物語だ。
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