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第二章
再び
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「やっぱりまずいよなあ……」
だんだんと日が落ち、辺りも暗くなってきていたが、俺はまだ帰宅せずに帰り道をうろうろとしていた。
凛音との約束を完全に忘れて、シーナとも約束をしてしまっていたことのショックと恐怖で、ずっと教室でうずくまっていたからである。
今日のことで俺は自分のメンタルの弱さを感じた。俺はガラスのハートを持つ男……。
それはともかく、約束を破ることは、人間として最低のことである。
これは父さんが生前よく言っていた言葉である。当時まだまだ幼かった俺だが、この言葉は良く覚えている。
俺は父さんの言いつけを守り、今までそれを破ったことは無かった。今回もなるべく破らないようにしたい。
そう考えていると、俺の目の前に突風が吹いた。
急に吹いてきた風に対して俺は反射的に目を瞑ってしまった。
風がやみ、目を開くと、そこにはシーナが立っていた。
だが、この程度では俺は驚かない。術がどういう物かは昨日知ったし、こんなことでいちいち驚いていたら、きっと身が持たないだろう。
風と共に現れたシーナは、少し興奮気味だった。
「日向さん! 悪魔と思しき反応がありました。至急向かいましょう!」
「悪魔と思しき反応?」
現れて突然、良く分からないことを言われたので、思わず聞き返してしまった。
「私たちは悪魔の気配を、やつらが力を使ったときに発生する負のエネルギーを察知して探しているんです」
「! つーことは、今どっかで悪魔がなんかやらかしてるってことか!」
「はい、そうです! これは『剣聖の使徒』としての初仕事ですよ! 燃えちゃいますね!」
シーナは、むっふーと鼻息を荒くして嬉しそうに言った。
……本当は喜んでいては駄目なんだ。なにも起こらないのが一番良い。
いや、こんな悠長にしている場合ではない。この街のどこかに悪魔がいるんだ!
「シーナ、案内してくれ! 一体どこにいるんだ!」
「ついてきて下さい!」
そう言ってシーナは走り出した。
俺もシーナの後に続くようにして走り出した。
と、同時に思ってしまった。
「なあ、シーナ。術で俺をそこに連れていくっていう選択肢は無いのか?」
「…………それもそうでした」
シーナは拗ねたようにそう呟いて止まった。
やはりドジだな、この子。俺がしっかりしないと。
シーナは首をふるふると振って俺に近づいてきた。嫌な気持ちでも振り払ったのだろう。
その後、トテトテと俺の方へ寄ってきた……って近い! 近いよ!
シーナはぴったりと俺にくっついてきて、俺の心はドッキドキだ。
そうしているうちに、シーナは俺の肩に手を置き、短く呟いた。
「『流雲』」
すると、俺たちの体は白い雲にすっぽりと覆われて周りが見えなくなってしまった。
そして、その雲が消えたかと思うと目の前にはいつか見た謎の壁――『魔の封陣』が目いっぱいに張られていた。
外側から見たこの壁は、中が全く見えなかった。内側から見た時はぼやけていただけで多少は見えていたのだが、不思議なものだ。
「この中に、悪魔がいるんだな……」
再び訪れた戦いに緊張が走っていた。だが、ここで怖気づいていても仕方が無い。俺は心を落ち着かせ、気持ちを引き締める。
「いいですか、日向さん!」
と、シーナは唐突に声をかけてきた。
一瞬戸惑ったが、俺はシーナの言葉へと耳を傾ける。
「この先にどんな悪魔がいるのかは分かりませんが……日向さんはまだ、力のコントロールができない状態です。あまり無茶はせず、まずは力の解放に努めて下さい。それと、私は極力相手を倒さないようにしますから、頑張ってください」
「おう、分かった」
「では、行きましょう」
シーナは先頭に立ち、『魔の封陣』の中へ向かって行った。
昨日シーナが言っていた通り、その壁は何かを防ぐわけでもなく、すんなりと通した。
俺も一歩を踏み出し、その壁へと手を伸ばした。
その手は難なく壁をすり抜け、俺はそのまま『魔の封陣』の中へと身を投じた。
だんだんと日が落ち、辺りも暗くなってきていたが、俺はまだ帰宅せずに帰り道をうろうろとしていた。
凛音との約束を完全に忘れて、シーナとも約束をしてしまっていたことのショックと恐怖で、ずっと教室でうずくまっていたからである。
今日のことで俺は自分のメンタルの弱さを感じた。俺はガラスのハートを持つ男……。
それはともかく、約束を破ることは、人間として最低のことである。
これは父さんが生前よく言っていた言葉である。当時まだまだ幼かった俺だが、この言葉は良く覚えている。
俺は父さんの言いつけを守り、今までそれを破ったことは無かった。今回もなるべく破らないようにしたい。
そう考えていると、俺の目の前に突風が吹いた。
急に吹いてきた風に対して俺は反射的に目を瞑ってしまった。
風がやみ、目を開くと、そこにはシーナが立っていた。
だが、この程度では俺は驚かない。術がどういう物かは昨日知ったし、こんなことでいちいち驚いていたら、きっと身が持たないだろう。
風と共に現れたシーナは、少し興奮気味だった。
「日向さん! 悪魔と思しき反応がありました。至急向かいましょう!」
「悪魔と思しき反応?」
現れて突然、良く分からないことを言われたので、思わず聞き返してしまった。
「私たちは悪魔の気配を、やつらが力を使ったときに発生する負のエネルギーを察知して探しているんです」
「! つーことは、今どっかで悪魔がなんかやらかしてるってことか!」
「はい、そうです! これは『剣聖の使徒』としての初仕事ですよ! 燃えちゃいますね!」
シーナは、むっふーと鼻息を荒くして嬉しそうに言った。
……本当は喜んでいては駄目なんだ。なにも起こらないのが一番良い。
いや、こんな悠長にしている場合ではない。この街のどこかに悪魔がいるんだ!
「シーナ、案内してくれ! 一体どこにいるんだ!」
「ついてきて下さい!」
そう言ってシーナは走り出した。
俺もシーナの後に続くようにして走り出した。
と、同時に思ってしまった。
「なあ、シーナ。術で俺をそこに連れていくっていう選択肢は無いのか?」
「…………それもそうでした」
シーナは拗ねたようにそう呟いて止まった。
やはりドジだな、この子。俺がしっかりしないと。
シーナは首をふるふると振って俺に近づいてきた。嫌な気持ちでも振り払ったのだろう。
その後、トテトテと俺の方へ寄ってきた……って近い! 近いよ!
シーナはぴったりと俺にくっついてきて、俺の心はドッキドキだ。
そうしているうちに、シーナは俺の肩に手を置き、短く呟いた。
「『流雲』」
すると、俺たちの体は白い雲にすっぽりと覆われて周りが見えなくなってしまった。
そして、その雲が消えたかと思うと目の前にはいつか見た謎の壁――『魔の封陣』が目いっぱいに張られていた。
外側から見たこの壁は、中が全く見えなかった。内側から見た時はぼやけていただけで多少は見えていたのだが、不思議なものだ。
「この中に、悪魔がいるんだな……」
再び訪れた戦いに緊張が走っていた。だが、ここで怖気づいていても仕方が無い。俺は心を落ち着かせ、気持ちを引き締める。
「いいですか、日向さん!」
と、シーナは唐突に声をかけてきた。
一瞬戸惑ったが、俺はシーナの言葉へと耳を傾ける。
「この先にどんな悪魔がいるのかは分かりませんが……日向さんはまだ、力のコントロールができない状態です。あまり無茶はせず、まずは力の解放に努めて下さい。それと、私は極力相手を倒さないようにしますから、頑張ってください」
「おう、分かった」
「では、行きましょう」
シーナは先頭に立ち、『魔の封陣』の中へ向かって行った。
昨日シーナが言っていた通り、その壁は何かを防ぐわけでもなく、すんなりと通した。
俺も一歩を踏み出し、その壁へと手を伸ばした。
その手は難なく壁をすり抜け、俺はそのまま『魔の封陣』の中へと身を投じた。
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