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第二章
兄弟
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なんだかんだで放課後となり、俺は教室で下校の準備を整えていた。
結局あの後は、気分を完全に損ねてしまったのか、凛音は一切俺に話しかけてこなかった。
大聖がその様子を見て、ニヤニヤしながら「痴話喧嘩か? ん?」とか言ってきたので、とりあえず顔に十発ほど入れておいた。
さすがに謝ろうかと思ったのだが、なかなかタイミングがつかめず、今の状況に陥ってしまっているわけなのだが……。何やってるんだろうな、俺……。
そんな自己嫌悪に浸っていると、教室のドアが開き、誰かが教室に入ってきた。
俺はその姿を見て心底驚いた。なんと凛音だったのである。
凛音は何やら不安そうな顔をしてこちらへと近づいてきた。
そして、モジモジとしながら、その口を動かした。
「あの……さっきは、ごめん。やっぱり、日向にも話したくないことってあるよね……それなのに私、無理やり聞こうとしちゃって……」
俺から謝ろうとしていたのに、凛音の方から謝ってきてしまった。そのことが、俺にはとても申し訳なく感じる。
罪悪感に背中を押され、俺も凛音に謝った。
「いや、こっちこそ……そもそも俺が言わずに逃げたのが悪いんだから……ごめんな」
「………………ありがと」
凛音はぽつりとそう呟くと何を思ったのか、俺に抱きついてきた。
抱きつかれたせいで凛音からは女の子独特のいい香りが香ってきて、体には柔らかい肌の感触が伝わってきてしまっている。
この状況のせいで頭がおかしくなりそうだ。それでも、何とか俺は理性を保った。
凛音は妹だぞ! 妹に欲情するとか……どんな兄だ!
そう自分に言い聞かせ、なるべく平静を装って言った。
「りりりりりり凛音サーン? あああああの、ちょっとはは、離れてくれませんきゃ!」
………………言ってる俺が一番びっくりしてるよ。噛みすぎだろ。
しかし、それが面白かったのか、凛音はふふっと吹き出し大笑いし出した。
「あははははは! なんなのそれ!」
「うるせーな! こうなったのは俺のせいじゃねえよ!」
我ながらよく分からないことを口走ってしまった。
凛音はひとしきり笑うと、笑顔はそのままに俺の方へ顔を向けた。
「でも、よかった。私のこと、……として見てくれてたんだね」
「ん? よく聞き取れなかったんだが……」
「いいの、別に聞いてなくて」
凛音はそう言って、今度は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「明日のケーキ屋さんでおごり、これでチャラにしてあげる」
「あ、おい!」
そう言い残し、凛音はそそくさと教室から立ち去ってしまった。
その笑顔はあまりにも魅力的で、しばらく俺はその場を動けなかった。
その時だけ、一瞬の気の迷いだが……彼女の姿は、一人のかわいらしい女の子に見えた。
そして、
「あれ、明日のケーキ屋って……!」
俺はいつか交わした凛音との約束を思い出し、血の気が引いていくのを感じた。
結局あの後は、気分を完全に損ねてしまったのか、凛音は一切俺に話しかけてこなかった。
大聖がその様子を見て、ニヤニヤしながら「痴話喧嘩か? ん?」とか言ってきたので、とりあえず顔に十発ほど入れておいた。
さすがに謝ろうかと思ったのだが、なかなかタイミングがつかめず、今の状況に陥ってしまっているわけなのだが……。何やってるんだろうな、俺……。
そんな自己嫌悪に浸っていると、教室のドアが開き、誰かが教室に入ってきた。
俺はその姿を見て心底驚いた。なんと凛音だったのである。
凛音は何やら不安そうな顔をしてこちらへと近づいてきた。
そして、モジモジとしながら、その口を動かした。
「あの……さっきは、ごめん。やっぱり、日向にも話したくないことってあるよね……それなのに私、無理やり聞こうとしちゃって……」
俺から謝ろうとしていたのに、凛音の方から謝ってきてしまった。そのことが、俺にはとても申し訳なく感じる。
罪悪感に背中を押され、俺も凛音に謝った。
「いや、こっちこそ……そもそも俺が言わずに逃げたのが悪いんだから……ごめんな」
「………………ありがと」
凛音はぽつりとそう呟くと何を思ったのか、俺に抱きついてきた。
抱きつかれたせいで凛音からは女の子独特のいい香りが香ってきて、体には柔らかい肌の感触が伝わってきてしまっている。
この状況のせいで頭がおかしくなりそうだ。それでも、何とか俺は理性を保った。
凛音は妹だぞ! 妹に欲情するとか……どんな兄だ!
そう自分に言い聞かせ、なるべく平静を装って言った。
「りりりりりり凛音サーン? あああああの、ちょっとはは、離れてくれませんきゃ!」
………………言ってる俺が一番びっくりしてるよ。噛みすぎだろ。
しかし、それが面白かったのか、凛音はふふっと吹き出し大笑いし出した。
「あははははは! なんなのそれ!」
「うるせーな! こうなったのは俺のせいじゃねえよ!」
我ながらよく分からないことを口走ってしまった。
凛音はひとしきり笑うと、笑顔はそのままに俺の方へ顔を向けた。
「でも、よかった。私のこと、……として見てくれてたんだね」
「ん? よく聞き取れなかったんだが……」
「いいの、別に聞いてなくて」
凛音はそう言って、今度は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「明日のケーキ屋さんでおごり、これでチャラにしてあげる」
「あ、おい!」
そう言い残し、凛音はそそくさと教室から立ち去ってしまった。
その笑顔はあまりにも魅力的で、しばらく俺はその場を動けなかった。
その時だけ、一瞬の気の迷いだが……彼女の姿は、一人のかわいらしい女の子に見えた。
そして、
「あれ、明日のケーキ屋って……!」
俺はいつか交わした凛音との約束を思い出し、血の気が引いていくのを感じた。
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