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しおりを挟む蒴に迷惑をかけて申し訳ないという気持ちよりもそこまで、そこまで自分を心配していてくれたことが嬉しくて綻びそうになった口元を両手で隠した。冷静な蒴の冷静じゃない新たな一面。
「でも、朋子さんの家で晩御飯食べてきたよね?」
「うん
食べてきちゃった」
「じゃあ、夕食会は明日でどう?」
蒴はガラスに輝く瞳を菫に向ける。
まさか予定を空けてくれるとは思わなかった。それに明日は土曜日だ。いつもなら予定が入っているはず。
「明日は大丈夫」
突然の蒴からの誘いに嬉しいはずなのに返事がぎこちなくなってしまう。
まるでデートに誘われているような気分だった。
「じゃあまた明日。」
蒴は菫の肩から頭を上げて、菫の頭をポンポンと撫でた。
次の日
蒴の家でご飯を食べることになった菫は上機嫌で自分の髪をヘアアイロンで伸ばしていた。
自然と歌を歌ってしまうくらい気分がいい。なんと言っても今日は土曜日。
いつも会えるといったら金曜日と平日のちょこっとした時間程度であるため、2日も連続で会えることが菫にとって幸せだった。
昨日のうちに蒴が買い物をすましているため、後は夕方ごろになって蒴の家に向かえばいいだけだ。
午前中から夕方までは蒴は別の予定があるらしく、それまでの時間何をして過ごそうか迷ってしまう。早く時間が経って欲しい。
昨日、会ったばかりだというに早く会いたいという気持ちが募っていく。
夕方になり、蒴の家に向かい扉を開けようとするとドアは閉まっていた。
いつもなら菫が向かう直前くらいには扉を開けて待っていてくれるはずだ。一体どうしたのだろうか。
蒴のスマホへと連絡をしようとすると背後から話し声が聞こえてきた。
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