剣聖の使徒

一条二豆

文字の大きさ
36 / 62
第三章

謝罪

しおりを挟む
「そ、そうだったんですか……」

 シーナが目覚めた後、俺が事情を説明すると、彼女は恥ずかしそうに俯いた。
 まあ、悪いのは確実に俺なわけでして……何か申し訳ない気持ちになった。
 シーナは軽く喉を鳴らして、顔をキリッとさせた。……君がドジっ娘なのはもう分かっているから……いろいろ手遅れなんだけどなあ……。

「どうやら申し訳ないことをしてしまったようですね……では、また今度案内させてもらいます」
「いやいや、そんなことしなくてもいいよ。別に一人や二人くらい増えた所で凛音は嫌な思いしないさ」

 約束してしまったことだし、俺は凛手との約束にシーナも連れていくことにした。
 まあ、あいつはかわいい娘好きだし、嫌な顔はしないだろう。
 シーナは少し渋りはしたが、俺が念を押すと承諾してくれた。

「そういえば、凛音さんという人に、私の説明はどういう風になさるのですか?」
「ん? ……あー、それもそうだな……」

 そうだった。凛音にシーナのことは言えないんだったな。全く考えていなかった。
 しかし、どうしたものか……親族が全くいない以上従妹(いとこ)とかは無理だし、突然妹ができたと言っても納得はしてくれないだろう。
 そうなってくると……どうするか……。

「あ、でも無難に友達とかでいいんじゃないか?」
「それもそうですね」

 なんとなく案を言ってみたが、意外とすんなり通った。話し合う必要があったのだろうか……。
 シーナは「また後で細かいことを決めましょう」と言って、この話に区切りをつけた。ってか細かいことと書決めんのかよ。こりゃ、今日も勉強時間は無しだな。

「あと日向さん。もう一つだけ懸念があるんですけど……」
「ああ、何だ?」
「バアルが言っていた、最後の言葉です」

 きっと、また俺がおかしくなるんじゃないかと不安なのだろう。その声は少しだけ警戒のニュアンスが含まれていた。
 でもいろいろあって、何とか気持ちの軌道修正はできたので大丈夫だ。

 ともかく、バアルの最後の言葉か。確か……。

「『ボクの方から、キミたちを招待しよう』だったっけか」
「はい、そうです」

 つまり近くて明日……何か仕掛けてくるかもしれないということだろう。
 冷静に考えて、今のところあいつに勝てる可能性は全く無い。
 いつ襲ってくるかは分からないが、もし襲って来た時に近くに守るべき人たちがいるかもしれないのだ。

大切な人が目の前で傷つくのだけは……嫌だな。

「じゃあ明日は周りにも気をつけて行動しよう」
「はい。あ、ではそろそろ夕食にしましょう。何か作りますね」
「あ、悪いな……俺も手伝うよ」

まだ出会って二日しか経ってないというのに、今の状況にすっかり順応してしまっている自分に気づかず、そして、凛音とかわした約束の真意に気づけないまま、俺はその夜、床に着いたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...