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その次の誕生日


学校から帰ると父親に荷物が詰まったボストンバックを持たされ、ある場所に連れてこられた


そのまま俺は父親に叔母の家に預けられた

親父はいつのまにかうちに住み着いていた女の人と2人で暮らしたいようだった


正直俺は嬉しかった
これであの生活から抜け出せた
叔母の家なら追い出されることも食事を与えられないこともない


けど、結局は叔母の家でも邪魔者扱いされた

追い出されないだけで前の生活とはそこまで変わらない


「あの女から生まれた子供なんて汚い」

「あの子と関わらなきゃあんな風にはならなかったのに」



そして、その次の誕生日には父親が自殺したという報告を聞いた


それを聞いた時、涙も出なかった


葬式に行くと、複雑な顔をした事情を知らない人たちが父親が死んだのに泣かないなんておかしい子なんて言われた 


そんなことを言われたから無理に泣こうとしたけど涙は一滴も出てこなかった


葬式が終わり、外に出てみるとポツンと顔に何かがあたる


「雨…」


晴れるなんて言ってたくせに
叔母たちは近くの店でビニール傘を買って帰って行った
けど俺は傘なんて入れてもらえるわけなくびしょ濡れになって家に帰った


最悪な気分


叔母の家でもまともに誕生日を祝われたことなんて一度もない

そもそも誕生日なんて忘れられてたくらいだ
そんなことが続き自分の誕生日というのが嫌いになり、誰かに祝われるのも嫌になった



「もうすぐ誕生日だな」

「だな、今年も来るわ」


学校の屋上で春也がそんな話を振ってくる

「俺んちくる?当日じゃなくて前日とかでも
母さんも久々に会いたがってるし」

「いや、いい
今度別の機会で会いにいくって伝えといて」


小学生の頃、夕方になっても家に帰りたがらない俺を春也はよく家に誘ってくれた


「臣~、俺母ちゃんに怒られるからもう帰る」


「ふーん、じゃあな…」


「臣は帰らねえの?
家の人に怒られるんじゃねえの?」


「まだ遊びたいからいい」


本当はあの家に帰りたくないだけ
どうせ帰っても何も声をかけられず、顔を合わせるだけで迷惑そうな顔をされるだけ


「あのさ………臣俺ん家くる??
臣いたらゲーム一緒にできるじゃん!
それに楽しいし!」


「…いいの??」


「うん!一緒に来いよ!」


それからよく春也の家には世話になった
春也の両親は懐が深くて、よく家にくる俺に特に理由も聞くことなく快く泊めてくれた


もしかしたら春也から何かを聞いてたのかもしれない
けど、俺からしてみたら唯一温かみというものを感じられる場所だった


俺の過去の話を唯一知る春也は誕生日の日も毎年祝ってくれようとするけど、祝われても喜ぶような気持ちになれない
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