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第一章
蜘蛛の化け物
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体長は四、五メートルほどあるだろうか。
巨大な六本の脚を両サイドにある建物に突き指して、体を支えていた。
その下には胴から上が無い二人分の男の死体だった。
それを見た俺はひどい吐き気に見舞われる。
しかし、なんとかそれを堪え、すぐに頭を切り替えた。
なんなんだアイツ。
さっきの二人はこいつに……食われたのか?
一体いつ現れたんだ?
ヤバい。
こいつは……ヤバい!
俺の頭の中で警鐘が鳴り始めた。そして、本能のままに動きだす。
俺は手に物干し竿を持ったまま、その化け物の下を走り抜けて行く。
とにかく、さっさとこの路地を抜け出さなければならない。しかし、俺はすでに右も左もわからないところにまで来てしまっていた。
そんなことを考えながら走っていると、後ろから「キシャ――――!」という叫びが聞こえてきた。
悪寒が走り、後ろを振り返ってみると、ドスドスとさっきの化け物が走ってきていた。
「くっそ! やべえ!」
全速力で走るが、化け物はすぐに追いついてきた。恐怖の足音がかなり近くから聞こえてくる。
くそったれ! ……なんなんだよあの化け物! なんであんな巨体であんだけ動けるんだよ!
あんなの……あんなのまるで、悪魔じゃねえか!
俺はそう心の中で呟いて……気付いた。
…………悪魔?
俺の両親を殺した憎き悪魔。本当にいれば絶対に殺してやると思っていた。その悪魔と近い化け物が、今俺の後ろにいるのだ。
もしかしたら、と俺は考える。こいつを殺せば、少しはあの悪魔に近づけるかもしれない。
だが、その心とは裏腹に、俺の足は恐怖で止まることができなかった。ただ一本の道をひたすら逃げ続けているだけだ。
自分で自分が情けなくなってくる。なにが仇打ちだよ。なにが殺してやるだよ。
俺は……俺には、戦う勇気すらねえじゃねえか。
……いや、そんなこと言ってる場合じゃねえだろ。
俺は自分を奮い立たせる。
そんな、弱気になったら駄目だろうが。
何のために今まで剣術を学んできたんだよ。
ここで逃げたら……全てが終わりだ!
そう決意を決めたところで、長い路地から開けた場所に出られた。
だが、目の前に広がっていた光景は信じがたいものだった。
「嘘、だろ……?」
路地を抜けた場所から見えた街は、ぼやけていた。
十メートル先に、フィルターの様な半透明の巨大な壁があるのだ。
上を見てみると、天井のように半透明の壁が広がっていた。
「どういうことだ……?」
俺が呑気に考え事をしているうちに背後から化け物が現れた。
化け物は何の音も出さずにこちらをじっと見てきている。
俺はごくんと喉を鳴らし、緊張感を高める。
集中しろ、俺! 怖気づくな!
俺は身をかがめて、物干し竿をわきに構えた。
巨大な六本の脚を両サイドにある建物に突き指して、体を支えていた。
その下には胴から上が無い二人分の男の死体だった。
それを見た俺はひどい吐き気に見舞われる。
しかし、なんとかそれを堪え、すぐに頭を切り替えた。
なんなんだアイツ。
さっきの二人はこいつに……食われたのか?
一体いつ現れたんだ?
ヤバい。
こいつは……ヤバい!
俺の頭の中で警鐘が鳴り始めた。そして、本能のままに動きだす。
俺は手に物干し竿を持ったまま、その化け物の下を走り抜けて行く。
とにかく、さっさとこの路地を抜け出さなければならない。しかし、俺はすでに右も左もわからないところにまで来てしまっていた。
そんなことを考えながら走っていると、後ろから「キシャ――――!」という叫びが聞こえてきた。
悪寒が走り、後ろを振り返ってみると、ドスドスとさっきの化け物が走ってきていた。
「くっそ! やべえ!」
全速力で走るが、化け物はすぐに追いついてきた。恐怖の足音がかなり近くから聞こえてくる。
くそったれ! ……なんなんだよあの化け物! なんであんな巨体であんだけ動けるんだよ!
あんなの……あんなのまるで、悪魔じゃねえか!
俺はそう心の中で呟いて……気付いた。
…………悪魔?
俺の両親を殺した憎き悪魔。本当にいれば絶対に殺してやると思っていた。その悪魔と近い化け物が、今俺の後ろにいるのだ。
もしかしたら、と俺は考える。こいつを殺せば、少しはあの悪魔に近づけるかもしれない。
だが、その心とは裏腹に、俺の足は恐怖で止まることができなかった。ただ一本の道をひたすら逃げ続けているだけだ。
自分で自分が情けなくなってくる。なにが仇打ちだよ。なにが殺してやるだよ。
俺は……俺には、戦う勇気すらねえじゃねえか。
……いや、そんなこと言ってる場合じゃねえだろ。
俺は自分を奮い立たせる。
そんな、弱気になったら駄目だろうが。
何のために今まで剣術を学んできたんだよ。
ここで逃げたら……全てが終わりだ!
そう決意を決めたところで、長い路地から開けた場所に出られた。
だが、目の前に広がっていた光景は信じがたいものだった。
「嘘、だろ……?」
路地を抜けた場所から見えた街は、ぼやけていた。
十メートル先に、フィルターの様な半透明の巨大な壁があるのだ。
上を見てみると、天井のように半透明の壁が広がっていた。
「どういうことだ……?」
俺が呑気に考え事をしているうちに背後から化け物が現れた。
化け物は何の音も出さずにこちらをじっと見てきている。
俺はごくんと喉を鳴らし、緊張感を高める。
集中しろ、俺! 怖気づくな!
俺は身をかがめて、物干し竿をわきに構えた。
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