女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

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冬は総括

桃とお尻と

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 今日は、3年生の活動日じゃないんだけど、1、2年生に頼まれて、例のダートコースの同乗コーチに呼ばれたんだよ。
 あの3台の専用車に乗るのも初めてなんだけど、結構生傷が増えたね。まぁ、そのために用意した練習車なんだけどさ、一番きれいだったチェイサーでも、フォグランプが片方割れちゃってるんだよね。

 紗綾ちゃんの運転に、ななみんと一緒に乗って1周する最中に、途中で見事にスピンして土手にぶつかっちゃってたよ。
 ちなみにななみん曰く、一番上手いのは燈梨で、次にななみん、紗綾ちゃんの順らしいから、やっぱり、経験値かバイクの上手い下手かも関係してるんじゃないかなぁ。
 確かななみんは、バイクもスポーツ系の輸入車だったからね。

 走行後に、2人に請われてこわれて、私の運転で同乗教習することになったんだよ。
 どれも初めてだけど、じゃぁ、スカイラインに乗ることにしようか。
 え? ハンドルが重いと思ったらベルトが切れてた? あぁ、じゃぁ、他にしようか……という事で引き続きチェイサーに乗ってスタートした。

 うんうん、初めて運転するんだけど、結構軽快に曲がってくれて良い車だよ。
 でもって、ハンドル切った時の反応に、若干紙一枚挟んだような違和感が無い訳じゃないけど、それも最小限だし、良いよね。
 
 「ただ……ですね」

 なに? ななみん。

 「そのシートがぶよぶよ過ぎて、お尻が安定しないっス」

 あぁ、この車、通常グレードだしね。
 昔のトヨタの車は、シートの出来が悪かったからしょうがないよ。
 ただでも出来の悪いところに加えて、通常グレードだから、見た目の豪華さだけを追い求めてるからね。
 シートの上にクッション敷いて座ってるような感じだからね。

 「なので、この車もシートを換えてみたいっス!」

 良いんじゃないの? 
 でも、このコースって泥ついたりするから、新品とかは勿体ないよね。

 「それは、予算的にも難しいと思います」

 紗綾ちゃん。ななみんより台所事情に詳しくない? え? 会計部門も任されてるの?

 「七海は、どんぶり勘定なんです。勝手に千円未満の単位を切り捨てたりするから、収支が合わなくなるんです」

 なるほどね。
 話戻すと、だから、結衣が買ってきたようなレベルのシートで良いと思うんだ。破れてるのは論外だけど、色褪せしてるのとかね。
 モノがあれば、フルバケでも良いと思うけどね。このチェイサーなんて、シートのおかげで結構ダイレクト感を削がれてるから、換えるだけで結構走り方まで変わると思うよ。

 うん、確かに、ちょっと車が滑り出した時の感覚が、シートによって打ち消されちゃってるんだよね。
 だから、さっきの沙耶ちゃんは、この感覚を掴み損ねて、反応が遅れてスピン
……っていう感じじゃないかなって、私は見てるんだ。

 「そうです! なんか走ってて、ヌルッとした感じになったと思ったら、急に巻き込んじゃって……」

 やっぱりね。
 そうなると、換えた方が良いかな。
 シーズンオフは、ノートとかについてるフルバケ借りてこられないの? あれって、冬の間は練習できないじゃん。
 ノートについてるのは、兄貴が置いていった、結構高いものらしいよ。

 「他車種流用なんて、どうなんですか?」

 紗綾ちゃんったら、免許取得前からいきなりビギナーを飛び越して、高度なところにチャレンジするねぇ。

 悪くは無いんだけど、問題は2つで、1つ目は合うシートがあるのかって問題。純正流用だと、ドンピシャでレールの穴位置が合う車種が少ないんだよ。
 この場合だと、ツアラー系のシートくらいしか無いんじゃない?
 2つ目は、合うシートが流通してるかの問題。解体屋さんにタイミングよく入ってれば安く入手できるけど、ネットオークションとかで遠方から買った場合に、送料を含んだらコストに見合うのかってところだよね。
  
 「GT-R用や、RX-7用なんかは無理っスか……」

 ななみんね、それは無理だよ。
 車って、床のレイアウトがそれぞれで、シートのレール形状も、それに合わせてそれぞれだからね。だから、社外品のシートレールなんてものが存在するんだからさ。

 「レールを加工するってのは、どうですか?」

 紗綾ちゃん。それはアウトだね。
 あれって、結構丈夫に作ってあるんだよ。切った貼ったができるほど、柔らかくないし、仮に延長なんて事になったら、出来るの?

 「溶接するってのは」

 それもアウトだね。
 実は昔、兄貴がやったんだよね。兄貴は、車いじりのためだけに溶接の免許取ったくらいだからさ。
 だけど、あれも上手くやらないと折れるからね。

 「ええっ!!」

 昔、R32~34のフロントシートって、S13~15のシルビア系に、4ヶ所中、3ヶ所穴位置が一致するから、流用が流行った事があったんだけど、1ヶ所だけ、シルビアだと長さが足らない位置があったんだよ。

 そこで、兄貴はレールを溶接して延長したんだけど、6回折れたり、剥がれたりしたからね。
 5回ダメで、6回目に兄貴は鉄工所に持って行って頼んだんだよ。確かに、ガッチリ溶接されてて、そこは凄く丈夫だったんだけど、兄貴がそれをつけた180SXを横転させた時、レールが折れて、兄貴はシートごと投げ出されて骨折したからね。

 「そうなんですか……怖っ!」

 紗綾ちゃん。そうなんだよ、怖いんだよ。
 原因はやっぱり溶接でね、溶接した箇所は、ガッチリしていてビクともしなかったんだけど、そこを補強したことによって、衝撃が周辺の溶接されてない箇所に集中して破断したらしいよ。
 以降、兄貴はシートの流用は、ボルトオンでいける場合以外は、一切やらなくなったから。

 「……」

 分かってくれた?
 ちなみに、シルビアにスカイラインのシート流用は、当時の雑誌なんかでも紹介されていてメジャーだったらしく、昔は結構多かったらしいけど、兄貴曰く、酷い例だと、ホムセンで売ってる汎用ステーで延長してる車もあったんだって。
 時代が大らかだったってのもあるんだろうけど、舐めてるよね。

 「恐ろしいっス!」

 ななみんでも分かるよね、この意味。
 そう、そもそもホムセンの汎用ステーって、穴位置合わせるために、中スカスカだし、しかも、シートレールの後端と、ステーをボルト留めしてるんだから、力はそこに逃げちゃうって事だよね。
 ホムセンボルトの強度が、ドライバーの文字通り生命線になっちゃうんだよね。恐ろしや恐ろしや……。

 でもね、1つだけそれまでの間、少しでもこの純正シートを有効に使う方法、教えてあげるね。

 「なんですか?」

 紗綾ちゃんが喰いついてるよ。
 この、マークII系の上級グレードについてるパワーシートは、座面の調整も出来るんだよ。
 だから、まずは、座面の後ろ側を、限界まで下げてあげるんだ。次に、今度は座面の前側を、自分の運転しやすい中でも限界まで上げてあげると、結構お尻がすっぽりはまって、座面も下がるから、車の動きが少しだけ分かりやすくなるよ。

 「凄いっス!!」

 そんなに感動されてもちょっと照れちゃうな~。

 「マイ先輩は、レジェンドですね。憧れちゃいます!」

 あはははは……は、いい気分だな~。
 よし、次の走行は、燈梨と2人きりにしてもらって、キャッキャウフフなドライブしちゃお~♪

 よし、スタート地点に戻って来たぞ……って、あれ柚月じゃね? アイツ、今日は3年生の活動日でもないのに、なんでこんな所に来たんだろ?

 私達3人がチェイサーから降りると、柚月がそれを見てこっちに駆け寄ってきた。

 「あ~、マイ、いたいた~」

 一体何の用なんだろ? 柚月の奴。
 
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