冴えない女なのに美男子に言い寄られてます。

ぽぽ

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「……今まで、誰かにそんなこと言われてきたの?」

「そんなことって、どんな……?」

「さっき言ってたでしょ。可愛くない、とか」


伊藤くんのあまりにも直球な言葉に、私は小さく頷いた。
その場の空気が重くならないように、無意識に笑みを浮かべながら。


「……無理して笑わなくていいよ」

「無理してなんか……」


言いかけた言葉を、伊藤くんの次の一言が遮った。


「美味しそうに食べてるときも、可愛いよ」

「……え?」

「無邪気に笑ってるところも」

「恥ずかしそうにしてるところも、全部可愛い」


次々と投げかけられる言葉に、思わず顔が熱くなる。
心臓が追いつかなくて、視線をどこに向ければいいのか分からない。

「あとは——」

「ちょ、ちょっと待って……一旦そこまでにしよう……」

「そう?」

少しだけ残念そうに笑いながら、伊藤くんは続ける。

「でも、ユイさんがまた自信なくなったら、いつでも言ってあげるから」

励ましの言葉だと分かっているのに、胸の奥がじんわりと温かくなった。

「……あり、がとうございます」

「そうだ。ユイさん、イチゴ好きですか?」

「え? 好きですけど……?」

「じゃあ、これ」

伊藤くんはタルトに乗っていた大きなイチゴをフォークで刺し、私の小皿の上にそっと置いた。

「えっ……いや、これは伊藤くんが食べてください!」

「せっかく紹介したお店なので。ぜひ」

「……じゃ、じゃあ、ありがたく……」

イチゴを一口齧ると、甘い果汁がじゅわっと広がる。
どんな品種を使っているんだろう、なんてことまで気になってしまうほどだ。

「……美味しい!」

「それなら良かったです。あ、すいません」

伊藤くんは突然スマホを取り出し、画面を確認すると席を立ち上がった。

「ユイさん、少しだけ席外してもいいですか? 仕事の連絡が来ちゃって。すぐ戻ります」

「どうぞ。いってらっしゃい」


そうか。
彼は芸能人として生きる人で、こうして普通に事務所から連絡が来る世界の人なんだ。

私とはあまりにも縁のない世界。
それなのに、今こうして同じテーブルで、同じデザートを食べている。

未だに、この状況が現実だという実感が湧かなかった。

少しの間待っていると、伊藤くんが戻ってきた。


「おまたせしました!」

「いえいえ、全然大丈夫です」


伊藤くんが再び席につき、話を始める。

初めは緊張しすぎて全然話をできなかったけど、伊藤くんが話し上手のためか、緊張が少しは和らいで普通に話せる程度になった。

タルトを食べ終え、伝票を持っていこうとすると既になくなっている。


「あれ?伝票が」

「あ、さっき支払ってきたから大丈夫」

「え!」


用事で席を外した時に支払ってきたとは、私より年下なのにやることがあまりにもスマートで驚愕する。

何度もして培われているデートの結果なのか。それとも元からこんなにできる男なのか。

ドラマや漫画の世界でしかこんなの見たことないし、そこら辺はわからないけどとにかくすごいとしか言いようがない。


「すいません、お金払います」

「いえ、いいですよ。幸せそうに食べる姿見れたので」


甘いものを食べて、甘いセリフを言われる。
こんな贅沢を味わっていいのか。

きっと神様が恋愛経験が皆無な私に、せめてもの慈悲でこんな経験をさせてくれているのだろう。

店をでてショッピングモール内を歩いていると、伊藤くんが立ち止まる。
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