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六章(8)
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「……全く……こんなはずじゃなかったのに!本当なら今頃家に帰ってて盛大に誕生日会やってからリアは俺を受け入れてくれてそれd「また手が滑りました」…痛っ!!!ちょっと!どんどん雑になってるよ!俺侯爵家の長男で貴族なんだけど?!」
馬車に揺られて約10分。さっきからこんな調子で、レイヤが俺と話そうとするとガイアが魔法で話せなくして、ガイアが俺に話しかけようとしたらレイヤが(控えめに)殴る。いい加減に静かにしてほしい。アイルも困っているし。早く着いてくれないかなー……と思いながら、俺は2人を叱るのだった。
夕日が赤く俺たちとこの美しい街を照らしていた。
♢♢♢
▽ユークリウッド家
「「おかえりなさいませ!リア様!」」
出迎えてくれたのは、ハーデスとミナだった。久しぶりすぎてびっくりした。ハーデスは前よりもっとダンディな執事になったし、ミナは母親になった事で元気さプラス、母性?で、お淑やかな面も見られる気がする。そんな2人の間にはなんと今、10歳と6歳の子どもがいる。
「久しぶり、2人とも……!元気?」
「元気モリモリですよぉ!今日はリア様の為に一段と頑張ります!何せ今日はリア様のおt「さあミナ。まだ仕事ありますから早く行きましょう。ではリア様、またお会いしましょう」
ハーデスがミナの口を塞ぎ、ぐいぐいと何処かに連れて行く。
……本当にサプライズの予定だったのかもしれない。ガイアが口を滑らせなければ、俺は本当にパーティーなんてあるの知らなかった訳だし。なんだか申し訳ない気持ちになる。ガイアも同じ事を思っているのか、目が泳ぎまくっている。
しばらくすると、ハーデスが伝えてくれたのか、父と母がやってきた。双子の兄も一緒だ。
「リア!おかえりなさい!帰ってきてくれてとっても嬉しいわ!」
「おかえり!リア!噂は聞いてるよ!」
母にぎゅっと抱きしめられ、そして父に頭を撫でられる。
「あら、リア!気づいたらこんなに大きくなってたのね!やっぱり3年も会えなかったのって辛いし寂しいわ……!これからは毎日家にいてちょうだい!」
「……いや、それは困ります……」
まだ病気や怪我で苦しんでいる人だってわんさかいるし、まだまだいろんな人を助けたい。そう思って俺は母の発言にやんわりと断りをいれた。「毎日家にいて」なんてガイアの思考みたいで怖いな。流石親子。いや俺も親子なんだけど。
「さあリア。こっちに来てくれ」
父に手を引かれ、食堂に連れられる。なんとなく察しがついて申し訳ない。
「「「リア!誕生日おめでとう!!!」」」
綺麗に飾り付けられた部屋と、美味しそうな料理。そして俺の好きな甘いお菓子。……凄く立派な誕生日パーティーで俺は唖然とする。ここまで盛大にやられたのは初めてだ。
「リアも18歳か……。成人だな」
「短かったなあ」と父は呟く。そう思うのは俺が国外に行きまくってて帰ってくる日があまり無かったからでもあるだろう。申し訳ない。みんなが席に着くと、ハーデスがケーキの蝋燭に火を灯してくれる。
「蝋燭に火がついたので、照明消しますね!」
ミナが天井にぶら下がっているシャンデリアの電気を消すと、ほぼ真っ暗になった。夕日は沈みかけていて、ぼんやり照らされたみんなのシルエットを浮かべる。
みんな恒例の誕生日の歌を歌ってくれて、俺は蝋燭を吹き消した。
その時だった。
ゴゴゴゴゴゴ……とした低い音が聞こえ、地面が揺れだしたのだ。
「結界生成!炎生成!大丈夫かみんな!!!」
ガイアがみんなを守る結界を展開し、落ちてくるものからみんなを守る。そして、炎を分け与える。不思議なのがその炎は全く熱くなく、燃え移ることもない。ただ照らす役割の物らしい。
「一体何が……?」
母が呟いた次の瞬間。
ゴーン……ゴーン……ゴーン……
「鐘が3回鳴った……!?魔物が来るぞ!」
父が焦った様子でみんなに言う。
「どうしてエルデント国内に魔物が!?」
「いいからハーデス、ミナ!あなたたちは自分の子どもを連れて来なさい!」
母がハーデスとミナを送り出す。2人とも魔法はそれなりに使えるらしいので護衛はいらないだろう。
『エルデント国緊急連絡です!城下町に住んでいる方の避難場所はエルデント国王城です!急いでください!戦える冒険者などの方は応戦お願いします!』
外から拡声の魔法でそう伝えられると、父は母や双子、魔法の使えない使用人たちと王城に行くと急いで出て行った。
残されたのは、俺とガイアとレイヤ。戦いながら、俺が回復する役目だ。
「さあ、行くぞ2人とも!」
ガイアの後を、レイヤと一緒に急いでついていった。
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