女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

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冬は総括

洗礼と交代

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 今度は、車をセフィーロに乗り換えるよ。
 まぁ、分かってると思うけど、このセフィーロは4WDだからね。

 「うん、分かってるよ。3年生の卒業制作だもんね」

 燈梨は凄くかしこまって言った。
 このセフィーロは、4WDのアテーサクルージングなんだけど、ミッションブローで廃車になってたんだ。
 それを水野が目ざとく見つけて、私らに、卒業制作代わりに壊れたATを降ろして、GTS-4用のMTと載せ替えろなんて無茶な指令を出したんだよ。

 しかも、10月の中旬に言い出して、ハロウィンの日までに仕上げろだなんてさ、いくら水野だからって無茶苦茶なんだよ。

 まぁ、でもそのお陰で、取り敢えず冬までに4WDの部車が間に合ったんだから良しとしようじゃないか。
 この間、水野と話したところによると、このセフィーロの他にもFFベースの4WDの部車ってのも手配してるらしいんだ。今のところ何になるかはハッキリしてないみたいだけど、FFベースか、FRベースかで、そんなに変わるものなのかな? だって、行きつくところは4輪駆動なんでしょ?

 まぁ、まずは私が軽く走らせてみて、挙動をみた上で教習しよう。
 私は練習場の凍った場所にセフィーロで乗り上げると、ぐるぐるとお尻を振り出しながら、あちこち走らせてみた。

 あぁ、こういう感じの動きなんだね。
 当たり前なんだろうけど柚月の車と同じ動きだ。なるほどね。

 よし、燈梨行くよ。
 同じ感じでまずは走らせてみよう。
 この車の場合は、止まる練習よりも、走らせる練習の方がためになると思うんだよ。

 「うん……」

 燈梨は緊張した面持ちで言った。
 別に燈梨、緊張する事なんて無いからね。たださっきと同じように走らせればいいだけだよ。
 さっきの車よりも遥かにパワーがあるから、そういう意味では気を遣うだろうけど、それ以外はさっきと同じような心構えで乗ってれば良いだけだからさ。

 「分かったよ」

 燈梨は言うと、ギアを1速に入れて、さっきのGTEと同じように発進させた。
 さっきのGTEが125馬力なのに対して、セフィーロは205馬力のターボなので、発進時に後輪が一瞬“ズルッ”っという感じで滑るのを感じたけど、あとは安定して走り始めた。
 よく雪や凍結する冬場に大パワーは不要だみたいな話を聞くのは、この発進時にロスしてる事を指して言ってるんだろうね。

 どう、燈梨?

 「うん、発進の一瞬だけは滑るけど、その後は前からも引っ張られるような感じで走るから、ちょっと戸惑ったけど、慣れると面白いね」

 そうなんだよ。
 スカイラインやセフィーロの4WDは、基本はFRで走ってて、後輪がスリップしたのを感知すると、前輪にも駆動力を配分するシステムになってるから、FRに近い動きが楽しめるらしいよ。
 私はさ、他の4WDって乗ったことが無いから分からないんだけどさ、どうやらこの車の動きは独特のものらしいって事は何となく分かったような気がするよ。
 きっと、普通の4WDは、この発進時の一瞬の“ズルッ”といく感じが無いんだけど、FR特有の曲がりやすさとか、そういうのが無いんだろうって思うんだ。

 しばらく走らせていると、燈梨が嬉しそうに言った。

 「マイちゃん、これ、凄く楽しいね。走り出しちゃえば、滑る心配がほとんど無いから、どんどん踏み込んでいけるし、さっきよりスピードも上げられるし」

 そう言ってガンガン走らせている燈梨を横目で見ながら、私は確信していた。
 そろそろ、くる……と。

 すると、調子よく走っていたセフィーロの挙動が突然崩れると同時に

 「ああっ!!」

 と、燈梨が慌てた様子でハンドルをあちこちに切り始めたが、車はズルっと滑ったまま、巻き込んで止まった。
 ハンドルに必死にしがみついたまま、肩で息をしている燈梨の肩をポンッと叩くと、私は言った。
 燈梨、これが冬道の洗礼だよ。

 「どういう事?」

 誰でも最初はみんな、怖くておっかなびっくりで走らせるんだけど、段々慣れてくるとペースが上がってくるんだ。
 でもって、慣れって怖いもので、段々と注意力が散漫になってくるんだよ。燈梨は段々慣れてきたのと、この車が4WDだってところにすっかり油断して、注意力がお留守になっちゃってたから、こういう結果になっちゃったんだよ。

 それと、勘違いしがちなんだけど、冬道で4WDって案外危険なんだよ。

 「なんで?」

 燈梨は、納得いかないように若干喰って掛かってきたので、私は諭すように言った。
 あのね、燈梨。
 FRの場合は、発進からお尻振っちゃうし、いつ滑り出すか分からないから、常に細心の注意を払って、その上であまりスピード上げないで走ってたでしょ?
 でも、4WDの場合は、そこが安定してるから、ついついスピードを上げがちになるんだよ。

 燈梨は頷いたので、続けた。
 でもね、タイヤが4本しかないのは、どの車も変わらないし、そのタイヤ自体のグリップも、同じ銘柄だったら同じになるでしょ?
 結局、車自体の性能が優れてても、地面に接してる所は大きく変わらないんだよ。

 「なるほどね……」

 あと、もう1つ言うと、4WDは安定してるけど、それって限界を迎えるスピード域も高いって事になっちゃうから、FRなら低速でスピンさせれば、それで終わるけど、4WDだとそのスピード域も高いから、どうにもできなくなっちゃうんだよね。

 「確かに……でも」

 でも?

 「そしたら、どうやって走らせたらいいの? ゆっくりだと4WDの意味がないし」

 まぁ、限界の高さだけが4WDのメリットじゃないから、まずはそこそこで走ってみるってのも重要だよ。

 私の話を聞いて釈然としないものを感じ、シュンとしている燈梨に、私は続けた。
 その限界を掴むための練習場なんじゃん。ここで、限界を掴んで無理じゃない範囲で走る。それが部員としてのメリットだと思うんだよ。

 すると、燈梨はぱぁっと明るい表情になって

 「そうだよね、せっかくの練習場所だもんね。有効に使わないとね!」

 その後、燈梨は、セフィーロの限界を掴もうと、何度も走らせては滑らせて、そして立て直し方も何となくではあるけど掴めたんだよ。

 燈梨、そろそろ、あやかん達に交代してあげないと、待ちくたびれてると思うよ。

 「そうか、私達は明日以降でも練習できるもんね」

 そうなんだよ、私はね、燈梨とこのままずっと練習でも良いんだけどさ、そうもいかない連中が雁首を揃えてるからさ。

 「あははははは……」

 そしたら、スタート地点に戻って……と。
 お~い、あやかん、お待たせ~。

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