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第1話 ゆらぎの芽 (グリーン スプラウト)
2 05th / Jume / 2012
しおりを挟む江本和臣がスイスの中堅どころの科学雑誌Kにその論文を発表したのは、今から一か月前の事だ。
色々所へ論文を送ったが、どこもかしこも門前払い状態であった。
大学の頃の伝手を頼りに、やっと掲載してもらったのが〝K誌〟だった。
アマゾンの密林の中で偶然発見した、新種の植物に関する研究結果である。
きわめて生存力の強い種で、石にさえ根を張ることが出来る。
その生命力は自然界の常識をはるかに凌駕していた。
多分真空状態の中でも、生命を維持できるのではないかと思われる。
おまけに異常な繁殖力を有しているのだが、自ら進んで繁殖しようとはしないらしく、棲息域はわずかに一キロ四方に限られていた。
いままで発見されなかったのも頷ける。
この発見が認められれば、世紀の大ニューになるのは間違いなかった。
ノーベル賞さえ受賞できるかもしれない。
有名どころの研究所から、サンプルを持って来て欲しいとの連絡が引きも切らなかった。
しかしこの植物は、棲息域を一歩でも出てしまうと瞬く間に枯れてしまうのだ。
棲息域内であっても、根から切り離せばたちまち死んでしまう。
その枯れたサンプルはいくら調べてみても、遺伝子にもDNAにもなんの特徴もなかった。
その辺りに生えている、ただの平凡な植物に過ぎないのである。
やがて江本和臣は誰からも相手にされなくなり、学界から消えて行った。
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