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秋は変化……
教頭と情熱の遠征旅行
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燈梨の指さした方からは、赤い色の車がゆっくり近づいてきた。
なんか、今まで校内では見た事ないね、あんな車。
土手の向こう側から現れたその車を見て、私とななみんは、驚いちゃったよ。
丸いライトが2つあって、ナンバープレートは助手席側の端についているゴツい車。
タイヤは大きくて、これまたゴツい。なんか、見た目はSUVっぽいけど、SUVにしちゃぁゴツすぎて、スマートさがないし、なんかSUVってより、ジープだよね。
燈梨は、私らとは違うビックリした表情で見ていたけど、次の瞬間
「サファリだ……」
と言ったので、この車の事を知ってるらしい。
こんなジープみたいな車の事を知ってるんだね。
やって来たサファリ? を見ると、赤かと思ってたこの車の下半分は濃いグレーで、どうもツートンカラーらしいよ。
車が止まると、水野が運転席から降りて来たけど、コレ、凄く背が高いね。SUVなんかの比じゃないよ。
「お待たせした。諸君。荷室には救援用具も揃ってるから、早速行こう!」
水野が言って、車の方へと歩き出した途端に、水野の携帯が鳴り響いた。
水野って、初期設定の着信音なんだ。あんまりそういうのに感心なさそうだし、逆に、これで若手イケメンアイドルユニットの曲とか流れたらマジ引いちゃうけどね。
それは良いとして、今時ガラケーって、ありえなくね?
水野は、表示を見て、明らかに嫌そうな表情になったよ。アイツが表情を動かすなんて、相手はよっぽど嫌な奴なんだろうね。
水野はポケットに携帯をしまって、運転席へと向かおうとしたけど、なんか迷いの表情を浮かべながら、一瞬考え込んで、意を決したように車に背を向けると
「済まないが、諸君に任せた」
と言うと、歩いて土手の向こうへと行って電話に出たようだ。
ねぇ、ななみん。水野のさっきの表情ってさ、明らかに子供の頃にピーマンとかを食べなきゃいけなくなった時にする表情だったよね。
それにしても、水野はまた、ほん投げかよぉ~、振るだけ振っておいて、肝心な時になったらいなくなるってさぁ~、マジで困るよぉ。
「どうも、今の電話は教頭じゃないかって思うんですよ。なんか、キンキン響いてたし」
あぁ、あのおばちゃんか。
水野は教頭と折り合い悪そうだよね。教頭って、文系だし、規律にうるさいタイプだしね
水野とは正反対なんだよ。
まぁ、とにかく、長引くと寒くなるから、早く救援して、今度こそ柚月を埋めたら、今日の活動は終わりにしようよ。
「自分たちの走行順は、どうなるっスか?」
そんなの柚月の間抜けさと、縄を解いて柚月を先に行かせた自分の行動の愚かさを呪いなよ。
「ズッキー先輩、酷いっスー!」
だから言ったハズだよ。
あいつに情けなんかかけても、仇として返されるのがオチだって。
みんな最初は、私がサドだとか、柚月が可哀想だとか言うんだけど、後で迷惑かけられて初めて、私の言ってる事の正しさに気がつくんだよ。
言っとくけど、私はサドじゃないからね。
なんだよー、ななみん。その懐疑的な視線はさー。
私の事を疑ってるのか?
「大丈夫だよ舞華。本当のサドって、ミサキさんとか、杏優《あゆ》みたいな人の事だから」
燈梨ぃ、分かってくれて嬉しいよ。
ところで、ミサキさんとか、アユって、誰なんだろ?
さて、救援に向かうよ。
初めての車で、あれだけデカいと、ちょっと怖いね。
え? 燈梨、あの車、運転したことあるの? だったら、燈梨に運転していって貰おう。
それにしても、このゴツさで2ドアか、ななみんは後ろの席ね。
凄く背が高いよね。結構ゴツいステップがあるからまだマシだけど、それでもスカートの中、見えるよね的な背の高さだよ。街中だときついよね。
中はまともだね。
てっきり、室内も鉄むき出しで、シートも鉄枠に座布団敷いただけみたいな、そんな感じをイメージしてたんだけど、全く違って、普通の乗用車みたいだね。
なんか、シフトレバーが3本もあるよ。
この車、もしかして10速とか変速するの?
燈梨が、サイドブレーキ降ろすより先に、一番左のレバーを動かしてるよ。
「これで、4WD高速側に入れたんだよ」
そうなの燈梨? 2WDと4WDって、自動で切り替わるんじゃないんだ?
この車は、災害救助や、軍隊でも使われる本格的な車だから、故障が少なくて、確実に切り替わる手動式なんだって?
「4Hは降雪や、この程度の荒れ地を通常速度で走る場合、4Lは山の斜面とか岩場みたいな所を低速でも走破力重視で登る場合や、川を渡る場合に使うんだって。ちなみに2WDだとFRだよ」
そうなんだ、燈梨。
え? この車って、直列6気筒なの? しかも、4200ccもあるんだ。
おおっ、スタートしたよ。
見た目からもっと荒々しい走りかと思ったけど、思いの外、スムーズで、ジェントルな走りだよね。
でも、重たいのは、助手席にいても分かるよ。
この車に関しては、1つ1つの動きに対して、ワンテンポ早く操作する姿勢が必要なんだね。
GT-Rなんかもそうだって聞いたよ。これは本格的な車の宿命ってやつなのかな?
「でも、ショートボディだから、動きはクイックな方だよ」
そうなの? え? コンさんのサファリは、4ドアのロングボディだったから、全長とホイールベースが、それぞれ50センチ長くて、結構小回りがきかないし、ハンドルを切った時の反応もちょっと鈍いから、大変だったって?
くそぅ、ここでも出てくるコンさんか……。
私の燈梨を、徹底的に汚しやがってぇ、許すまじ。
こうなったら、通信教育で会得したハンガーヌンチャクで……。
「させないっスー!」
コラ、ななみん! 走行中の車の中で暴れると危ないって……。
「マイ先輩は、コンさんの上着のポケットに、こっそり生卵を入れようとか考えてるに違いないっス、させないっス!」
「危ないよ! 七海ちゃん!!」
燈梨の声がしたのと同時に、車がバウンドして、同時に“ガンッ”と音がして、慌てて後ろを見ると、ななみんがリアシートに大の字になって伸びていた。どうも、天井にしこたま頭を打ち付けたようだよ。
言わんこっちゃない。走行中の車の中では静かにって、習ったでしょう。ななみん。
それにしても、燈梨が、こんな大きな車をスイスイ走らせるなんて、思いもよらなかったよ。
「そう? 私なんて、免許取った最初の週末に、いきなりこの車で、住宅街を走ってお昼に行かされたから、慣れちゃったし、案外、見切りがいいから乗りやすいよ。それに、これ運転することで、色々な車に対する恐怖心とか、苦手意識はなくなったよね」
そうなんだ。
それで、コンさんのサファリで、運転に慣れていったんだ。そういう意味では、この車が燈梨の運転の原点なんだね。
「そう……なるかな?」
そうだよ。
でも、こんな車で運転を覚えるのも良いよね。確かに苦手意識もなくなるし、何より頑丈そうだしね。
私が言うと、それまで話していた燈梨の表情に、ちょっとだけ影が差し込んだのが分かった。
「うん、頑丈だよ……頑丈なんだよ……」
へぇ、そうなんだね。見た目でもよく分かるよ。
なんだろ燈梨、なんか、この車の頑丈さに関しては、あまり触れない方が良い話題だったのかな?
私は、そのことについてちょっと考え込んでいると、フロントガラスの端に、土手に引っかかっている柚月のGTEの姿を捉えた。
おーい、ななみん、起きろー。
柚月のバカがいたぞー。
私は、振り返ると、後席で寝ているななみんを揺すり起こした。
なんか、今まで校内では見た事ないね、あんな車。
土手の向こう側から現れたその車を見て、私とななみんは、驚いちゃったよ。
丸いライトが2つあって、ナンバープレートは助手席側の端についているゴツい車。
タイヤは大きくて、これまたゴツい。なんか、見た目はSUVっぽいけど、SUVにしちゃぁゴツすぎて、スマートさがないし、なんかSUVってより、ジープだよね。
燈梨は、私らとは違うビックリした表情で見ていたけど、次の瞬間
「サファリだ……」
と言ったので、この車の事を知ってるらしい。
こんなジープみたいな車の事を知ってるんだね。
やって来たサファリ? を見ると、赤かと思ってたこの車の下半分は濃いグレーで、どうもツートンカラーらしいよ。
車が止まると、水野が運転席から降りて来たけど、コレ、凄く背が高いね。SUVなんかの比じゃないよ。
「お待たせした。諸君。荷室には救援用具も揃ってるから、早速行こう!」
水野が言って、車の方へと歩き出した途端に、水野の携帯が鳴り響いた。
水野って、初期設定の着信音なんだ。あんまりそういうのに感心なさそうだし、逆に、これで若手イケメンアイドルユニットの曲とか流れたらマジ引いちゃうけどね。
それは良いとして、今時ガラケーって、ありえなくね?
水野は、表示を見て、明らかに嫌そうな表情になったよ。アイツが表情を動かすなんて、相手はよっぽど嫌な奴なんだろうね。
水野はポケットに携帯をしまって、運転席へと向かおうとしたけど、なんか迷いの表情を浮かべながら、一瞬考え込んで、意を決したように車に背を向けると
「済まないが、諸君に任せた」
と言うと、歩いて土手の向こうへと行って電話に出たようだ。
ねぇ、ななみん。水野のさっきの表情ってさ、明らかに子供の頃にピーマンとかを食べなきゃいけなくなった時にする表情だったよね。
それにしても、水野はまた、ほん投げかよぉ~、振るだけ振っておいて、肝心な時になったらいなくなるってさぁ~、マジで困るよぉ。
「どうも、今の電話は教頭じゃないかって思うんですよ。なんか、キンキン響いてたし」
あぁ、あのおばちゃんか。
水野は教頭と折り合い悪そうだよね。教頭って、文系だし、規律にうるさいタイプだしね
水野とは正反対なんだよ。
まぁ、とにかく、長引くと寒くなるから、早く救援して、今度こそ柚月を埋めたら、今日の活動は終わりにしようよ。
「自分たちの走行順は、どうなるっスか?」
そんなの柚月の間抜けさと、縄を解いて柚月を先に行かせた自分の行動の愚かさを呪いなよ。
「ズッキー先輩、酷いっスー!」
だから言ったハズだよ。
あいつに情けなんかかけても、仇として返されるのがオチだって。
みんな最初は、私がサドだとか、柚月が可哀想だとか言うんだけど、後で迷惑かけられて初めて、私の言ってる事の正しさに気がつくんだよ。
言っとくけど、私はサドじゃないからね。
なんだよー、ななみん。その懐疑的な視線はさー。
私の事を疑ってるのか?
「大丈夫だよ舞華。本当のサドって、ミサキさんとか、杏優《あゆ》みたいな人の事だから」
燈梨ぃ、分かってくれて嬉しいよ。
ところで、ミサキさんとか、アユって、誰なんだろ?
さて、救援に向かうよ。
初めての車で、あれだけデカいと、ちょっと怖いね。
え? 燈梨、あの車、運転したことあるの? だったら、燈梨に運転していって貰おう。
それにしても、このゴツさで2ドアか、ななみんは後ろの席ね。
凄く背が高いよね。結構ゴツいステップがあるからまだマシだけど、それでもスカートの中、見えるよね的な背の高さだよ。街中だときついよね。
中はまともだね。
てっきり、室内も鉄むき出しで、シートも鉄枠に座布団敷いただけみたいな、そんな感じをイメージしてたんだけど、全く違って、普通の乗用車みたいだね。
なんか、シフトレバーが3本もあるよ。
この車、もしかして10速とか変速するの?
燈梨が、サイドブレーキ降ろすより先に、一番左のレバーを動かしてるよ。
「これで、4WD高速側に入れたんだよ」
そうなの燈梨? 2WDと4WDって、自動で切り替わるんじゃないんだ?
この車は、災害救助や、軍隊でも使われる本格的な車だから、故障が少なくて、確実に切り替わる手動式なんだって?
「4Hは降雪や、この程度の荒れ地を通常速度で走る場合、4Lは山の斜面とか岩場みたいな所を低速でも走破力重視で登る場合や、川を渡る場合に使うんだって。ちなみに2WDだとFRだよ」
そうなんだ、燈梨。
え? この車って、直列6気筒なの? しかも、4200ccもあるんだ。
おおっ、スタートしたよ。
見た目からもっと荒々しい走りかと思ったけど、思いの外、スムーズで、ジェントルな走りだよね。
でも、重たいのは、助手席にいても分かるよ。
この車に関しては、1つ1つの動きに対して、ワンテンポ早く操作する姿勢が必要なんだね。
GT-Rなんかもそうだって聞いたよ。これは本格的な車の宿命ってやつなのかな?
「でも、ショートボディだから、動きはクイックな方だよ」
そうなの? え? コンさんのサファリは、4ドアのロングボディだったから、全長とホイールベースが、それぞれ50センチ長くて、結構小回りがきかないし、ハンドルを切った時の反応もちょっと鈍いから、大変だったって?
くそぅ、ここでも出てくるコンさんか……。
私の燈梨を、徹底的に汚しやがってぇ、許すまじ。
こうなったら、通信教育で会得したハンガーヌンチャクで……。
「させないっスー!」
コラ、ななみん! 走行中の車の中で暴れると危ないって……。
「マイ先輩は、コンさんの上着のポケットに、こっそり生卵を入れようとか考えてるに違いないっス、させないっス!」
「危ないよ! 七海ちゃん!!」
燈梨の声がしたのと同時に、車がバウンドして、同時に“ガンッ”と音がして、慌てて後ろを見ると、ななみんがリアシートに大の字になって伸びていた。どうも、天井にしこたま頭を打ち付けたようだよ。
言わんこっちゃない。走行中の車の中では静かにって、習ったでしょう。ななみん。
それにしても、燈梨が、こんな大きな車をスイスイ走らせるなんて、思いもよらなかったよ。
「そう? 私なんて、免許取った最初の週末に、いきなりこの車で、住宅街を走ってお昼に行かされたから、慣れちゃったし、案外、見切りがいいから乗りやすいよ。それに、これ運転することで、色々な車に対する恐怖心とか、苦手意識はなくなったよね」
そうなんだ。
それで、コンさんのサファリで、運転に慣れていったんだ。そういう意味では、この車が燈梨の運転の原点なんだね。
「そう……なるかな?」
そうだよ。
でも、こんな車で運転を覚えるのも良いよね。確かに苦手意識もなくなるし、何より頑丈そうだしね。
私が言うと、それまで話していた燈梨の表情に、ちょっとだけ影が差し込んだのが分かった。
「うん、頑丈だよ……頑丈なんだよ……」
へぇ、そうなんだね。見た目でもよく分かるよ。
なんだろ燈梨、なんか、この車の頑丈さに関しては、あまり触れない方が良い話題だったのかな?
私は、そのことについてちょっと考え込んでいると、フロントガラスの端に、土手に引っかかっている柚月のGTEの姿を捉えた。
おーい、ななみん、起きろー。
柚月のバカがいたぞー。
私は、振り返ると、後席で寝ているななみんを揺すり起こした。
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