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【第一部】真夏にこぼれた夢
真夏の午後の訪問者
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土曜の午後三時。
出光浩一はリビングの作業スペースで、液晶タブレットと向き合っていた。
メールでデータを送信し終える。
「やっと、終わった……納期に間に合った」
大きく伸びをした。
電子空間の作業から解放されて、現実に戻っていく。
部屋の中は、先ほどまでのペンを走らせる音が消えて、エアコンの低い稼働音だけが静かに響いていた。
「あいつが戻ってくるまで時間があるな」
時計を見て、少し休もうかと思った。
結婚して六年。
妻との関係は、良くも悪くも安定していた。
今朝も「友人とランチ」と言って、少しお洒落をして、娘を連れて出かけている。
在宅勤務が基本の浩一にとって、週末の静寂は日常の一部だ。
しかし、眠気もしない。
そう思っていたところ、インターホンのチャイムが軽快に鳴った。
モニターに映っていたのは、ベビーカーを押した見覚えのある女性だった。
黒いカットソーに薄手のスカート。真夏の日差しを受けて眩しそうな顔。
妻のママ友である芽衣だった。
ベビーカーに乗った一歳の子供が、少しむずがっている。芽衣自身も真夏の午後の日差しに当てられ、額に薄く汗をかいていた。
「ごめんなさい。英恵さんいますか? 渡し忘れた回覧板があって……」
モニター越しに、少し申し訳なさそうな声が届く。
「あ、すみません。妻の英恵は朝から外出中で……」
「そうでしたか、じゃあポストに」
芽衣が帰ろうとした瞬間、ベビーカーの子供が本格的に泣き始めた。
外はアスファルトが揺らめくほどの猛暑だ。
「……暑いですし、少し上がっていきますか? 妻ももうすぐ帰ってくると思うんで」
彼女の目にも深い疲れがあるように見えた。
さすがにこの炎天下で泣く子供と、困り果てた母親を見過ごすことはできない。
「すみません、じゃあ、少しだけ」
玄関のドアを開けると、むわりとした熱気と共に、芽衣が会釈しながら入ってきた。
出光浩一はリビングの作業スペースで、液晶タブレットと向き合っていた。
メールでデータを送信し終える。
「やっと、終わった……納期に間に合った」
大きく伸びをした。
電子空間の作業から解放されて、現実に戻っていく。
部屋の中は、先ほどまでのペンを走らせる音が消えて、エアコンの低い稼働音だけが静かに響いていた。
「あいつが戻ってくるまで時間があるな」
時計を見て、少し休もうかと思った。
結婚して六年。
妻との関係は、良くも悪くも安定していた。
今朝も「友人とランチ」と言って、少しお洒落をして、娘を連れて出かけている。
在宅勤務が基本の浩一にとって、週末の静寂は日常の一部だ。
しかし、眠気もしない。
そう思っていたところ、インターホンのチャイムが軽快に鳴った。
モニターに映っていたのは、ベビーカーを押した見覚えのある女性だった。
黒いカットソーに薄手のスカート。真夏の日差しを受けて眩しそうな顔。
妻のママ友である芽衣だった。
ベビーカーに乗った一歳の子供が、少しむずがっている。芽衣自身も真夏の午後の日差しに当てられ、額に薄く汗をかいていた。
「ごめんなさい。英恵さんいますか? 渡し忘れた回覧板があって……」
モニター越しに、少し申し訳なさそうな声が届く。
「あ、すみません。妻の英恵は朝から外出中で……」
「そうでしたか、じゃあポストに」
芽衣が帰ろうとした瞬間、ベビーカーの子供が本格的に泣き始めた。
外はアスファルトが揺らめくほどの猛暑だ。
「……暑いですし、少し上がっていきますか? 妻ももうすぐ帰ってくると思うんで」
彼女の目にも深い疲れがあるように見えた。
さすがにこの炎天下で泣く子供と、困り果てた母親を見過ごすことはできない。
「すみません、じゃあ、少しだけ」
玄関のドアを開けると、むわりとした熱気と共に、芽衣が会釈しながら入ってきた。
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