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【第三部】甘い水が二つ
22.姉の指を濡らす
その日の翔太は最後の追い込みでいつも以上に遅くなるようだった。だが、これで明日からは定時退勤の体制に戻れることになっている。
姉妹が食事を終えて、リビングで入浴時間まで少しリラックスする。いつもはニュース番組をつけているが、日奈子がリモコンを手にして画面を切った。
佐奈子が二人分のアイスコーヒーをグラスに注いで、ストローを入れたときだった。
「どうしたの、姉さん?」
佐奈子は、日奈子の前にグラスを置き、座って自分のアイスコーヒーを飲み始める。
日奈子がグラスにコーヒーフレッシュを投入し、ストローで混ぜながら、尋ねる。
「佐奈子、聞いてもいい? 恋愛経験、あなた二人でしょ?」
佐奈子の口からストローが落ちた。
「今、あたしの口から姉さんの顔にコーヒーかけさせようとした?」
日奈子は「違うよ、そんなつもりなくて。ほんとに聞きたいの」と力のない声で言った。
佐奈子は耳の中に指を入れながら、「あたし、年齢=モテ期だから、もっと多いかなぁ」と冗談めかす。
「何人?」
その質問は真剣だった。
佐奈子も真顔になり、グラスに目を向ける。
「笑わないよね? 見下したりしないよね?」
「しない。……絶対」
「……三人だけど?」
すると日奈子が顔を背けて、しばらく震えた。かと思うと、ぷっと笑った。佐奈子はグラスを置いて立ち上がり、彼女の頬を両手で掴んで、向き直させた。口を開けて笑ってた。
「この嘘つき! 姉さんの三倍もあるんだから、達人級だよ? もうっバカ!」
「ごめん、ごめん。バカにしたつもりじゃないよ。だって最近よく私に大先輩みたいに愛の説教するから、その割にちょっと、思ったより少ないと思って、つい」
「思ったより少ないって、そっちはそっちで少し腹立つな」
日奈子の謝罪に、佐奈子は手を離し、ソファに背を預け直した。
「ま、いいよ。何か聞きたいことあるんでしょ」
日奈子はグラスを置き、膝を寄せる。
「あのさ、佐奈子。男の人が積極的になったら、どうやってるのか、聞きたくて……」
小さな声に佐奈子の思考が駆け巡る。深刻そうに目を細めて、軽く答える。
「なんだ、そんなことか。連戦連敗の佐奈子に言わせれば、簡単だよ。自分も積極的になる。それだけ」
「その積極的ってのが、わからなくて……」
佐奈子は呆れたように笑う。
「あはは……。前から思ってたけど、姉さんたち、夜にあんまり声や音立てないよね。教科書通りのことばっかしてるんじゃない?」
日奈子は「教科書なんか、ないでしょ?」と返して、頬が赤らむ。佐奈子は続ける。
「物の例えだよ。マジで清らかすぎるんだから。ピューリタンの再来かと思う。急に積極的になったってことは、もともとはどうだった? もしかして弱いとか?」
日奈子は口に手を当て、「うーん」としばらく考えたあと、スラスラと答えた。
「翔太は、精力も性欲もしっかりあって健康的。でも、もともと慎重なの……今でも遠慮がちかなって思うことがある。それでもね。この前は、顔だけじゃなくて……こことか、ここにも強く口付けてきたの」
そう言って指差したところは、大胆だった。乳房や谷間、そして、腹部から太ももに至り、一瞬ばかり秘部にも当てられていた。
彼女は恥ずかしそうに目を伏せる。
「嬉しかったけど、びっくりして。どんな反応したらいいのか、わからなかった。変わっていく翔太に、どうやってついていけばいいのか、まだわからない。そうしているうち、あれっきり翔太もまた元通り大人しくなってて……」
「もうそこにキスしなくなった?」
「うん、いつも通り」
佐奈子は、呆れるような顔をした。
「男がそこにキスするってのは、愛情と欲求でやるんだけど、それはひとつのサインでもあるわけ」
「サイン?」
「自分もそうされたいの」
すると、日奈子はとても驚いた顔をして、「えぇ……そんなことしていいの?」と尋ねた。「不潔じゃないの?」
「姉さんがしたくない、気持ち悪いって思うなら無理にしなくていい。翔太さんも姉さんのそういうところが好きなんだろうし」
佐奈子の中で少し複雑な気持ちがあったが、今はそれよりも先に目の前にいる姉への心配が勝っていた。
「いえ、翔太のそこが汚れないかって」
「あ、そういう心配? もしかして『フェラ』って知らない?」
「……フェラ?」
日奈子は首を傾げた。佐奈子は予想以上のことに頭がこんがらがってきた。これが本当に自分の双子の姉だろうかと考え、自分が薄汚い動物のように思えてきた。
「じゃあ、甘噛みってわかる?」
「犬や猫がじゃれて、やるやつ?」
「そう、それ! それをやるの……女が男のアレに」
「……動物じゃないのに、そんなことやってもいいの?」
「いいんだよ! 動物になるのッ。あー、これは翔太さんの帰宅が遅いうちに教えるしかないよね。緊急個人指導。あ、メモ帳とか筆記具とかいらないから。ちょっとこっちきて」
佐奈子は自分の隣に、日奈子を招き寄せる。
「甘噛みと、フェラチオだけは教えるね。前者はいいけど、後者は外で言っちゃダメな言葉だかんね」
互いの香りが近づく。
「まず、甘噛み。噛むって言っても、傷つけないように、優しくするの」
佐奈子は日奈子の手を引き、自分の肩に当てた。
「旦那さん以外が人妻に噛み跡つけるのはダメだから、姉さんからあたしを噛んでみて」
日奈子はためらいながら、佐奈子の肩に唇を寄せ、軽く歯を当てる。「……こう?」
彼女の唇が柔らかく触れる。しかし、これはただ唇と唇で皮膚の柔らかいところを挟んだだけだ。
佐奈子は笑い、「もっと唇で包む感じ。じゃあ、歯型をつけないぐらいで、あたしからやってみせるね。ほら、こう」
彼女は日奈子の指を手に取り、ゆっくり唇で挟み、舌を軽く這わせた。ぬるりとした感触が、姉の指を濡らす。唇と唇だけで噛まれて、これまでにない感情が押し寄せてきた。佐奈子の口先は続けて別の指に移り、目を閉じたままそちらも甘く唇を這わせた。
佐奈子はそれを何度も重ねる。時計の音だけが耳に響く。時々、舌先を肉を力強く押し付ける。その官能的な動きに日奈子は震えそうになった。
佐奈子はゆっくり目を開き、いつもの彼女とは異なる妖艶な目で日奈子の目を見た。すでに日奈子の胸の音は、時計の秒針より激しく高鳴っていた。佐奈子は「こんな感じ」と言って、ウェットティッシュを手に取り、日奈子の指を優しく拭き取り始めた。
「ワンちゃんみたいなのもいいけど、ムード優先ならこういうゆっくりからがいいよ」
「……はい」
日奈子が女子生徒みたいに小さく答えるので、佐奈子は努めて柔らかい口調を意識した。
「次、舌の使い方いこうね。強く押し付けないで、滑らせるの。男の人も女の子と同じ、優しくされると弱いよ」
佐奈子は自分の腕を差し出した。
「姉さんの番ね。ここ、太ももの内側だと思って舐めてみて」
日奈子はためらいながら、佐奈子の腕に舌を這わせる。彼女の舌が肉を押して、佐奈子の肌が熱を持つ。
「……こんな感じ?」
佐奈子は目を細める。
「いいよ、姉さん……。もっとゆっくり、焦らすように。焦らされる気持ち……さっきのでわかったでしょ?」
彼女は日奈子の腕を手に取り、指で内側の柔らかな部分をなぞる。
「太ももから入るのが大事。いきなりじゃなくて、じわじわ行くの。男の人はゾクゾクするよ」
日奈子の指が佐奈子の腕をなぞり、彼女の鍛えた筋肉がわずかに震える。
「佐奈子……これ、なんか……ドキドキするね」
日奈子の声は小さく、佐奈子は笑う。
「そう、それでいい。愛情を伝えるんだから、自分の気分も高めながらやるの」
佐奈子は日奈子の手を自分の唇に近づける。
「じゃ、実際の動き。唇で包んで、舌で撫でる。唾液溜めてからね、強く吸わない。ゆっくり、感じるように」
彼女は日奈子の指を口に含み、舌を滑らせる。水の跳ねるような音がリビングに響き、日奈子の目が釘付けになる。
「はい。姉さん、やってみて」
日奈子は佐奈子の指を手に取り、ぎこちなく唇を寄せる。彼女の舌が佐奈子の指を撫で、佐奈子は「そう、いいよ。うん、もっとゆるやかに」と囁きながら、もう片方の手で、日奈子の髪を撫でる。
「姉さんの黒髪、大人になっても、子供のように柔らかいね」
佐奈子は、日奈子がリラックスして動けるように、その髪や耳や首に触れて、「いいよ、その調子」「そこ、もっと舌で押してみて」などと声をかけ続けた。日奈子は無言で妹の肌を味わうように唇を動かしていた。
「フェラって、される側にもちゃんとした愛情があれば、本当に愛が響き合うよ。単なる快感とか、サドマゾの心理で説明つかない体験になるね。だから、翔太さんのこと、感じたいって思いながらやるの」
「ねぇ、佐奈子?」
日奈子が唇を離して、荒くなった息を整えながら尋ねた。
「なあに、姉さん」
「……こういうとき、息っていつするの?」
「鼻! 鼻でして! 目を見ながら、呼吸がしづらい様子も見てもらったら勝ちだよ。まともな男なら、愛おしさを感じてくれるから」
日奈子の目が輝き、「翔太に……そんな風に思ってほしい」と呟く。彼女の指が佐奈子の腕を握り、緊張と好奇心が混じる。
「フェラを一度やれば、いくら翔太さんと姉さんでも本能が動くはず。怪我しないことなら、なんでもやっちゃっていいんだから。あとのことは二人次第。頑張ってね」
佐奈子は日奈子の手を離し、ソファに座り直す。
日奈子は「ありがとう! とても楽しみになってきちゃった」と言い、佐奈子の頭に抱きついて、その髪が乱れるぐらい頭を激しく撫で回した。佐奈子は、メス犬みたいに興奮してるよコレ、とちょっと面白く思いながら、姉を落ち着かせるようにその肩を抱き、トントンと叩いた。
「じゃあ、気分が落ち着いたら、シャワーして。今夜は翔太さんさすがに疲れてるだろうし。早く寝たほうがいいよ」と佐奈子は、テレビのリモコンを取り出し、民放の番組をつける。古い曲のカバーを若い女性シンガーソングライターが歌っている。
──ひとりじゃないって、すてきなことね。あなたの濡れた頬、わたしの燃える頬。ふたりで行くって素敵なことね。
日奈子が先にアイスコーヒーを飲み干して、シャワーに向かった。佐奈子は、くしゃくしゃ頭のまま、こんなえっちな歌をアイドルが歌ってたのかと思いながら、歌番組を眺め、乱れた気持ちを落ち着かせていく。
姉妹が食事を終えて、リビングで入浴時間まで少しリラックスする。いつもはニュース番組をつけているが、日奈子がリモコンを手にして画面を切った。
佐奈子が二人分のアイスコーヒーをグラスに注いで、ストローを入れたときだった。
「どうしたの、姉さん?」
佐奈子は、日奈子の前にグラスを置き、座って自分のアイスコーヒーを飲み始める。
日奈子がグラスにコーヒーフレッシュを投入し、ストローで混ぜながら、尋ねる。
「佐奈子、聞いてもいい? 恋愛経験、あなた二人でしょ?」
佐奈子の口からストローが落ちた。
「今、あたしの口から姉さんの顔にコーヒーかけさせようとした?」
日奈子は「違うよ、そんなつもりなくて。ほんとに聞きたいの」と力のない声で言った。
佐奈子は耳の中に指を入れながら、「あたし、年齢=モテ期だから、もっと多いかなぁ」と冗談めかす。
「何人?」
その質問は真剣だった。
佐奈子も真顔になり、グラスに目を向ける。
「笑わないよね? 見下したりしないよね?」
「しない。……絶対」
「……三人だけど?」
すると日奈子が顔を背けて、しばらく震えた。かと思うと、ぷっと笑った。佐奈子はグラスを置いて立ち上がり、彼女の頬を両手で掴んで、向き直させた。口を開けて笑ってた。
「この嘘つき! 姉さんの三倍もあるんだから、達人級だよ? もうっバカ!」
「ごめん、ごめん。バカにしたつもりじゃないよ。だって最近よく私に大先輩みたいに愛の説教するから、その割にちょっと、思ったより少ないと思って、つい」
「思ったより少ないって、そっちはそっちで少し腹立つな」
日奈子の謝罪に、佐奈子は手を離し、ソファに背を預け直した。
「ま、いいよ。何か聞きたいことあるんでしょ」
日奈子はグラスを置き、膝を寄せる。
「あのさ、佐奈子。男の人が積極的になったら、どうやってるのか、聞きたくて……」
小さな声に佐奈子の思考が駆け巡る。深刻そうに目を細めて、軽く答える。
「なんだ、そんなことか。連戦連敗の佐奈子に言わせれば、簡単だよ。自分も積極的になる。それだけ」
「その積極的ってのが、わからなくて……」
佐奈子は呆れたように笑う。
「あはは……。前から思ってたけど、姉さんたち、夜にあんまり声や音立てないよね。教科書通りのことばっかしてるんじゃない?」
日奈子は「教科書なんか、ないでしょ?」と返して、頬が赤らむ。佐奈子は続ける。
「物の例えだよ。マジで清らかすぎるんだから。ピューリタンの再来かと思う。急に積極的になったってことは、もともとはどうだった? もしかして弱いとか?」
日奈子は口に手を当て、「うーん」としばらく考えたあと、スラスラと答えた。
「翔太は、精力も性欲もしっかりあって健康的。でも、もともと慎重なの……今でも遠慮がちかなって思うことがある。それでもね。この前は、顔だけじゃなくて……こことか、ここにも強く口付けてきたの」
そう言って指差したところは、大胆だった。乳房や谷間、そして、腹部から太ももに至り、一瞬ばかり秘部にも当てられていた。
彼女は恥ずかしそうに目を伏せる。
「嬉しかったけど、びっくりして。どんな反応したらいいのか、わからなかった。変わっていく翔太に、どうやってついていけばいいのか、まだわからない。そうしているうち、あれっきり翔太もまた元通り大人しくなってて……」
「もうそこにキスしなくなった?」
「うん、いつも通り」
佐奈子は、呆れるような顔をした。
「男がそこにキスするってのは、愛情と欲求でやるんだけど、それはひとつのサインでもあるわけ」
「サイン?」
「自分もそうされたいの」
すると、日奈子はとても驚いた顔をして、「えぇ……そんなことしていいの?」と尋ねた。「不潔じゃないの?」
「姉さんがしたくない、気持ち悪いって思うなら無理にしなくていい。翔太さんも姉さんのそういうところが好きなんだろうし」
佐奈子の中で少し複雑な気持ちがあったが、今はそれよりも先に目の前にいる姉への心配が勝っていた。
「いえ、翔太のそこが汚れないかって」
「あ、そういう心配? もしかして『フェラ』って知らない?」
「……フェラ?」
日奈子は首を傾げた。佐奈子は予想以上のことに頭がこんがらがってきた。これが本当に自分の双子の姉だろうかと考え、自分が薄汚い動物のように思えてきた。
「じゃあ、甘噛みってわかる?」
「犬や猫がじゃれて、やるやつ?」
「そう、それ! それをやるの……女が男のアレに」
「……動物じゃないのに、そんなことやってもいいの?」
「いいんだよ! 動物になるのッ。あー、これは翔太さんの帰宅が遅いうちに教えるしかないよね。緊急個人指導。あ、メモ帳とか筆記具とかいらないから。ちょっとこっちきて」
佐奈子は自分の隣に、日奈子を招き寄せる。
「甘噛みと、フェラチオだけは教えるね。前者はいいけど、後者は外で言っちゃダメな言葉だかんね」
互いの香りが近づく。
「まず、甘噛み。噛むって言っても、傷つけないように、優しくするの」
佐奈子は日奈子の手を引き、自分の肩に当てた。
「旦那さん以外が人妻に噛み跡つけるのはダメだから、姉さんからあたしを噛んでみて」
日奈子はためらいながら、佐奈子の肩に唇を寄せ、軽く歯を当てる。「……こう?」
彼女の唇が柔らかく触れる。しかし、これはただ唇と唇で皮膚の柔らかいところを挟んだだけだ。
佐奈子は笑い、「もっと唇で包む感じ。じゃあ、歯型をつけないぐらいで、あたしからやってみせるね。ほら、こう」
彼女は日奈子の指を手に取り、ゆっくり唇で挟み、舌を軽く這わせた。ぬるりとした感触が、姉の指を濡らす。唇と唇だけで噛まれて、これまでにない感情が押し寄せてきた。佐奈子の口先は続けて別の指に移り、目を閉じたままそちらも甘く唇を這わせた。
佐奈子はそれを何度も重ねる。時計の音だけが耳に響く。時々、舌先を肉を力強く押し付ける。その官能的な動きに日奈子は震えそうになった。
佐奈子はゆっくり目を開き、いつもの彼女とは異なる妖艶な目で日奈子の目を見た。すでに日奈子の胸の音は、時計の秒針より激しく高鳴っていた。佐奈子は「こんな感じ」と言って、ウェットティッシュを手に取り、日奈子の指を優しく拭き取り始めた。
「ワンちゃんみたいなのもいいけど、ムード優先ならこういうゆっくりからがいいよ」
「……はい」
日奈子が女子生徒みたいに小さく答えるので、佐奈子は努めて柔らかい口調を意識した。
「次、舌の使い方いこうね。強く押し付けないで、滑らせるの。男の人も女の子と同じ、優しくされると弱いよ」
佐奈子は自分の腕を差し出した。
「姉さんの番ね。ここ、太ももの内側だと思って舐めてみて」
日奈子はためらいながら、佐奈子の腕に舌を這わせる。彼女の舌が肉を押して、佐奈子の肌が熱を持つ。
「……こんな感じ?」
佐奈子は目を細める。
「いいよ、姉さん……。もっとゆっくり、焦らすように。焦らされる気持ち……さっきのでわかったでしょ?」
彼女は日奈子の腕を手に取り、指で内側の柔らかな部分をなぞる。
「太ももから入るのが大事。いきなりじゃなくて、じわじわ行くの。男の人はゾクゾクするよ」
日奈子の指が佐奈子の腕をなぞり、彼女の鍛えた筋肉がわずかに震える。
「佐奈子……これ、なんか……ドキドキするね」
日奈子の声は小さく、佐奈子は笑う。
「そう、それでいい。愛情を伝えるんだから、自分の気分も高めながらやるの」
佐奈子は日奈子の手を自分の唇に近づける。
「じゃ、実際の動き。唇で包んで、舌で撫でる。唾液溜めてからね、強く吸わない。ゆっくり、感じるように」
彼女は日奈子の指を口に含み、舌を滑らせる。水の跳ねるような音がリビングに響き、日奈子の目が釘付けになる。
「はい。姉さん、やってみて」
日奈子は佐奈子の指を手に取り、ぎこちなく唇を寄せる。彼女の舌が佐奈子の指を撫で、佐奈子は「そう、いいよ。うん、もっとゆるやかに」と囁きながら、もう片方の手で、日奈子の髪を撫でる。
「姉さんの黒髪、大人になっても、子供のように柔らかいね」
佐奈子は、日奈子がリラックスして動けるように、その髪や耳や首に触れて、「いいよ、その調子」「そこ、もっと舌で押してみて」などと声をかけ続けた。日奈子は無言で妹の肌を味わうように唇を動かしていた。
「フェラって、される側にもちゃんとした愛情があれば、本当に愛が響き合うよ。単なる快感とか、サドマゾの心理で説明つかない体験になるね。だから、翔太さんのこと、感じたいって思いながらやるの」
「ねぇ、佐奈子?」
日奈子が唇を離して、荒くなった息を整えながら尋ねた。
「なあに、姉さん」
「……こういうとき、息っていつするの?」
「鼻! 鼻でして! 目を見ながら、呼吸がしづらい様子も見てもらったら勝ちだよ。まともな男なら、愛おしさを感じてくれるから」
日奈子の目が輝き、「翔太に……そんな風に思ってほしい」と呟く。彼女の指が佐奈子の腕を握り、緊張と好奇心が混じる。
「フェラを一度やれば、いくら翔太さんと姉さんでも本能が動くはず。怪我しないことなら、なんでもやっちゃっていいんだから。あとのことは二人次第。頑張ってね」
佐奈子は日奈子の手を離し、ソファに座り直す。
日奈子は「ありがとう! とても楽しみになってきちゃった」と言い、佐奈子の頭に抱きついて、その髪が乱れるぐらい頭を激しく撫で回した。佐奈子は、メス犬みたいに興奮してるよコレ、とちょっと面白く思いながら、姉を落ち着かせるようにその肩を抱き、トントンと叩いた。
「じゃあ、気分が落ち着いたら、シャワーして。今夜は翔太さんさすがに疲れてるだろうし。早く寝たほうがいいよ」と佐奈子は、テレビのリモコンを取り出し、民放の番組をつける。古い曲のカバーを若い女性シンガーソングライターが歌っている。
──ひとりじゃないって、すてきなことね。あなたの濡れた頬、わたしの燃える頬。ふたりで行くって素敵なことね。
日奈子が先にアイスコーヒーを飲み干して、シャワーに向かった。佐奈子は、くしゃくしゃ頭のまま、こんなえっちな歌をアイドルが歌ってたのかと思いながら、歌番組を眺め、乱れた気持ちを落ち着かせていく。
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