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浮気は堂々と
しおりを挟む恵麻はそんな話が出ていることを、女中の噂話などを聞き薄々気付いていた
金剛家の人間は恵麻に出来るだけ関わらないようにし、冷めた目を向けた
「私の存在って…」
誰もいない和室の真ん中に三角座りしながら、両膝に顔を伏せる
今日も金剛家の人間と会うことがあったが、使用人以外誰一人として恵麻に声をかけようとせず、声をかけても無視をされる
嫁いでからそんな毎日が続き、ポジティブであることに自信があるはずなのに日に日にいつか見捨てられるのではないかという不安が募った
このような対応をされていることを知っていながらも伊織は放置しているのだから余計だ
しばらく膝に顔を埋めながらぼーとしていると、戸が開かれそこには伊織がその姿に不審そうな目を向けた
珍しく仕事を早く切り上げてきた伊織に対して、嬉しさから笑顔が浮かび、立ち上がって伊織の元に駆け寄る
いくら冷たくあしらわれても伊織を愛することには変わりはない
夫が早く帰ってきてくれることに心が躍った
「え?恵麻ちゃん?
こんなとこで何してるん??
座敷童子かと思ってビビってもうたわ」
「申しわけ」
口癖になってしまった謝罪の言葉を言い切る前に、伊織が言葉を遮る
「謝らんでいい
で、この部屋使いたいからちょっと出てってもらってもええ?」
伊織の後ろにいたのは美しい女
露出の激しい派手な色のワンピースを着た女は伊織の広い背中に擦り寄り、部屋の中にいた恵麻を睨みつけた
これからこの人と…
伊織が早く帰ってきた理由をその瞬間悟った
「承知しました」
小さく頷き、伊織達の方を見ることなくスッと横を通り過ぎる
伊織は恵麻が横を通り過ぎる瞬間、眉間に皺を寄せ不機嫌な顔になっていった
「鬱陶しいねん…」
小さくつぶやいたその声は恵麻の耳元で何倍にも大きくなって響いていく
荒々しい音を立ててしまった戸の奥からは2人の声が聞こえてきた
恵麻の目の前は浮き出てきた涙によって霞み、体をふらつかせながら歩いていたせいか家の柱に大きな音を立てて体をぶつけてしまい、恵麻はその場に倒れ込んでしまう
その音が響いた直後、伊織が部屋の戸が勢いよく開き、恵麻を見て目を丸くした
伊織の着ていた着物は情事が始まろうとしていたのか乱れていて、引き締まった体がチラチラと見え、恵麻はその色気から視線を斜め下に逸らした
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