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しおりを挟む高田くんが訝しむように私を見る。
「違うってば!
私、近くの公園で休憩するから先に戻ってて」
「戻らないんですか?
もしかして恥ずかしいとかですか?」
顔の前で大きな袋を掲げるから、彼の顔の小ささが目立つ。
それに見事に私の気持ちが当てられてしまい、さすが我が後輩だなんて感心をしてしまった。
「そうだよ!
だってパーティーみたいな量買っちゃったもん」
「パーティーですか」
高田くんは口元に笑みを浮かべながら、静かに笑う。
そんな姿に綺麗だななんて思いながら見惚れそうになったのは秘密だ。
「いいですね
じゃあ、2人でパーティーしましょうか」
私を置いて、1人先に進んでいく。
その背中を眺めていると、振り返って眉間に皺を寄せた。
その表情から何かを感じ取った私は小走りして高田くんの元へといく。
「どこ行くの?」
「公園に行くんでしょ?」
「え?それは私1人で行こうとし…」
「陸さんと一緒に食べたいから来たんですけど」
振り返って、涼しい顔でそんなことを告げてくる男はやっぱり魔性の男なのかもしれない。
私だから勘違いしないであげてるんだからね!なんて高飛車な態度を心の中で取りながらさっきの言葉の意味を考えてしまいそうになる。
考えたって何かがおこるってわけでもないのに。
公園に行き、ベンチに並んで座り袋の中身を出していくと高田くんは目を丸くして驚いている。
「……さすがに買い過ぎでしょ」
「そ、そうですね。
だから一緒に食べてくれませんか…??」
「嫌です。
責任持って自分で全部食べてください」
「ええー、冷たい~」
抗議の声をあげながら、袋の奥に隠れた大福を捜索していると私の頬に少しだけ暖かい手が触れる。
「え?」
親指がそっと肌に触れ優しく撫でて、袋の中から視線を外して高田くんへと目を向けると真剣な目で見つめられていた。
そして、指でまた数回頬を撫でられる。一体どうしたのだろうか。
戸惑ってしまい、ただただ体温が上がっていくのを感じるしかない。
「陸さんって大福みたいですよね
白くてモチモチしてる」
頬から手が離れたと思うと、親指と人差し指で私の頬を摘んで感触を楽しんでいるようだった
「あ、そうですか」
ドーパミンが放出されそうになった私の脳内は、その言葉に一気に落ち着きを取り戻した。
すぐに高田くんから視線を外し、大福の袋を乱暴に開けて大きな口でかぶりついた。
高田くんはその様子を微笑みながら見ていた。
「隙ありすぎんだよな」
「え?」
「何でもないです」
結局、高田くんが少しだけ貰ってくれて2人でお腹いっぱいになるまで昼食を食べた。
この後の仕事絶対に眠くなりそう…
すでにウトウトしてきそうな頭を手の甲でノックするようにコンコンと叩いた。
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話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。
コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。
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