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第一章
謎の少女、現る
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「その必要は無いですよ」
俺が心の中で怨嗟の言葉を吐いていると、横から少女の声が聞こえた。
というか今、俺の心を読んで……。
「はい、そうですよ」
そう言って見知らぬ少女が突如目の前に現れた。
少し小柄で、髪は黒のショートボブ。桜の花びらの形をした髪飾りがとてもよく似合っていた。服はなぜか和服を着ていて、片手に二つの扇を持っていた。年齢は……十四くらいだろうか。
俺から見て、どこか人間離れした美しさを持っている、不思議な少女だった。
「そんな、照れるじゃないですか……」
また俺の心を読んだのか、少女は体をもじもじとし始めた。
しかし、こんな和やかにしている場合ではない。
この少女は俺の正面に現れたのだ。ということは当然、その後ろにあいつがいる。
俺は、危ない! ここから離れるんだ! と心の中で叫んだ。
俺の予感通り、化け物は足を大きく振りかぶって、少女を狙っていた。
「大丈夫ですよ」
だが、少女は焦ることなく、ただ扇を両手に持ち替えた。
その間にも、化け物はその少女をめがけて足を振るっていた。
「心配しなくても、大丈夫ですから」
少女はそう言うと、化け物の方へ向いた。
「『桜舞双扇』二の舞!」
そして、くるりと鮮やかに一回転すると、扇をばっと広げた。
「覆え、『垂れ桜』!」
すると、どこからか桜の花びらが現れ、少女と俺の周りを鳥籠のように覆った。
しかも、驚くことに、化け物の攻撃は桜によって阻まれていた。
俺はこの目で見ていることが信じられなかった。
なにが……ここで起こってるんだ?
少女は目を見張っている俺を見るとくすりと笑った。
「ふふっ、こんなことでいちいち驚かれていては、これから困りますよ?」
これから? 一体どういうことだ?
「とりあえず、痛みを和らげて上げないと……」
俺の言葉(?)を無視して、少女は俺の体に扇を当てた。
「『桜舞双扇』四の舞、癒せ『八重桜』」
そうすると、驚くことに俺の体に響いていた痛みが、少しだけ引いた。
「これで、ちゃんとお話ができますね」
そう言った後、少女は真面目な顔つきになった。
「九十九屋さん……あなたは、神の存在を信じますか?」
少女は急に宗教勧誘の様な事を言い出した。どういうことだ?
「宗教勧誘なんかじゃないですよ。ただ、答えて下さい。あなたは、神の存在を信じますか?」
そう真剣に言ってくるので、俺は薄い意識でしっかりと吟味してみる。
もし……今さっき戦ったのが悪魔で、そいつらが存在するならば……きっと神様も存在するんじゃないだろうか。
「では、日向さんは神を信じるんですね!」
そう、嬉しそうに言われて一瞬ドキッとする。
そんなことより、どうやって心を読んでいるのかとか、あなたはそもそも誰なんですかとか、たくさんの疑問があるんだが……。
「今はそんなこと言っている場合じゃありません!」
と、少女は心を読んでそう言ってきた。
「日向さん。あなたは、悪魔を殺すための力を欲しているはずです」
と、少女は突然俺に言ってきた。何でそんなことこの子が知っているんだ?
確かに、俺はその力を欲している。だったら何だと言うのだろうか。
「もし、その力が今ここで手に入るとしたら……あなたはそれを欲しますか?」
その言葉を聞いて、俺の心臓がドクンと跳ねた。
今、ここで……悪魔を殺せるだけの力が手に入る?
それは……本当なのだろうか?
「ええ、本当です」
彼女に聞いたわけでは無かったが、返事を返してくれた。
「ただし、力を与える代わりに、日向さんには我々に協力してもらわなくてはなりません」
どういうことだ……? 我々……?
俺は疑問に思った。
一体何をさせられるんだ?
そもそも、何で俺の名前を知っているんだ?
それに、我々って……誰のことなんだ?
「それは……まだお答えできません」
少女は申し訳ないといった顔で俯いた。
俺は少女と会話をするべく、心の中で言葉を紡いだ。
なあ、
「はい、なんでしょうか」
お前らのために働けば、俺はこんな化け物なんて、楽勝で倒せるようになるのか?
「はい、なれます」
少女はそう断言した。
じゃあ、俺は両親の仇を……殺すことができるのか?
「その悪魔を、日向さんが見つけることができれば、きっと成し遂げることができることでしょう」
その言葉を聞いて、俺は決意をした。
やってやろうじゃねえか。
代償に何をさせられるかは分からねえ。
この子の話が本当かどうかも分からねえ。
でも……今ここでなにもしないで終わるよりはずっとマシだ!
俺の心を読み取った少女の表情は明るくなり、コクリと頷いた。
「分かりました! では日向さんに神の力を与えたいと思います!」
神? どういうことだ?
「それでは、け、契約の儀式をさせていただきます……」
俺の言葉が届いているのかいないのか、少女はなぜかまたもじもじし出した。
というか、契約の儀式ってなんなんだ?
「契約の儀式とは我々が日向さんに力を与え、日向さんが我々に強力することを誓ったということを示すためのステップのことです」
ふーん、で、具体的になにをするんだ?
そう、俺が尋ねると、少女はおろおろとし出した。
「え、えっと、その………………」
少女は倒れるんじゃないかというくらい顔を真っ赤にすると、
「きっ、きっきっきっ…………キスをするんです!」
と大声で言った。
って、…………………………………………え?
ええええええええええええええええええええ!
俺が心の中で怨嗟の言葉を吐いていると、横から少女の声が聞こえた。
というか今、俺の心を読んで……。
「はい、そうですよ」
そう言って見知らぬ少女が突如目の前に現れた。
少し小柄で、髪は黒のショートボブ。桜の花びらの形をした髪飾りがとてもよく似合っていた。服はなぜか和服を着ていて、片手に二つの扇を持っていた。年齢は……十四くらいだろうか。
俺から見て、どこか人間離れした美しさを持っている、不思議な少女だった。
「そんな、照れるじゃないですか……」
また俺の心を読んだのか、少女は体をもじもじとし始めた。
しかし、こんな和やかにしている場合ではない。
この少女は俺の正面に現れたのだ。ということは当然、その後ろにあいつがいる。
俺は、危ない! ここから離れるんだ! と心の中で叫んだ。
俺の予感通り、化け物は足を大きく振りかぶって、少女を狙っていた。
「大丈夫ですよ」
だが、少女は焦ることなく、ただ扇を両手に持ち替えた。
その間にも、化け物はその少女をめがけて足を振るっていた。
「心配しなくても、大丈夫ですから」
少女はそう言うと、化け物の方へ向いた。
「『桜舞双扇』二の舞!」
そして、くるりと鮮やかに一回転すると、扇をばっと広げた。
「覆え、『垂れ桜』!」
すると、どこからか桜の花びらが現れ、少女と俺の周りを鳥籠のように覆った。
しかも、驚くことに、化け物の攻撃は桜によって阻まれていた。
俺はこの目で見ていることが信じられなかった。
なにが……ここで起こってるんだ?
少女は目を見張っている俺を見るとくすりと笑った。
「ふふっ、こんなことでいちいち驚かれていては、これから困りますよ?」
これから? 一体どういうことだ?
「とりあえず、痛みを和らげて上げないと……」
俺の言葉(?)を無視して、少女は俺の体に扇を当てた。
「『桜舞双扇』四の舞、癒せ『八重桜』」
そうすると、驚くことに俺の体に響いていた痛みが、少しだけ引いた。
「これで、ちゃんとお話ができますね」
そう言った後、少女は真面目な顔つきになった。
「九十九屋さん……あなたは、神の存在を信じますか?」
少女は急に宗教勧誘の様な事を言い出した。どういうことだ?
「宗教勧誘なんかじゃないですよ。ただ、答えて下さい。あなたは、神の存在を信じますか?」
そう真剣に言ってくるので、俺は薄い意識でしっかりと吟味してみる。
もし……今さっき戦ったのが悪魔で、そいつらが存在するならば……きっと神様も存在するんじゃないだろうか。
「では、日向さんは神を信じるんですね!」
そう、嬉しそうに言われて一瞬ドキッとする。
そんなことより、どうやって心を読んでいるのかとか、あなたはそもそも誰なんですかとか、たくさんの疑問があるんだが……。
「今はそんなこと言っている場合じゃありません!」
と、少女は心を読んでそう言ってきた。
「日向さん。あなたは、悪魔を殺すための力を欲しているはずです」
と、少女は突然俺に言ってきた。何でそんなことこの子が知っているんだ?
確かに、俺はその力を欲している。だったら何だと言うのだろうか。
「もし、その力が今ここで手に入るとしたら……あなたはそれを欲しますか?」
その言葉を聞いて、俺の心臓がドクンと跳ねた。
今、ここで……悪魔を殺せるだけの力が手に入る?
それは……本当なのだろうか?
「ええ、本当です」
彼女に聞いたわけでは無かったが、返事を返してくれた。
「ただし、力を与える代わりに、日向さんには我々に協力してもらわなくてはなりません」
どういうことだ……? 我々……?
俺は疑問に思った。
一体何をさせられるんだ?
そもそも、何で俺の名前を知っているんだ?
それに、我々って……誰のことなんだ?
「それは……まだお答えできません」
少女は申し訳ないといった顔で俯いた。
俺は少女と会話をするべく、心の中で言葉を紡いだ。
なあ、
「はい、なんでしょうか」
お前らのために働けば、俺はこんな化け物なんて、楽勝で倒せるようになるのか?
「はい、なれます」
少女はそう断言した。
じゃあ、俺は両親の仇を……殺すことができるのか?
「その悪魔を、日向さんが見つけることができれば、きっと成し遂げることができることでしょう」
その言葉を聞いて、俺は決意をした。
やってやろうじゃねえか。
代償に何をさせられるかは分からねえ。
この子の話が本当かどうかも分からねえ。
でも……今ここでなにもしないで終わるよりはずっとマシだ!
俺の心を読み取った少女の表情は明るくなり、コクリと頷いた。
「分かりました! では日向さんに神の力を与えたいと思います!」
神? どういうことだ?
「それでは、け、契約の儀式をさせていただきます……」
俺の言葉が届いているのかいないのか、少女はなぜかまたもじもじし出した。
というか、契約の儀式ってなんなんだ?
「契約の儀式とは我々が日向さんに力を与え、日向さんが我々に強力することを誓ったということを示すためのステップのことです」
ふーん、で、具体的になにをするんだ?
そう、俺が尋ねると、少女はおろおろとし出した。
「え、えっと、その………………」
少女は倒れるんじゃないかというくらい顔を真っ赤にすると、
「きっ、きっきっきっ…………キスをするんです!」
と大声で言った。
って、…………………………………………え?
ええええええええええええええええええええ!
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