魔境愚連隊・帝都黎明篇(スチームパンク・機神隊別班始末①) 前篇

泗水 眞刀(シスイ マコト)

文字の大きさ
9 / 16
第一章 発端 1

しおりを挟む


「一体これはなんと言うことです。久し振りに東京へ戻ってみれば、着くそうそう警察だの腹を切るだのと。なにか悪い夢でも見ているようだ、紫津どうか説明しておくれ」
「あっ旦那さま、よくぞご無事にお帰りなさいました、お疲れ様でございます」
 紫津が深々と頭を垂れる。

「そんな挨拶などそうでも良い、事の顛末が知りたい。なにがどうなってるんだい」
 上品ではあるが線の太い、不敵な面構えの中年紳士はみなを眺め回す。

「あなたはどちらさまでしょう、この方々のご家族ですかな」
 警官にそう言われ紳士は鋭い視線を向けたが、すぐに柔和な表情になり軽く会釈をする。

「申し遅れました。わたしは秋月商船と言う会社を営んでいる秋月龍彦と申します、ここに居るのはみなわたしの身内の者です。なにかわたしの家族が良からぬ事でも――」
「あ、秋月商船? 秋月龍彦――。ではあなたは秋月子爵さまで、そうとは知らずとんだご無礼を致しました」
 警官たちは一様に態度を改め畏まる。

「ここに居るのはわたしの妻の紫津です。若い娘たちは兄榮太郎の娘たち、そしてそこにいらっしゃるのは薗田コンツェルンの嫡男近文君です。決して怪しいものではありません、ご懸念は晴れましたか」
 次々と出てくる大物の名を聞き、警官たちの顔がみるみる青ざめてゆく。

「こ、これは大変ご迷惑をおかけ致しました。どうか此度の失礼はお許しください、もうこれで結構ですのでお引き取りくださいませ。この事は出来ますれば上へは内密に――」
「心配はいりません、あなた方はただ職務に忠実だっただけで落ち度などありません。逆にわが家族がおかけしたご迷惑、お許し願いたい」
「ははっ、飛んでもございません。ではわれわれはこれにて」
 警官たちは逃げるように去って行く。


「おい、薫子! どうせお前がなにかやっちまったんだろ。お前のお転婆にも困ったもんだ、こんな事じゃ買ってきてやった土産はやれんな」
 最新流行の英国風の背広に身を包んだ、貴公子然とした青年が薫子を睨んだ。

「二ヶ月ぶりに会ったのに榮一朗の馬鹿、意地悪、知らない」
 いきなり叱られ、薫子が頬を膨らませそっぽを向く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...