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第二章
意思の力
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『魔の封陣』の中には壊れた住宅街と、異様な光景が広がっていた。
一つ目に、辺りに立ち込める強烈な死臭。
二つ目に、あちこちに広がっている人間の死体。
三つ目に、ざっと五体はいる、昨日見たあの魔獣たち。
もう……手遅れだったか……。
この光景の全てを捉えた俺は、無意識のうちに体を動かしていた。
「! 日向さん!」
突然動きだした俺に驚いたのか、シーナが声をかけてきたが、その声は俺の耳には全く入ってこなかった。
ただ、殺す。
俺の頭の中にはその一言しか、もう巡っていなかった。
何も考えずに魔獣に近づき、その足を思いっきり蹴りつけた。
だが、当然なんの力も使っていない俺から繰り出された蹴りなど、魔獣には全く効いた様子は無かった。
それに気づきもせずに、俺はただ蹴り続けた。
剣など、手元には無い。
蹴って、蹴って、蹴る。
ひたすらそれを繰り返すうちに、魔獣があのときのように足を振り上げた。
しかし、俺はそんなことなど気にも留めず、蹴って、蹴る。ただ、ひたすらにそれだけを繰り返す。
そして、足は俺の下へと振り下ろされ、
「『桜舞双扇』二の舞、覆え、『垂れ桜』!」
垂れる桜が、それを受け止めた。
それでも俺は蹴り続けていた。まるで、機械仕掛けの人形のように。
「落ち着いてください、日向さん!」
そんな俺に必死な形相でシーナが声をかけてくる。
「今のままでは、なんの力も持たないただの人のままです! 目を覚ましてください、日向、さん!」
シーナはセリフの最後の最後で俺の息子を――思いっきり扇で叩き上げた。
「! ???!!?!??!!!」
言葉にならない悲鳴を上げ、俺はようやく目を覚ました。
自分の意識をしっかり持ち、シーナに話しかける。
「すまん……自分を見失っちまってた。止めたくれてありがとな。俺の下半身に走るこの激痛に対する怒りは、どこにぶつければいいんだコンチクショウ!」
若干涙目だよ……なんでこんな方法取ったの……?
しかし、そうも言ってはいられない。正気に戻れた今、なんとか力の解放に努めなけらば。
そう気を引き締めていると、横からなにか温かいエネルギーを感じ取った。
俺の心を読み取ったのか、シーナが力の解放についてのアドバイスをしてくれた。
「日向さんは、明確に悪魔に対する自分の感情をイメージしてください。感情からエネルギーが生まれることによって、力が日向さんの意思の力に反応し解放されます。ですが、さっきのような本能的な怒りではなく、日向さんの意思としてです」
「分かった、やってみる」
ゆっくりとしているわけにもいかないので、俺はすぐに力の解放に取りかかる。
そのうちにシーナが時間稼ぎに取りかかっていてくれていた。雑魚とか言っていたんだ、あいつらを倒すくらい、本当は楽勝なのだろう。
俺は頭の中にイメージをする。怒りを、悲しみを、形にする。
その時俺は、心の中で何かが生まれたのを感じ取った。なにか、特別な何かを。
俺は悟った。これがきっと、意思の力……!
俺の気持が形になったもの……。
心の中で生まれたその力は、どんどん大きくなった。そして、成長を続けるそれは一瞬静止を見せた。
そして、弾ける。弾けた巨大な意思の肩ありは、俺の体中へと広がっていき……。
「うおっ!」
体が赤く、眩く輝き出す。すると、その力は、俺の中へと浸透していった。
俺はそのまま、次の行動へと移った。
いつかイメージした刀の形を思い描き、殺気を込める。
虚空へと手を伸ばし、その柄をにぎると、素早く引き抜いた。
そして、刀は現れる。俺の意思を刃へと変えて。
「よしっ! 成功だ!」
俺は短くガッツポーズをした。一人で力を解放し、刀を引き抜くことができたのが、純粋にうれしかったからだ。
これで力の解放の仕方をマスターすることができた、と思う。
俺は力の解放ができたことをシーナに伝えるために、思いっきり叫んだ。
「シーナ、できたぞ! 後は俺に任せて、こっち戻ってこい!」
俺の言葉を聞いたシーナは、驚いた顔になり、すぐにこちらに戻ってきた。
「本当に使えてますね……こんなに早く使えるなんて……すごいです、日向さん!」
シーナはまるで自分のことであるかのようにぴょんぴょんと跳び跳ねた。
とてもかわいらしいが、今はそんな和やかムードに浸っている場合ではない。
俺はすぐに魔獣の方へと向く。
シーナも俺から何かを感じ取ったのか、俺から少し距離を取った。
一つ目に、辺りに立ち込める強烈な死臭。
二つ目に、あちこちに広がっている人間の死体。
三つ目に、ざっと五体はいる、昨日見たあの魔獣たち。
もう……手遅れだったか……。
この光景の全てを捉えた俺は、無意識のうちに体を動かしていた。
「! 日向さん!」
突然動きだした俺に驚いたのか、シーナが声をかけてきたが、その声は俺の耳には全く入ってこなかった。
ただ、殺す。
俺の頭の中にはその一言しか、もう巡っていなかった。
何も考えずに魔獣に近づき、その足を思いっきり蹴りつけた。
だが、当然なんの力も使っていない俺から繰り出された蹴りなど、魔獣には全く効いた様子は無かった。
それに気づきもせずに、俺はただ蹴り続けた。
剣など、手元には無い。
蹴って、蹴って、蹴る。
ひたすらそれを繰り返すうちに、魔獣があのときのように足を振り上げた。
しかし、俺はそんなことなど気にも留めず、蹴って、蹴る。ただ、ひたすらにそれだけを繰り返す。
そして、足は俺の下へと振り下ろされ、
「『桜舞双扇』二の舞、覆え、『垂れ桜』!」
垂れる桜が、それを受け止めた。
それでも俺は蹴り続けていた。まるで、機械仕掛けの人形のように。
「落ち着いてください、日向さん!」
そんな俺に必死な形相でシーナが声をかけてくる。
「今のままでは、なんの力も持たないただの人のままです! 目を覚ましてください、日向、さん!」
シーナはセリフの最後の最後で俺の息子を――思いっきり扇で叩き上げた。
「! ???!!?!??!!!」
言葉にならない悲鳴を上げ、俺はようやく目を覚ました。
自分の意識をしっかり持ち、シーナに話しかける。
「すまん……自分を見失っちまってた。止めたくれてありがとな。俺の下半身に走るこの激痛に対する怒りは、どこにぶつければいいんだコンチクショウ!」
若干涙目だよ……なんでこんな方法取ったの……?
しかし、そうも言ってはいられない。正気に戻れた今、なんとか力の解放に努めなけらば。
そう気を引き締めていると、横からなにか温かいエネルギーを感じ取った。
俺の心を読み取ったのか、シーナが力の解放についてのアドバイスをしてくれた。
「日向さんは、明確に悪魔に対する自分の感情をイメージしてください。感情からエネルギーが生まれることによって、力が日向さんの意思の力に反応し解放されます。ですが、さっきのような本能的な怒りではなく、日向さんの意思としてです」
「分かった、やってみる」
ゆっくりとしているわけにもいかないので、俺はすぐに力の解放に取りかかる。
そのうちにシーナが時間稼ぎに取りかかっていてくれていた。雑魚とか言っていたんだ、あいつらを倒すくらい、本当は楽勝なのだろう。
俺は頭の中にイメージをする。怒りを、悲しみを、形にする。
その時俺は、心の中で何かが生まれたのを感じ取った。なにか、特別な何かを。
俺は悟った。これがきっと、意思の力……!
俺の気持が形になったもの……。
心の中で生まれたその力は、どんどん大きくなった。そして、成長を続けるそれは一瞬静止を見せた。
そして、弾ける。弾けた巨大な意思の肩ありは、俺の体中へと広がっていき……。
「うおっ!」
体が赤く、眩く輝き出す。すると、その力は、俺の中へと浸透していった。
俺はそのまま、次の行動へと移った。
いつかイメージした刀の形を思い描き、殺気を込める。
虚空へと手を伸ばし、その柄をにぎると、素早く引き抜いた。
そして、刀は現れる。俺の意思を刃へと変えて。
「よしっ! 成功だ!」
俺は短くガッツポーズをした。一人で力を解放し、刀を引き抜くことができたのが、純粋にうれしかったからだ。
これで力の解放の仕方をマスターすることができた、と思う。
俺は力の解放ができたことをシーナに伝えるために、思いっきり叫んだ。
「シーナ、できたぞ! 後は俺に任せて、こっち戻ってこい!」
俺の言葉を聞いたシーナは、驚いた顔になり、すぐにこちらに戻ってきた。
「本当に使えてますね……こんなに早く使えるなんて……すごいです、日向さん!」
シーナはまるで自分のことであるかのようにぴょんぴょんと跳び跳ねた。
とてもかわいらしいが、今はそんな和やかムードに浸っている場合ではない。
俺はすぐに魔獣の方へと向く。
シーナも俺から何かを感じ取ったのか、俺から少し距離を取った。
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