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しおりを挟むトイレから出て、そんなことを考えているとちょうど移動教室をしていた2年生が前から歩いてきた。
その中には僕の好きな人も紛れ込んでいた。
周りにいる人たちに比べて、彼は太陽だと言いたくなるくらい眩しい。
河田くんは僕に気づいたようで明らかに顔を引き攣らせた。
僕は彼を見てるだけで気持ちが舞い上がってくる。
隣にキラキラした男女を引き連れて目の前を歩いているのをみて、やっぱり別世界の人間だということを思い知らされる。
冷静になってみれば、河田くんと僕が付き合うなんていうのは、王と平民が結婚するということくらいほど遠いことだ。
いつもなら周りに気づかれないように、手を振っていたけど、そんなことも今考えればストーカー行為なのかもしれない。
かもしれないというかそうなのか……
雅也にこの無自覚ストーカーと言われてしまいそうだ。
いつもなら僕が手を振る姿を見て眉根を寄せるのだけど、今日は手を振らずに視線を逸らした。
告白をしてからというもの、何かしらの合図を送っていたのにこんなの初めてだ。
河田くんにとったらそんなのどうでもいいし、嫌いな奴が離れてくれてむしろ助かると言ったところだろう。
河田くんは一瞬、僕の前をとまりかけたけど、真横を通り過ぎる。
「邪魔なんだよ、ジミオ」
「ほんと邪魔
突っ立ってんなよ」
通りすがりに河田くんの友達に荒っぽい言葉を浴びせられる。
ジミオなんて僕にぴったりなネーミングセンスじゃないか。千秋なんて名前よりそっちの方がよっぽどあっている。
廊下に立ち尽くしていると、後ろから肩を引かれた。
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