10 / 62
第一章
惨敗
しおりを挟む
「キシャ――――――!」
「!」
化け物は奇声を上げると前足の様なものでこちらに襲いかかってきた。
すかさず、俺は横に避けて距離を取る。
「……! なんつーパワーだよ……!」
俺が立っていた場所を見ると、コンクリートの床に化け物の足が深々と刺さっていた。あれを食らってしまったらひとたまりもないだろう。
そう考えている間も化け物の攻撃は止まらなかった。
次々とこちらをめがけて足を振るってくる。
が、俺も負けてはいられない。
化け物の攻撃を素早いステップで避けつつ、反撃の糸口を探していた。
今のところ化け物の攻撃は連続的に繰り出されている。この中をくぐりぬけて一撃叩きこむってのは難しい。刀でもあれば足斬って動き封じるんだがな……。
まあ、こいつも生物だ。たぶんそのうち体力が切れるはずだろう。そこを狙って顔面に一発入れる。
そう作戦を立てるが、化け物の猛攻はなかなか終わらない。
「はあ、……っ……はあっ――!」
百発目、二百発目と攻撃はとどまらない。
だが、俺も何とか避ける。
どれくらい時間が経ったか分からない。でも、今はただ耐えるしかなかった。
そして、ついに時は来た。
一瞬、化け物の猛攻が止まったのだ。
俺はその瞬間を逃さず手に力を込めた。
「我流、九十九屋流……居合」
俺は思いっきり地面を蹴り、縦に高速回転する。
「鬼神転斬!」
化け物の顔面まで来たところで、俺はその回転を利用して、思いっきり物干し竿を顔面に叩き込んだ。
だが、
「なっ!」
まるで、鋼鉄を叩いたかのような感触。
顔面にきれいに入った物干し竿は、化け物の顔面の硬度によってひしゃげてしまった。
「キシャ――――――!」
化け物は怒ったのか、宙に浮く俺めがけて、さっきの倍の勢いで足を振るってきた。
「くっ」
俺は何とかその攻撃を避けるために、物干し竿の曲がった部分を化け物のあごに引っかけた。
そして、それを思いっきり引き上げるようにして力を入れ、自分の体を地面に叩きつけた。
「ぐおっ……っ……」
多少はダメージを受けるが、あの攻撃をもろに食らうよりはマシだった。
俺は背中の痛みを無視して素早く立ち上がる。
くそ、あの化け物……虫っぽい姿してるくせになんつー硬さだよ!
こんなの……チートじゃねえか!
だが、そんなことも言っていられない。
物干し竿が壊れてしまった以上、新たに丈夫で刀の代わりになりそうなものを探してこなければならない。
俺は必死に辺りを探す。
しかし、化け物はそんな俺の気持など知らず、攻撃を再開してくる。
「はあ…………っはあ……」
正直もう体力の限界だった。
長い道のりを全力疾走し、攻撃を休みなく避け続けたのだから当然ではあるが。
そんなふらふらな状態の中、俺は化け物の立つ先に希望を見つけた。
化け物の真後ろに鉄パイプが積み上がっていたのだ。なんで見つけられなかったのか。
俺はその希望を求めて、最後の力を振り絞り、全速力で走りだした。
走る。
走る。
ただ、走る。
もう何も考えていなかった。ただ、鉄パイプまで辿り着くために走る。
そして俺は――一本のパイプを掴んだ。
よしっと心の中で叫んだ。
これで戦える! そう思った。
が、俺は完全に失念していた。
ただ、これを取りに行きたいがために忘れてしまっていた。
奴の存在を。
「キシャ――――――――!」
化け物は足を大きく振るった。
俺はとっさに鉄パイプで防御にかかるが、パイプは無残にも折れ曲がってしまった。俺の体は勢いよく吹っ飛び、謎の壁へと叩きつけられた。
「ごばっ……くぁっ」
俺はあまりの衝撃に血を吐いた。
一つのことに集中すると、他がおろそかになってしまうのは俺の悪い癖だ。
俺はなんてバカなんだよ!
鉄パイプを取りに行くのに、化け物の存在を忘れるなんて……本末転倒じゃねえか!
だが、そんなことを考えているのもつらいほど、俺の体は悲鳴を上げていた。
痛い。
体全体に激痛が走っていた。
きっと体中の骨が折れている。
足も手も動かず、かろうじて動くのは首の骨くらいだ。
そんな状態で俺は正面にいる化け物をにらみつける。
こんなところで死んでたまるか! と叫びたかった。
だが、骨が折れてしまって、もう口を動かすことすらできない。
悔しかった。
まだ、両親の仇を討ってない。
見つけてすらいない。
頑張って来た剣術もまるで歯が立たない。
こんな気持ちの悪い化け物ですら倒すことができない。
……だが、俺の意思は死なねえ。
地獄に落ちても、天国へ行っても、必ず生まれ変わってお前らを殺してやるよ。
何度でも。何度でも何度でも――
「その必要は無いですよ」
俺が心の中で怨嗟の言葉を吐いていると、横から少女の声が聞こえた。
「!」
化け物は奇声を上げると前足の様なものでこちらに襲いかかってきた。
すかさず、俺は横に避けて距離を取る。
「……! なんつーパワーだよ……!」
俺が立っていた場所を見ると、コンクリートの床に化け物の足が深々と刺さっていた。あれを食らってしまったらひとたまりもないだろう。
そう考えている間も化け物の攻撃は止まらなかった。
次々とこちらをめがけて足を振るってくる。
が、俺も負けてはいられない。
化け物の攻撃を素早いステップで避けつつ、反撃の糸口を探していた。
今のところ化け物の攻撃は連続的に繰り出されている。この中をくぐりぬけて一撃叩きこむってのは難しい。刀でもあれば足斬って動き封じるんだがな……。
まあ、こいつも生物だ。たぶんそのうち体力が切れるはずだろう。そこを狙って顔面に一発入れる。
そう作戦を立てるが、化け物の猛攻はなかなか終わらない。
「はあ、……っ……はあっ――!」
百発目、二百発目と攻撃はとどまらない。
だが、俺も何とか避ける。
どれくらい時間が経ったか分からない。でも、今はただ耐えるしかなかった。
そして、ついに時は来た。
一瞬、化け物の猛攻が止まったのだ。
俺はその瞬間を逃さず手に力を込めた。
「我流、九十九屋流……居合」
俺は思いっきり地面を蹴り、縦に高速回転する。
「鬼神転斬!」
化け物の顔面まで来たところで、俺はその回転を利用して、思いっきり物干し竿を顔面に叩き込んだ。
だが、
「なっ!」
まるで、鋼鉄を叩いたかのような感触。
顔面にきれいに入った物干し竿は、化け物の顔面の硬度によってひしゃげてしまった。
「キシャ――――――!」
化け物は怒ったのか、宙に浮く俺めがけて、さっきの倍の勢いで足を振るってきた。
「くっ」
俺は何とかその攻撃を避けるために、物干し竿の曲がった部分を化け物のあごに引っかけた。
そして、それを思いっきり引き上げるようにして力を入れ、自分の体を地面に叩きつけた。
「ぐおっ……っ……」
多少はダメージを受けるが、あの攻撃をもろに食らうよりはマシだった。
俺は背中の痛みを無視して素早く立ち上がる。
くそ、あの化け物……虫っぽい姿してるくせになんつー硬さだよ!
こんなの……チートじゃねえか!
だが、そんなことも言っていられない。
物干し竿が壊れてしまった以上、新たに丈夫で刀の代わりになりそうなものを探してこなければならない。
俺は必死に辺りを探す。
しかし、化け物はそんな俺の気持など知らず、攻撃を再開してくる。
「はあ…………っはあ……」
正直もう体力の限界だった。
長い道のりを全力疾走し、攻撃を休みなく避け続けたのだから当然ではあるが。
そんなふらふらな状態の中、俺は化け物の立つ先に希望を見つけた。
化け物の真後ろに鉄パイプが積み上がっていたのだ。なんで見つけられなかったのか。
俺はその希望を求めて、最後の力を振り絞り、全速力で走りだした。
走る。
走る。
ただ、走る。
もう何も考えていなかった。ただ、鉄パイプまで辿り着くために走る。
そして俺は――一本のパイプを掴んだ。
よしっと心の中で叫んだ。
これで戦える! そう思った。
が、俺は完全に失念していた。
ただ、これを取りに行きたいがために忘れてしまっていた。
奴の存在を。
「キシャ――――――――!」
化け物は足を大きく振るった。
俺はとっさに鉄パイプで防御にかかるが、パイプは無残にも折れ曲がってしまった。俺の体は勢いよく吹っ飛び、謎の壁へと叩きつけられた。
「ごばっ……くぁっ」
俺はあまりの衝撃に血を吐いた。
一つのことに集中すると、他がおろそかになってしまうのは俺の悪い癖だ。
俺はなんてバカなんだよ!
鉄パイプを取りに行くのに、化け物の存在を忘れるなんて……本末転倒じゃねえか!
だが、そんなことを考えているのもつらいほど、俺の体は悲鳴を上げていた。
痛い。
体全体に激痛が走っていた。
きっと体中の骨が折れている。
足も手も動かず、かろうじて動くのは首の骨くらいだ。
そんな状態で俺は正面にいる化け物をにらみつける。
こんなところで死んでたまるか! と叫びたかった。
だが、骨が折れてしまって、もう口を動かすことすらできない。
悔しかった。
まだ、両親の仇を討ってない。
見つけてすらいない。
頑張って来た剣術もまるで歯が立たない。
こんな気持ちの悪い化け物ですら倒すことができない。
……だが、俺の意思は死なねえ。
地獄に落ちても、天国へ行っても、必ず生まれ変わってお前らを殺してやるよ。
何度でも。何度でも何度でも――
「その必要は無いですよ」
俺が心の中で怨嗟の言葉を吐いていると、横から少女の声が聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる