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第四話 罪深い鏡に悶えて
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秀一の重みが、紗良の背に伝わってくる。
うつ伏せになった彼女の肩に、彼の唇が触れた。
吐息が肌を撫でるたび、紗良はシーツを握りしめ、背筋を微かに震わせた。
「紗良さん……もっと震わせたい」
囁きが耳元に落ちる。
その声が、皮膚の奥にまで染み込んでいく。
彼の指が、背中をゆっくりと滑り降りる。紗良は、ここまで懸命に声を堪えていた。
彼がふと、身を離す。ゴムを付け替えるためだった。
二度目が始まる、紗良がその予感に胸を高鳴らせていると、彼の娘の寝息が、隣室から微かに聞こえてきた。
その安らかな音が、現実の境界を引き裂くように、背徳の感覚を鋭く研ぎ澄ませた。秀一の手が、紗良の腰を包み込む。
ゆっくりと引き寄せられ、彼の熱が背後から深く入り込んできた。
紗良は、声を漏らした。
「あ……っ、ん……」
その声が、枕に吸い込まれていく。
彼の動きは、慎重だった。
だが、紗良の体が自然と受け入れ、腰をわずかに揺らすと、秀一の呼吸が荒くなってきた。
「紗良さん……もっと、感じて」
彼の声が、低く、震えていた。
律動が深くなる。
紗良の体は、弓なりにしなり、快感の波が背骨を駆け上がる。
視界の隅にある姿見に、乱れた髪のまま喘ぐ自分と、背後で欲望を露わにした男の動きが映っていた。
その倒錯的な光景が、羞恥と興奮を同時に煽る。
紗良は、鏡から目を逸らせなかった。
自分が、他の男に求められ、蕩かされている。その事実が、まるで夫への復讐のように感じられた。
「もっと……強く……強くしてっ」
首を振りながら紗良は、小さく叫んだ。
秀一は、唸るように腰を深く打ちつけていく。
紗良の指先が、シーツを掴み、爪が布に食い込む。
その動きに合わせて、彼女の体は波打つように揺れた。
やがて、秀一は動きを止め、紗良の体をそっと仰向けに戻した。
彼女の胸が、汗に濡れて艶めき、呼吸が浅くなっていた。
「紗良さん……鏡の前に、来て」
その言葉に、紗良の体が一瞬だけ硬直した。
一年前、夫に求められたのは、まさにそれだった。
鏡の前で、裸のまま跨ってほしい。自分の姿を見ながら、男の上で動いてほしい──。
あの夜、紗良は「そんなことできません」と、普通の愛を求めた。以来、夫が触れなくなったのは、あれがいけなかったのかと、思い悩むこともあった。
それが、今の彼女を変えた。
ゆっくりと身を起こし、鏡の前に立った。
背後から秀一が座り、紗良の手を取りながら、膝の上に導く。
紗良は、彼の太腿に背を向けた状態で跨り、背筋を伸ばした。
鏡の中に映る自分の姿。濡れた髪、紅潮した頬、少しだけ揺れる胸の起伏。
その下で、秀一の手が腰を支え、ゆっくりと体を導いていく。
「……綺麗です。全部、見えています」
その言葉が、羞恥と快感を同時に煽る。
紗良は、顔を隠しながら、ゆっくりと腰を動かし始めた。
夫には拒んだその行為を、今、別の男の上で受け入れている。
その事実が、紗良の体をさらに深く、甘く震わせた。
「紗良さん……もっと、見てください。自分がどんな格好をしてるか」
背面騎乗位──。秀一の囁きに、紗良は鏡の中の自分を見つめた。こんな女の姿など、見たことがなかった。自分で自分の姿が、色めいて見えた。彼が下から、さらに強く打ち付けてきた。もう顔を隠す余裕もなくなった。
大きな声と、肉の音が室内に響き始める。
自分の体が、男の上で揺れ、濡れた音を立てながら快楽に沈んでいく。
「ああっ……んっ……あっ!」
その光景が、倒錯的な悦びとなって、紗良の奥を満たしていく。より激しさを求めて、自らの身を狂おしく許していたその時──。
彼が彼女の口を力強く押さえて、動きを止めた。
──ん、んぅっ。
隣室の静寂が、微かに揺れる気がした。足音らしいものが聞こえてくる。
秀一と紗良は、動きを止め、息を潜めた。
背徳の熱が、急速に冷える。
しばらくして水の流れる音が聞こえた。そして足音が娘の寝室へと帰っていく。
紗良は、背後に振り返り微笑んだ。
「トイレ、でしたね?」
秀一の手が腰を支えたまま、また腰を動かし始めた。この間、硬さは失われていなかった。
「秀一さん、秀一さん!」
羞恥と罪悪感が、快楽の底に溶けていく。
そして、脈動があった。彼は紗良の胸をぎゅっと掴んで、腰をゆさゆさと動かしながら、彼女の中で放出していく。汗と呼吸が二人の全てを支配していた。
彼がゴムを外している間、紗良は秀一のそこにまだ元気が残っているのを見て、言った。
「もう一回いけますよね?」
新しいゴムはもうないようだった。それでも紗良は、シーツの上に膝をつき、背を丸めた。
すると、彼が後背位の姿勢で、再び入ってくる。
紗良は、枕に顔を埋めながら、甘い声を漏らした。
「あっ……ぁあ……秀一、さん……っ、秀一さんっ」
その声が、部屋の空気を震わせる。
最高潮が近づいた時、秀一は紗良の手を握りしめ、彼女の名を呼んだ。
「紗良……っ」
その声に、紗良は爪を立て、彼の背中を強く引き寄せた。
体の奥で、熱い奔流が弾ける。
紗良の目からは、快感とも悲しみともつかない涙が再び溢れ出した。
秀一は、その涙を指で優しく拭い、静かに唇を重ねた。
すべてが終わり、静寂が部屋を支配する。
寄り添う肌の温かさと、お互いの鼓動だけが、そこにある確かな現実だった。
うつ伏せになった彼女の肩に、彼の唇が触れた。
吐息が肌を撫でるたび、紗良はシーツを握りしめ、背筋を微かに震わせた。
「紗良さん……もっと震わせたい」
囁きが耳元に落ちる。
その声が、皮膚の奥にまで染み込んでいく。
彼の指が、背中をゆっくりと滑り降りる。紗良は、ここまで懸命に声を堪えていた。
彼がふと、身を離す。ゴムを付け替えるためだった。
二度目が始まる、紗良がその予感に胸を高鳴らせていると、彼の娘の寝息が、隣室から微かに聞こえてきた。
その安らかな音が、現実の境界を引き裂くように、背徳の感覚を鋭く研ぎ澄ませた。秀一の手が、紗良の腰を包み込む。
ゆっくりと引き寄せられ、彼の熱が背後から深く入り込んできた。
紗良は、声を漏らした。
「あ……っ、ん……」
その声が、枕に吸い込まれていく。
彼の動きは、慎重だった。
だが、紗良の体が自然と受け入れ、腰をわずかに揺らすと、秀一の呼吸が荒くなってきた。
「紗良さん……もっと、感じて」
彼の声が、低く、震えていた。
律動が深くなる。
紗良の体は、弓なりにしなり、快感の波が背骨を駆け上がる。
視界の隅にある姿見に、乱れた髪のまま喘ぐ自分と、背後で欲望を露わにした男の動きが映っていた。
その倒錯的な光景が、羞恥と興奮を同時に煽る。
紗良は、鏡から目を逸らせなかった。
自分が、他の男に求められ、蕩かされている。その事実が、まるで夫への復讐のように感じられた。
「もっと……強く……強くしてっ」
首を振りながら紗良は、小さく叫んだ。
秀一は、唸るように腰を深く打ちつけていく。
紗良の指先が、シーツを掴み、爪が布に食い込む。
その動きに合わせて、彼女の体は波打つように揺れた。
やがて、秀一は動きを止め、紗良の体をそっと仰向けに戻した。
彼女の胸が、汗に濡れて艶めき、呼吸が浅くなっていた。
「紗良さん……鏡の前に、来て」
その言葉に、紗良の体が一瞬だけ硬直した。
一年前、夫に求められたのは、まさにそれだった。
鏡の前で、裸のまま跨ってほしい。自分の姿を見ながら、男の上で動いてほしい──。
あの夜、紗良は「そんなことできません」と、普通の愛を求めた。以来、夫が触れなくなったのは、あれがいけなかったのかと、思い悩むこともあった。
それが、今の彼女を変えた。
ゆっくりと身を起こし、鏡の前に立った。
背後から秀一が座り、紗良の手を取りながら、膝の上に導く。
紗良は、彼の太腿に背を向けた状態で跨り、背筋を伸ばした。
鏡の中に映る自分の姿。濡れた髪、紅潮した頬、少しだけ揺れる胸の起伏。
その下で、秀一の手が腰を支え、ゆっくりと体を導いていく。
「……綺麗です。全部、見えています」
その言葉が、羞恥と快感を同時に煽る。
紗良は、顔を隠しながら、ゆっくりと腰を動かし始めた。
夫には拒んだその行為を、今、別の男の上で受け入れている。
その事実が、紗良の体をさらに深く、甘く震わせた。
「紗良さん……もっと、見てください。自分がどんな格好をしてるか」
背面騎乗位──。秀一の囁きに、紗良は鏡の中の自分を見つめた。こんな女の姿など、見たことがなかった。自分で自分の姿が、色めいて見えた。彼が下から、さらに強く打ち付けてきた。もう顔を隠す余裕もなくなった。
大きな声と、肉の音が室内に響き始める。
自分の体が、男の上で揺れ、濡れた音を立てながら快楽に沈んでいく。
「ああっ……んっ……あっ!」
その光景が、倒錯的な悦びとなって、紗良の奥を満たしていく。より激しさを求めて、自らの身を狂おしく許していたその時──。
彼が彼女の口を力強く押さえて、動きを止めた。
──ん、んぅっ。
隣室の静寂が、微かに揺れる気がした。足音らしいものが聞こえてくる。
秀一と紗良は、動きを止め、息を潜めた。
背徳の熱が、急速に冷える。
しばらくして水の流れる音が聞こえた。そして足音が娘の寝室へと帰っていく。
紗良は、背後に振り返り微笑んだ。
「トイレ、でしたね?」
秀一の手が腰を支えたまま、また腰を動かし始めた。この間、硬さは失われていなかった。
「秀一さん、秀一さん!」
羞恥と罪悪感が、快楽の底に溶けていく。
そして、脈動があった。彼は紗良の胸をぎゅっと掴んで、腰をゆさゆさと動かしながら、彼女の中で放出していく。汗と呼吸が二人の全てを支配していた。
彼がゴムを外している間、紗良は秀一のそこにまだ元気が残っているのを見て、言った。
「もう一回いけますよね?」
新しいゴムはもうないようだった。それでも紗良は、シーツの上に膝をつき、背を丸めた。
すると、彼が後背位の姿勢で、再び入ってくる。
紗良は、枕に顔を埋めながら、甘い声を漏らした。
「あっ……ぁあ……秀一、さん……っ、秀一さんっ」
その声が、部屋の空気を震わせる。
最高潮が近づいた時、秀一は紗良の手を握りしめ、彼女の名を呼んだ。
「紗良……っ」
その声に、紗良は爪を立て、彼の背中を強く引き寄せた。
体の奥で、熱い奔流が弾ける。
紗良の目からは、快感とも悲しみともつかない涙が再び溢れ出した。
秀一は、その涙を指で優しく拭い、静かに唇を重ねた。
すべてが終わり、静寂が部屋を支配する。
寄り添う肌の温かさと、お互いの鼓動だけが、そこにある確かな現実だった。
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