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しおりを挟む「じゃあね」
「じゃあねって別れの言葉じゃん
また後ででしょ
変な伏線作っていかないでよ」
「後のことはよろしくな……
この家のことも、臣のことも…」
「だから、伏線作んないでよ!」
春也は笑って、僕の頭を乱暴に撫でると扉に手をかけて外に出る。
「行ってくるわ」
「はーい、気をつけてね
いつでも連絡するんだよ」
「うるせえよ」
まるで、母親に反抗する息子のよう。全く怖いとは思わない。鍵が閉まったことを確認して部屋に戻ると、臣はソファに寝転がりながら少しうとうとしていた。珍しい。
「わあ!!」
寝そうになっている臣を驚かせようとソファの前に行って、大きな声を出して驚かせると、臣は目を開いて僕の腰に腕を回し膝の上に乗せる。
「うるさいよ、どうしたの」
僕の首筋に柔らかい唇を押し当てる。
「春也の家だからダメだって!」
「でも、今いないよ」
「そういう問題じゃないから」
臣から離れて、床に座り再びゲームを始めようとするとあぐらをかいて僕を膝の上に乗せる。
「千秋先輩、あーん」
後ろから臣の腕が回って缶が僕の口元に押し付けられる。
ゆっくりと傾けられて、中の液体が僕の喉を通っていく。
中身は僕の飲んでいた缶チューハイではなかったようで、口の中に苦味が広がる。口の端から溢れ出すと、臣がその水滴を指でなぞって口の中に含んだ。
「なっ…!!」
何やってんのと言おうとしたが、その言葉は発せられることがないまま、唇が塞がれた。
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