女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

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冬は総括

エリートとハンドル窓

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 あやかんには、燈梨と同じメニューでやって貰ったんだけど、GTEでの時間を長めに取ったんだ。
 ホラ、初心者のあやかんには、まずはFRで操縦性の良さと低速域での滑りやすさに慣れて貰いたいし、アクセルコントロールの重要性も覚えて欲しいんだよ。

 最初の頃は、ちょっとツルっと滑ると、すぐにパニックになって巻き込んでスピンして止まる……の繰り返しだったけど、アクセルコントロールによって、滑らない走り方がある事、滑ってからコントロールができる事、そして滑っても上手に巻き込みを起こしてさっと止まれる事が出来るようになったんだよ。

 おおっ! あやかんは上達が早いね。良いよ良いよ。
 あやかんの場合は呑み込みも早いから、教えてて、教え甲斐があるって言うか、上達が目に見える分、ちゃんと理解したかが分かりやすいんだよね。

 どう? あやかん。
 FRに乗ってみて、4WDと繰り返し乗ることで、確実に違うって事が分かったでしょ。

 「うん、そして舞華っちが、なんでこんな乗り比べをやったのか、FR中心に練習させてくれた意味もなんとなくだけど分かったよ」

 うんうん、なんとなくでも良いんだよ。原理だけしっかり覚えておいてくれれば。
 さて、大体あやかんも分かってくれたことだし、次待ってる人達に譲るとしようかぁ。

 「うん、そうだね」

 あやかんの同乗教習も終わって、スタート地点に戻ったところに、燈梨がもう1台、車を持ってきたよ……って、なんかあの車、どこかで見たような気がする。

 「舞華っちぃ、あの車って、私がNXクーペと一緒に乗り比べた車じゃね?」

 そうだ! あの時にどちらにするかで、散々乗り比べたスターレットじゃん! どうしてここにあるんだ? って言ってて、なんとなくのストーリーが分かってきちゃった私も、きっとこの部に毒されてるんだろうなぁ……。

 あの時、このスターレットかNXクーペかをあやかんに選ばせて、あやかんが選ばなかった方を『部車が確保できた』とか言ってここに置こうって魂胆だったんだなぁ……水野め、いつもいつも思うが、悪意が無いくせに抜け目のない計画性なんだよね。

 私らがGTEから降りると、燈梨が

 「2人共、新しい部車が入ったから、この車で今度はFFの動きも体験してみてね」

 と言ったので、私がこの車について訊ねようとすると

 「これね、今週入ってきた部車なんだ。来年のダートに使おうかと思ってみんなで話し合ってるところなんだけど、まだ決まってないからさ」

 と先に説明してきたので、私はあやかんと燈梨を乗せて走らせてみた。
 ギアを1速に入れて普通にクラッチを繋いでみたが、スターレットはあの時の走りから予測できるような暴れ馬っぷりを見せつけた。

 まず、パワーが余り過ぎていて前輪が空転し始めたのだ。
 そして、空転が始まると同時に更にパワーが炸裂して、物凄い勢いで前輪の空転が激しくなり、少しずつしか前に進まないのだ。

 「……なんか、凄くね?」

 そうだね、あやかん。
 なんかさ、一度空転させると、それがきっかけになって、余計空転が激しくなるんだよね。
 恐らく、走ってると勘違いして、ターボが立ち上がっちゃうんだよ。
 私は言って、例のターボがかかっている時にやかましく点滅するメーターを指さすと、自販機で当たりが出た時並みのやかましさでパラパラと点滅しまくっていた。

 う~ん、この車、凍結路で乗るの難しいな。
 燈梨、これって、見なかったんだけどタイヤ替えてるんだよね。

 「うん、一応新しいスタッドレスだよ。先生が持ってきたんだ」

 このなんともならない走りをどうにかしない事には、教習どころじゃないね。なんか、優子が手を振ってるよ。
 窓を……って、この車、パワーウインドーじゃないのかよ!

 「オプション設定だったらしいよ。さすがにこの型の頃には、つけてる人が圧倒的に多かったみたいだけど……」

 燈梨が言ったけど、その通りだよね。
 確か、昔兄貴がGT-Rのセカンドカーで乗ってたけど、パワーウインドーついてたもん。
 まったく、ハンドル回して開ける窓なんて、軽トラぐらいだよ!
 ところで、どしたの優子?

 「スターレットのターボ車には、Loモードってのがあるんだよ」

 ローモード? ナニソレ?
 優子の説明によると、雪道発進時などのために、ターボの強さを2段階に切り替えられるようになっていて、そのスイッチをオンにしてないと、凄いパワーがかかるんだって。

 このスイッチかな? Loって書いてあるしね。
 あ、ホントだ。さっきの自販機の当たりみたいなメーターの真ん中にLoって表示があって、そこが点灯したよ。
 でもさ、これさ、元々Loって書いてある所に電球の光で明るくなるってどうなのよ? 今だったらLEDじゃね?

 「当時でも、LED表示はできたぞ、ただ、この車だとコストが高すぎるって判断されたんじゃね?」

 あやかん詳しいね。
 え? お父さんが、エレクトロニクスの開発やってるんだって?
 凄いじゃん! あやかんのお父さんは、エリートエンジニアじゃん!

 「あははは、舞華っち、褒めすぎだよ、ウチはエリートじゃないよ……」

 そんなぁ、謙遜しちゃってぇ……、ねぇ燈梨、燈梨もそう思うよね。

 「うん、私も綾香のお父さんが、開発にいるなんて知らなかったよ。エリートなんだね」
 「もう~、2人ともやめろよな~!」

 2人であやかんをいじり終えると、さっきと同じように発進させてみる。
 確かに、さっきより、一回りパワー感が落ちた感じはするんだよ。だから、この機構には一定の意味はあるんだね。
 でもって、それでもパワーが余っちゃって、ツルツル滑る事には変わりないんだよね。

 いや、分かるよ。だったら、ターボが立ち上がらないように走らせればいいじゃんって、話になるんだろうけどさ、この車って、立ち上がるとすぐにターボも立ち上がってきちゃうんだよ。
 要は、ターボのアシストで加速している感じ? これはR32も一緒なんだけどさ、スターレットのは、もっと低いところからターボも一緒に立ち上がっちゃうんだよ。R32ならほぼアイドリング回転とかで走らせていけば、ターボ効かせずにある程度いけちゃうんだけど、この車だと排気量のせいもあって、ターボもセットで……みたいになっちゃうんだよね。

 こうなったら、2速発進で、そぉっとクラッチを繋いでみよう……って、やっぱりエンストしちゃった。
 この排気量だから、あんまり低速トルクが無いんだよね。そして、ずっと疑問に思てた事を訊いてみた。

 燈梨、このスターレットって、LSD入ってるの?
 すると、燈梨は誤魔化すような笑いを浮かべて頭を掻きながら言った。

 「実は、入ってないみたいなんだよね。今後の課題として、LSDどうしようかって話になってるんだ……」
 「オイ、2人とも、怪しいクスリなんか使っちゃダメだよ!」

 あぁ、あやかんを見てると、昔の私を見てるみたいだよ……って、昔って言っても今年の夏前の話だけどね。
 すると、燈梨があやかんに説明を始めた。

 「なぁ~んだ、紛らわしい名前だなぁ……しかし、そのLSDがあると無いでは、まったく違ってくるんだね」

 その通りだよ、あやかん。
 さっきの2台は、共にLSDは入ってるんだ。ちなみに、本来GTEにはLSD入ってないんだけど、前に床のサビ取りしてた時、解体屋のおじさんが、純正のLSD入りのデフケースを、教習車用と合わせて2つくれたから、つけたんだよね。

 そして、あやかんのNXクーペにもLSD入ってるんだよね。

 「そうなの?」

 兄貴が置いていったカタログの本棚の中にNXクーペのカタログがあったんだよ。いかにもバブルって感じで、カタログの半分までと、もう半分が、逆さまになってるから、途中からひっくり返して読まなきゃならない面倒なやつなんだけどさ、それによると、1800ccに標準なんだって。

 しかし、水野の奴め、もしこれで、あやかんがスターレット買ったらどうするつもりだったんだよ! 初心者のあやかんの事だから、雪道でお手上げになっちゃうか、崖下に落っこっちゃうかもしれないじゃん!

それを聞いた燈梨が蒼ざめるのを見て、私は失言だと思って焦ったが、あやかんが

 「まぁ、結局買わなかったんだから、良くね? 実は色と、窓の開閉が手動なのが気に入らなくてさぁ……」

 と、あっけらかんとして言っているのを聞いて、安心した。
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