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春は出会い……
2年縛り
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何度キーを捻っても“カチッ”としか音がしない。
「やったぁ、壊れてるんだぁ」
私は喜んだ。
こんな古臭い、変な2ドアの車より、イケてるオートマのSUVとかの方が良い。
さすがに壊れてれば、お母さんも諦めるだろう。
喜んで見上げると、なんか太いコードを2本持ったお父さんが、ボンネットを開けるように言ってる。
直すの? こんなポンコツ無理無理、直りっこないって……ボンネットのレバーを引くが、反応がない。
早く開けろって言われても、開かないものは開かないよ。
そんなに言うならお父さんが開ければいいじゃん!
ホラ見ろ! お父さんが引っ張っても開かないじゃん。だから、壊れてるんだって……えっ!? 両手で引っ張るの?
お父さんその姿勢、マジヤバいじゃん! この間、タンス動かした時も、そんな姿勢でやって、腰が痛いって、3日寝込んだじゃん。
“ガゴッ”
ようやくボンネットが開いた。
お父さんのエルグランドが、向かい合わせに止まって、ボンネットが開いた。
爺ちゃんがさっきの太いコードを互いの車同士に繋いで、手をグルグル回して合図している。
どうやら、エンジンをかけろって事らしい。
だって、さっき動かなかったじゃん!
そう思いながら鍵を捻ると
「キュルルルルルル……ヴオオオオオ」
かかった。……むしろ、かかりやがっただ。
マジ~、動かなきゃよかったのに。
取り敢えず、まず外に出ないと、みんな排ガス中毒で死んじゃうよ。
1速に入れて、サイドブレーキを降ろす。そしてクラッチ繋いで、アクセル踏んで……るんだけど、なんか動かないよ。
お父さんと爺ちゃんが、何回も前後に揺すったりして、合図したところでもう1回クラッチを繋ぐと
“バキッ”
という音がして、車が動き始めた。
なにこれ、マジでぼろい。ブレーキが解除できないって、マジあり得ないんですけど。
納屋から外に出たけど、埃でマジ真っ白だ。
外に出たおかげで、今まで見えなかった後ろ姿が見えた。
後ろから見て、私でもこの車の車種が分かった。
この丸いテールランプは、スカイラインだよね……って思ったら、テールランプの隣にちゃんと
「SKYLINE」
って書いてあった……じゃなくて、彫ってあったよ。
さっきから、お父さんと爺ちゃんの表情がやけにニコニコしてる。なんでだろう?
この車が動いたから? でも、なーんか違うような気がする。
台所に戻ると、お母さんと婆ちゃんがお茶にしていた。
「もう、あの車、マジでボロいんだけど! 」
私は、お母さんに怒りをぶつけると
「お父さんから訊いてるわよ。ちゃんと動いたそうじゃない」
あっさりと返された。
「エンジンかからなかったし」
「バッテリー上がりなんて、大したことじゃないから」
「アクセル踏んでも動かなかったし」
「長いこと置いてあったんだから、サイドブレーキが固着しただけでしょ」
「え~、そんなんで大丈夫なの~? 」
「明日の朝、引き取りに来て車検に出すから、来週には乗れるようになるわよ」
私の意見は、ことごとく無視され、既に明日から車検に出されてしまうようだ。
これって、既定路線ってやつ?
「え~、あんな、いつ止まるか分からない車、ヤダよぉ~」
ストレートに意見を言ってみると
「我儘言うんじゃないの! ウチにはお金が無いんだから、ある物を活用するの。来年、舞華の進学でしょう。取り敢えず、あの車に2年は乗るの! 」
今、何気にお母さん、とんでもないこと言ったんじゃね?
あの車に2年も乗らなきゃならないの?
私的に、卒業まで我慢すればいいと思ってたのに、あり得無くね?
「えーー! あの車に2年も乗るのー? 卒業までじゃないのー?」
「車検に出したら、2年乗った方が勿体無くないでしょ? さっきも言った通り、ウチには余分なお金は無いの! 何度も言わせないで頂戴」
「ヤダよー! あの車に2年も乗りたくないよー!」
「文句があるんだったら、お爺ちゃんの車と交換しなさい!」
「嫌だよー! 爺ちゃんの軽トラなんかじゃ、学校行けないよー、お母さんのと交換して」
「お母さんとお父さんの車は、職場の入構登録してあるからダメ! 」
愕然とする私に、お母さんが言った。
「どうしても嫌だったら、舞華がバイトして別の車、買いなさい。但し、変な車、買おうとしたら、土地の使用許可出さないからね」
結局買えないじゃん! どうせ、何持って来ても最後の『変な車』って、曖昧な項目を拡大させて、ダメって言う気、満々じゃん!
原付買う時も、優子たちと同じビーノ買おうとしたら、『無意味に高いのはダメ』とか言って、タクトにされたし、芙美香マジムカつく。
「舞華、まさかとは思うけど、母さんの事を『芙美香』とか呼び捨てにして、ムカつく、とか思ってないわよねぇ」
鋭い、さすが私のお母さん。
とにかく、ここにこれ以上いても、事態が好転することはあり得ないので、私は自分の部屋へと戻って、今後の事を考えることにした。
その途中で思い出した。
兄貴は、高校生の頃から、いつも好きな車を買っていたことを。
「なんで、兄貴はよくて、私はダメなんだよ! 」
思わず口走っていた。
「やったぁ、壊れてるんだぁ」
私は喜んだ。
こんな古臭い、変な2ドアの車より、イケてるオートマのSUVとかの方が良い。
さすがに壊れてれば、お母さんも諦めるだろう。
喜んで見上げると、なんか太いコードを2本持ったお父さんが、ボンネットを開けるように言ってる。
直すの? こんなポンコツ無理無理、直りっこないって……ボンネットのレバーを引くが、反応がない。
早く開けろって言われても、開かないものは開かないよ。
そんなに言うならお父さんが開ければいいじゃん!
ホラ見ろ! お父さんが引っ張っても開かないじゃん。だから、壊れてるんだって……えっ!? 両手で引っ張るの?
お父さんその姿勢、マジヤバいじゃん! この間、タンス動かした時も、そんな姿勢でやって、腰が痛いって、3日寝込んだじゃん。
“ガゴッ”
ようやくボンネットが開いた。
お父さんのエルグランドが、向かい合わせに止まって、ボンネットが開いた。
爺ちゃんがさっきの太いコードを互いの車同士に繋いで、手をグルグル回して合図している。
どうやら、エンジンをかけろって事らしい。
だって、さっき動かなかったじゃん!
そう思いながら鍵を捻ると
「キュルルルルルル……ヴオオオオオ」
かかった。……むしろ、かかりやがっただ。
マジ~、動かなきゃよかったのに。
取り敢えず、まず外に出ないと、みんな排ガス中毒で死んじゃうよ。
1速に入れて、サイドブレーキを降ろす。そしてクラッチ繋いで、アクセル踏んで……るんだけど、なんか動かないよ。
お父さんと爺ちゃんが、何回も前後に揺すったりして、合図したところでもう1回クラッチを繋ぐと
“バキッ”
という音がして、車が動き始めた。
なにこれ、マジでぼろい。ブレーキが解除できないって、マジあり得ないんですけど。
納屋から外に出たけど、埃でマジ真っ白だ。
外に出たおかげで、今まで見えなかった後ろ姿が見えた。
後ろから見て、私でもこの車の車種が分かった。
この丸いテールランプは、スカイラインだよね……って思ったら、テールランプの隣にちゃんと
「SKYLINE」
って書いてあった……じゃなくて、彫ってあったよ。
さっきから、お父さんと爺ちゃんの表情がやけにニコニコしてる。なんでだろう?
この車が動いたから? でも、なーんか違うような気がする。
台所に戻ると、お母さんと婆ちゃんがお茶にしていた。
「もう、あの車、マジでボロいんだけど! 」
私は、お母さんに怒りをぶつけると
「お父さんから訊いてるわよ。ちゃんと動いたそうじゃない」
あっさりと返された。
「エンジンかからなかったし」
「バッテリー上がりなんて、大したことじゃないから」
「アクセル踏んでも動かなかったし」
「長いこと置いてあったんだから、サイドブレーキが固着しただけでしょ」
「え~、そんなんで大丈夫なの~? 」
「明日の朝、引き取りに来て車検に出すから、来週には乗れるようになるわよ」
私の意見は、ことごとく無視され、既に明日から車検に出されてしまうようだ。
これって、既定路線ってやつ?
「え~、あんな、いつ止まるか分からない車、ヤダよぉ~」
ストレートに意見を言ってみると
「我儘言うんじゃないの! ウチにはお金が無いんだから、ある物を活用するの。来年、舞華の進学でしょう。取り敢えず、あの車に2年は乗るの! 」
今、何気にお母さん、とんでもないこと言ったんじゃね?
あの車に2年も乗らなきゃならないの?
私的に、卒業まで我慢すればいいと思ってたのに、あり得無くね?
「えーー! あの車に2年も乗るのー? 卒業までじゃないのー?」
「車検に出したら、2年乗った方が勿体無くないでしょ? さっきも言った通り、ウチには余分なお金は無いの! 何度も言わせないで頂戴」
「ヤダよー! あの車に2年も乗りたくないよー!」
「文句があるんだったら、お爺ちゃんの車と交換しなさい!」
「嫌だよー! 爺ちゃんの軽トラなんかじゃ、学校行けないよー、お母さんのと交換して」
「お母さんとお父さんの車は、職場の入構登録してあるからダメ! 」
愕然とする私に、お母さんが言った。
「どうしても嫌だったら、舞華がバイトして別の車、買いなさい。但し、変な車、買おうとしたら、土地の使用許可出さないからね」
結局買えないじゃん! どうせ、何持って来ても最後の『変な車』って、曖昧な項目を拡大させて、ダメって言う気、満々じゃん!
原付買う時も、優子たちと同じビーノ買おうとしたら、『無意味に高いのはダメ』とか言って、タクトにされたし、芙美香マジムカつく。
「舞華、まさかとは思うけど、母さんの事を『芙美香』とか呼び捨てにして、ムカつく、とか思ってないわよねぇ」
鋭い、さすが私のお母さん。
とにかく、ここにこれ以上いても、事態が好転することはあり得ないので、私は自分の部屋へと戻って、今後の事を考えることにした。
その途中で思い出した。
兄貴は、高校生の頃から、いつも好きな車を買っていたことを。
「なんで、兄貴はよくて、私はダメなんだよ! 」
思わず口走っていた。
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