貴方のことは好きだけど…

ぽぽ

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苑に連絡をしないとまずいと思い、伊織の腕の中からなんとか抜け出す
部屋の中に何か連絡できるものがないかと探すも見つからない。

その時、恵麻は苑に金剛家に嫁ぐと同時に伊織に必要ないと言われ、置いていくことになってしまった携帯を家を出る瞬間、苑に預けられたことを思い出した。


「どこだろう…」 


確かポケットの中に入れておいたはずだと、ゴソゴソとポケットを漁るも出てくる様子がない。

部屋の中を見渡し探していると、携帯はなぜか伊織の枕元に置かれていた。
ここぞとばかりに伊織の寝顔を目に焼き付けてから、携帯を開くと何十件にもわたって苑から連絡がきていた。
恵麻は部屋を出て、慌てて電話をかける。

すると、ワンコールもならないうちに苑が電話に出た。

「苑、ごめんなさ」

「なんで連絡よこさないの??
めちゃくちゃ心配したんだけど」

苑の声はいつもの姉を甘やかすような優しい口調ではなく、低く怒気を帯びたようなトーンで話す。

「ごめんなさい
連絡する前にいつの間にか寝てしまっていて連絡できなかったの…」

「俺、言ったよね?すぐに連絡してって
姉さんが心配過ぎて一晩中眠れなくて、外にも探しに行っても二人ともいないし
どれだけ焦ったかわかる?」

「苑、本当にごめんなさい
無神経すぎたわ」

「はあ…わかった、許す
とりあえず今はどこにいるの?
伊織くんと一緒?まさか金剛家に戻ってるなんて言わないよね?
今から迎えに行くから場所教えて」

「あ、えっと…」

今は金剛家にいるなんて言ったら、苑がさっき以上に怒りをあらわにすると感じた恵麻は言葉に詰まってしまっていると、後ろから耳に当てていた携帯が取り上げられた。

「金剛家やけどなんですかあ?
恵麻ちゃんの家はここなんやから当たり前やろ」

「い、伊織様?」

いつのまにか寝床から起きて、寝癖のひとつないサラサラな髪をポリポリとかきながらあくびをする。

「じゃ、またいつでも連絡してきてもええで
もちろん俺経由で」

苑が何かを言っていることは聞こえたけど、伊織は強引にスルーをして携帯を切り、流れるように恵麻の携帯を自身のポケットの中に入れた。
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