45 / 62
第三章
ゲームセンター
しおりを挟む
「もう! お二人のせいで、全然『けーき』のお味が分からなかったじゃないですかあ!」
「ごめんね……椎名ちゃん」
「面目ないです……」
急いでがっついて食べたために、どうやら、どれがどの味なのか分からなかったらしい。
あれだけ大量に取ったシーナが悪いだろう、という言葉は心の中に封じておく。
九割方俺のせいだし。
ケーキ屋を出た後、俺たちが向かったのは、駅の近所にあるゲームセンターだった。
ここのゲーセンはなかなか機種の揃えがよく、地元では少し有名な場所である。
そのためか、今日もたくさんの人がそこを行き来しており、盛況具合がうかがえる。
俺たちはゲームセンターの中に入ってとりあえず何をするか決めることにした。
しかし、そんなことそっちのけではしゃいでいる子どもが一人。
「ここはどういうところなんですか? すごく楽しそうです!」
ここに来たのが初めてだからと言って、このはしゃぎようはいかがなものなのか。
「わあ……! あっちにあるやつ、何やら面白そうです!」
「あ、待って、椎名ちゃん! こんな人ごみの中で……はぐれちゃうよ!」
急に自由行動を始めたシーナを追って俺たちも走り出す。
俺たちは遊びに来たのである。子どもを連れて遊ばせに来たのではない。
椎名はカラフルな色合いをしている、リズムゲームの台の前で止まった
「あれ? ボタンを押しても何も動きませんよ? 動いてください、機械さん!」
それは無理な相談っすよ姐さん。お金を入れてあげて下さい。じゃないと機械さんも動いてくれません。
台の前でシーナが涙目になっていたところで、俺たちもその台の前に着いた。
「ふえええ、凛音さん! 機械さんがいじめてくるんですう……」
追いつくなり凛音に抱きつき泣きはじめるシーナ。お前何歳だよ……。
凛音はそんな様子のシーナをあやすように抱きしめた。
「椎名ちゃん、これはお金を入れなきゃいけないゲームで、別に機械さんがいじめてるわけじゃないんだよ?」
「……本当ですか?」
泣くのを止め、凛音の顔を見上げるシーナ。その顔、待ち受けにしていいですかね?
「そうだよ? あと、迷子になっちゃうから、勝手に一人で動いて行ったら駄目だよ? 分かった?」
「はい、分かりました……」
そう言って再びぎゅっと凛音を抱きしめるシーナ。そして、シーナの背中を温かくさする凛音。
……何なんだこの茶番。
完全に母とその娘のやり取りだったろ、今の……。
そんなツッコミはともかく、今の凛音の様子を見て、
「凛音は良いお母さんになりそうだな」
と思った。
「え? ……え? ね、ねえ、日向! 今のってどういう……」
凛音が急に目を泳がせ、挙動不審な行動を取り始めた。……ってさっきの言葉が口に出てたのか……何か恥ずかしいな。
「も、もしかして、それって、わ、私と……」
「さっきの様子見てたらさ、絶対子どもに優しい、とってもいいお母さんになれるよなーって思って」
「けっこ……って、何だ、やっぱりか……」
自分では褒めたつもりだったのだけれど……なぜか凛音のテンションが下がってしまった。何か間違えたかな……。
俺たちの様子を見ていた(いつの間にか立ち直っていた)シーナがあごに手を上げながら笑顔で、
「ふーむ……なるほど……」
とか言っていた。
イラッときたのでぷにぷにの頬をつねってやった。
「ふぃなはしゃん! はにするんれふは!」
俺の心は少し和らいだ。
「ごめんね……椎名ちゃん」
「面目ないです……」
急いでがっついて食べたために、どうやら、どれがどの味なのか分からなかったらしい。
あれだけ大量に取ったシーナが悪いだろう、という言葉は心の中に封じておく。
九割方俺のせいだし。
ケーキ屋を出た後、俺たちが向かったのは、駅の近所にあるゲームセンターだった。
ここのゲーセンはなかなか機種の揃えがよく、地元では少し有名な場所である。
そのためか、今日もたくさんの人がそこを行き来しており、盛況具合がうかがえる。
俺たちはゲームセンターの中に入ってとりあえず何をするか決めることにした。
しかし、そんなことそっちのけではしゃいでいる子どもが一人。
「ここはどういうところなんですか? すごく楽しそうです!」
ここに来たのが初めてだからと言って、このはしゃぎようはいかがなものなのか。
「わあ……! あっちにあるやつ、何やら面白そうです!」
「あ、待って、椎名ちゃん! こんな人ごみの中で……はぐれちゃうよ!」
急に自由行動を始めたシーナを追って俺たちも走り出す。
俺たちは遊びに来たのである。子どもを連れて遊ばせに来たのではない。
椎名はカラフルな色合いをしている、リズムゲームの台の前で止まった
「あれ? ボタンを押しても何も動きませんよ? 動いてください、機械さん!」
それは無理な相談っすよ姐さん。お金を入れてあげて下さい。じゃないと機械さんも動いてくれません。
台の前でシーナが涙目になっていたところで、俺たちもその台の前に着いた。
「ふえええ、凛音さん! 機械さんがいじめてくるんですう……」
追いつくなり凛音に抱きつき泣きはじめるシーナ。お前何歳だよ……。
凛音はそんな様子のシーナをあやすように抱きしめた。
「椎名ちゃん、これはお金を入れなきゃいけないゲームで、別に機械さんがいじめてるわけじゃないんだよ?」
「……本当ですか?」
泣くのを止め、凛音の顔を見上げるシーナ。その顔、待ち受けにしていいですかね?
「そうだよ? あと、迷子になっちゃうから、勝手に一人で動いて行ったら駄目だよ? 分かった?」
「はい、分かりました……」
そう言って再びぎゅっと凛音を抱きしめるシーナ。そして、シーナの背中を温かくさする凛音。
……何なんだこの茶番。
完全に母とその娘のやり取りだったろ、今の……。
そんなツッコミはともかく、今の凛音の様子を見て、
「凛音は良いお母さんになりそうだな」
と思った。
「え? ……え? ね、ねえ、日向! 今のってどういう……」
凛音が急に目を泳がせ、挙動不審な行動を取り始めた。……ってさっきの言葉が口に出てたのか……何か恥ずかしいな。
「も、もしかして、それって、わ、私と……」
「さっきの様子見てたらさ、絶対子どもに優しい、とってもいいお母さんになれるよなーって思って」
「けっこ……って、何だ、やっぱりか……」
自分では褒めたつもりだったのだけれど……なぜか凛音のテンションが下がってしまった。何か間違えたかな……。
俺たちの様子を見ていた(いつの間にか立ち直っていた)シーナがあごに手を上げながら笑顔で、
「ふーむ……なるほど……」
とか言っていた。
イラッときたのでぷにぷにの頬をつねってやった。
「ふぃなはしゃん! はにするんれふは!」
俺の心は少し和らいだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる