22 / 98
13
しおりを挟む「菫、もう来てたんだ
お待たせ」
蒴の声が聞こえた途端、私はその姿を目で確認する前に駆け寄って抱きつくも、蒴に抱きついた時の感触が微かに違う。そして、なにより匂いが違う。
菫は視線を上げて、姿を確認すると抱きついていたのは、蒴ではなく、蒴の隣に立っていた人物だった。
「あれ、恭弥くん何でいるの?」
「何でいるのって、蒴と先に予定入れてたの俺なんですけど~」
隣に立っていた人物とは、蒴の小学校からの幼馴染である恭弥だった。
恭弥の家が近所だったこともあり、菫が蒴の家に遊びに行くと、先客である恭弥がいるということもよくあった。そのため顔のしれた仲だ。
「そんなに俺と会いたかったんでちゅか~」
恭弥は菫の顎に片手を添えると、柔らかい頬を押しつぶす。菫は容赦なくその手を払った。
「やだ」
「嫌だとかいっといて抱きついたまんまでいる奴誰?」
恭弥はいつも通りの口調に戻り、菫を見下ろす。
バレー部として全国大会にも出場したことある恭弥の身長は異様に高く高校時代には185cmを超えていた。大学時代になってもまた少しだけ身長が伸びたといっていたため、見下ろされるとそれなりの威圧感があるし何より目立つ。
「あ、ごめん…」
菫はすっと離れると、蒴の背中に隠れて、恭弥の姿を再度確認する。
ダボっとしたパンツに淡い白のニット、コーデュロイコートと一見、緩いファッションにも見えるが、バレー雑誌にイケメン選手として度々取り上げられたこともあって、見事に服を着こなしている。
「俺のことジロジロ見てどうしたの?
また腕の中戻りたくなった?」
恭弥は口角を上げると、菫に向かって両腕を広げる。
「違うもん」
「もんとかガキかよ」
「ガキじゃない」
「そうねえ、こんなに美人さんになったんだからもうガキじゃないか」
恭弥からお世辞であるだろうけど、美人という言葉を言われて、普段から褒め言葉をあまり言われることがない菫は照れてしまう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
130
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる