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しおりを挟む結局、菫は納得の部屋を見つけることができず、だからと言ってこの家にずっとはいたくない。
最後の策としてとった行動は恭弥の家に同居させてもらうということだった。
ずっとではなく菫の次の家が見つかるまでという約束で。
以前、菫が蒴と2人で恭弥の家に遊びにいった際、1人では十分すぎるくらいの広さの家に住んでいたことに驚いた。
理由を聞くと以前まで友達と同居していたが、友達が家を出ていったため部屋が空いたようだ。
そこで、菫は断られることを覚悟の上で恭弥に同居の相談したところなんとかOKの返事をもらったのだ。
最初は恭弥も渋い顔をしていてやめた方がいいと言っていたが、何日もかけて説得をし続けたところようやく了承の返事をもらえた。
流石に両親にいくら幼馴染であろうと、男女の同居は許してくれなさそうだったため、とりあえず同棲の友達の家にしばらく住まわしてもらうと伝えている。両親は当然女性と同居するものだと考えていた。
「それにしてもお友達の家って結構広いの?」
「うん、すごい広いよ!2人でも十分なくらい!」
「ふうん、同い年でそんな広い部屋に住んでるなんて珍しい」
菫の母は疑り深い目で菫を見る。
「その子のお家はお父さんが所有してるんだって!だから広い家に住めてるんだって!」
適当な理由をつけて誤魔化すも母の疑いは晴れない。
「そうなると、あそこらへんは立地も利便性もいい人気の場所だからあんたが払う家賃もだいぶ高くなるでしょ?今より家賃安くなるって言ってたわよね?」
「そ、そう!安くしてくれるみたいで…とても助かっちゃう!なんて…」
「ママにも今度そのお友達に挨拶させてね?」
菫の母は完全に疑いが晴れていないような目をしつつも菫の散らばった洋服を段ボールの中に詰めていく。ようやく母の尋問が落ち着き菫はホッと息を吐く。
数時間経つと、ほとんどのものがダンボールの中に詰め込まれ部屋の中もすっきりとした。
「さすがママ!すごい!
短い時間でこんなに片付いた!天才!」
「まあね」
菫の母は腰に手を当てながら、得意げに鼻をふふんと鳴らす。
「そういえば、そろそろ夕飯の時間だけど、あんたが調理器具もしまっちゃったからご飯作れないじゃない。どうするの?」
「一緒にご飯でも行きましょっ?」
菫は自分の中で思う最大限の可愛げのある仕草をして、母の腕に抱きつき上目遣いで見つめる。
「そういって、ママに高いもの食べさせてもらう気なんでしょ?」
「そんなこと考えてないって!!
まあ、私が払うのもちょっと厳しいけど…」
「もうお金がかかる子なんだから
じゃあ早く準備して」
「やった!ママありがと!」
近所の中華料理店で夕飯を食べることになり、2人でロビーを歩いていると、目の前から一際目を引く男女が歩いてくる。
菫は咄嗟に母の腕に抱きつき顔を隠した。
「もう何?どうしたの?」
突然、抱きつかれた母は驚いた顔で菫を見る。
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