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しおりを挟む「ごめん、意地悪した
俺は菫の素直に感情を表に出すところ嫌いじゃないよ?
羨ましいとか思う。
俺は昔からそういうこと言うと怒られたから、自由に感情出したいと思うけど抑えるのが癖になってるのかもしれない。
これももしかして意地悪に聞こえてる?」
「ううん。
じゃあ、私の前だけは素直になっていいよ」
菫は蒴の厳しく躾けられた過去の記憶を払拭したいとか、力になりたいなんて二の次で、蒴が自分だけに見せる一面を持って、俺の感情を表に出せる人はこの人しかいないんじゃないか、これが恋なんじゃないかということを錯覚させ自分に依存させたかった。
幼馴染という立場を利用した悪どいやり方だ。
でも、そこまでしてでも蒴は誰にも渡したくないという思いが強まる。
「ありがとう、菫
じゃあ今度からは俺もこういうふうにして甘えようかな」
蒴は腰を浮かせ菫のすぐ近くに移動すると、肩に頭をそっと乗せる。
蒴は目を閉じると、しばらく黙った。
よっぽど疲れていたのかと思い菫は話をしなかった。時計の針の音だけが部屋に響く。
しばらくすると、蒴が目を閉じながら口を開いた。
「今日、菫と久しぶりにご飯食べようと思ったんだ」
「え?」
「今日、金曜日だったでしょ
いくら冷戦状態だろうと飯くらいは一緒に食べてくれるだろうなって思って、連絡したんだけど返事は返ってこないし、とりあえずスーパー行ってから菫の家に行けばいいやなんて考えて、実際に帰ってきたら、何度も連絡しても連絡つかないし、インターホン押しても出て来ないし部屋は真っ暗。」
蒴は口元に笑みを浮かべながら話を続ける。
「菫は暗いの嫌いだから夜になってるのに部屋を真っ暗にするなんてまずないなと思ってから、ああ家にいないんだなって気づいて、そこから家で帰りをじっと待ってることなんてできなくてあそこで探しに行こうとしてた
行方も知らないのに探しに行こうなんてさ、すごい非合理的だよね。」
「そうだったんだ…」
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