剣聖の使徒

一条二豆

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第二章

バアル、現る

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「うるせえ、今後なんてねえよ」

 饒舌に自己紹介したバアルは、何が面白いのかまた笑いだした。
 その出で立ちに腹が立ち、俺が刀を抜こうとするが、

「待って下さい、シーナさん」

 シーナによって静止されてしまった。
 俺はなぜ止められたのかが分からず、説明を要求した。

「なんで駄目なんだシーナ。俺らの仕事はあいつらを倒すことじゃねえのかよ」

 苛立ちを抑えきれず、つい強い口調になってしまう。別にシーナを責めたいわけでもないのに。
 しかし、当のシーナはそんなことには気にもせずに、恐れを抱いた表情で言った。

「言っていなかったんですけど……悪魔たちの中でも特に強い悪魔たちのことを、大悪魔って言うんです」
「ああ、そうか。それがどうした……ってまさか……!」
「はい。あのバアルとかいう悪魔は、私たちの世界でも名の知れた……とても強力な大悪魔! 今の私たちでは……とてもじゃないですが、太刀打ちできません」
「いやいや、お恥ずかしい」

 バアルが上からいらないちゃちゃを入れてくる。
 そのせいで、俺の苛立ちはさらに増してくる。

「相手が強いからって……みすみす逃すかよ! 現にあいつは人を殺してるんだぞ!」
「人を殺す……? ここの人たちは魔獣に食われてしまった者たちですが……」

 シーナは何を言っているのか分からないようで、きょとんと首を傾げた。

「そうじゃなくて、『悪魔の悪戯』事件のことだよ! 最近起こってるんだよ。悪魔が起こしたとしか考えられないような不可解な殺人事件が! で、今目の前にこの街にいた悪魔がいるんだぞ!」
「そうだったんですか……すいません、私、何も知らなくて……」

 シーナは俺の言葉に気持ちを沈め、顔を俯かせてしまった。
 シーナは全く悪くない。分かっている。むしろ、何も教えていなかった俺が悪い。
 ただ、今の俺は苛立ちが強すぎて、きつく当たってしまったんだ。
 なぜだかは分からないが……無性に腹が立ってくる。

 黙って様子を見ていたバアルが口を開いた。

「一応言っておくけど……あれをやったのはボクじゃないよ。ボクは人殺しになんて興味が無いからね。ボクはただ、楽しいことにしか興味が無い」
「じゃあ、誰がやったっつんだよ……」

 バアルは笑みを全く崩すことなく、淡々と言った。

「ボクの知ったことじゃないねえ……興味も何も湧かないよ」

 俺は我慢ができず、刀を引き抜いた。
 純粋で、かつ強靭な突き。
 俺が飛ばした斬撃は、あっけなくバアルの体を貫いた。
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