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第三章
現実は
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そろそろ日も落ち始め、空はオレンジ色に染まっていた。
俺たちは、ゲームセンターを出て、凛音を駅に送るためにそこへ向かっていた。
「本当にすいません……」
「いや……もういいよ。悪気があったわけじゃないんだし……」
シーナは、さっきの説教がよほど応えたのか、しょんぼりとしていた。
それを見て凛音が明るく励ます。
「そうだよ、日向の言う通りだよ。ほら、元気出して!」
「はい……ありがとうございます!」
凛音に励まされたシーナは途端に元気になった。感情の起伏が激しいな。
こうしてまったり過ごしながら、ゆっくりと歩き、目的の駅まで到着した。
別にまた明日会えると分かっているのだが……こういうときは、何か寂しさを感じる。
シーナなんて、今にも泣きそうである。今日だけ そのしょうでどれだけ泣く気なのだろうかこいつは。
駅の入り口で俺たちは向かい合った。
「ありがとね、ここまで送ってもらって」
「いいよ別に、これくらいさ」
「うう……¨☆♀▼Θ!」
「ちょっと……そんなに泣かないでよ、椎名ちゃん」
涙声で何を言っているのか分からない状態になってしまっているシーナに、思わず笑ってしまう。
何気ないことで笑ったり、そうやって楽しく過ごしたりする日常。俺はそんな日々を守りたい。そんな風にふと思いつつ、俺は別れの言葉を告げる。
「じゃ、そろそろ帰るよ……ありがと、今日は楽しかったよ」
「うん、私も。ありがとね」
「たの……ひっく、たのしかった、でず……っ」
シーナも何とか言葉をつなげ、手を振った。凛音も駅へと歩を進めながら手を振り返してきた。
他愛もないはずのそのシーンに、突如、異変は起きてしまった。
駅の前にある車道。そこに少年が一人、駆けていく。
しかし、車道の向こう側からは少年に気が付いていない様子の車が一台。
マズイ!
本能的にそう思った。
だが、車道との距離は五メートルほど。突然のことに力も解放できず、とてもじゃないが間に合わない。
シーナもこのことに気が付いたのか、扇を構え出すが……おそらく間に合わない。
万事休すかと思われたその時――少年は一人の少女によって抱えられ、車道を脱出した。
その少女――夢崎凛音によって。
「大丈夫? どこかけがしてない?」
「ありがとう、大丈夫だよ、おねーちゃん」
少年はあまり危機感を持っていない様子で、ごく普通のお辞儀を凛音へとした。
しかし、今の俺にはそんな些細なことは気にならない。それだけの驚愕と、戦慄が俺の中を動き回っている。
……あり得ない。
おかしいのだ。だって凛音は今さっき俺たちと別れて駅へと向かったんだ。車道の反対側にある駅に。
つまり、確実に俺たちよりも車道と距離が離れていた。
なのに、なのに――
「おねーちゃん、すごいね! 魔法使いさんみたいだったよ!」
――どうしてあの子を助けられたんだ?
「……っ」
俺と目があった凛音は、気まずそうに目を伏せた。
……こんなことができる者の心当たりは、二つある。
「……日向さん、少し、お話があります」
異世界からの来訪者と、それに手を貸す人間たち。つまり……悪魔か、『使徒』だけ。
「どうやら、私たちは凛音さんのことを正しく認識できていなかったみたいです」
今の俺には、もうどちらがどんな力を使うのか、明確に区別が付くようになっていた。
〝天界〟のものが放つ、正のエネルギー、〝魔界〟のものが放つ、負のエネルギー。
「彼女は……信じたくない話ですが」
凛音から感じた、強い負のエネルギー。
信じたく、なかった。
信じられなかった。
「凛音さんは……悪魔です」
いつの間にか凛音の姿は消えていた。
現実は、冷たい風となって俺の肌をなでてきた。
俺たちは、ゲームセンターを出て、凛音を駅に送るためにそこへ向かっていた。
「本当にすいません……」
「いや……もういいよ。悪気があったわけじゃないんだし……」
シーナは、さっきの説教がよほど応えたのか、しょんぼりとしていた。
それを見て凛音が明るく励ます。
「そうだよ、日向の言う通りだよ。ほら、元気出して!」
「はい……ありがとうございます!」
凛音に励まされたシーナは途端に元気になった。感情の起伏が激しいな。
こうしてまったり過ごしながら、ゆっくりと歩き、目的の駅まで到着した。
別にまた明日会えると分かっているのだが……こういうときは、何か寂しさを感じる。
シーナなんて、今にも泣きそうである。今日だけ そのしょうでどれだけ泣く気なのだろうかこいつは。
駅の入り口で俺たちは向かい合った。
「ありがとね、ここまで送ってもらって」
「いいよ別に、これくらいさ」
「うう……¨☆♀▼Θ!」
「ちょっと……そんなに泣かないでよ、椎名ちゃん」
涙声で何を言っているのか分からない状態になってしまっているシーナに、思わず笑ってしまう。
何気ないことで笑ったり、そうやって楽しく過ごしたりする日常。俺はそんな日々を守りたい。そんな風にふと思いつつ、俺は別れの言葉を告げる。
「じゃ、そろそろ帰るよ……ありがと、今日は楽しかったよ」
「うん、私も。ありがとね」
「たの……ひっく、たのしかった、でず……っ」
シーナも何とか言葉をつなげ、手を振った。凛音も駅へと歩を進めながら手を振り返してきた。
他愛もないはずのそのシーンに、突如、異変は起きてしまった。
駅の前にある車道。そこに少年が一人、駆けていく。
しかし、車道の向こう側からは少年に気が付いていない様子の車が一台。
マズイ!
本能的にそう思った。
だが、車道との距離は五メートルほど。突然のことに力も解放できず、とてもじゃないが間に合わない。
シーナもこのことに気が付いたのか、扇を構え出すが……おそらく間に合わない。
万事休すかと思われたその時――少年は一人の少女によって抱えられ、車道を脱出した。
その少女――夢崎凛音によって。
「大丈夫? どこかけがしてない?」
「ありがとう、大丈夫だよ、おねーちゃん」
少年はあまり危機感を持っていない様子で、ごく普通のお辞儀を凛音へとした。
しかし、今の俺にはそんな些細なことは気にならない。それだけの驚愕と、戦慄が俺の中を動き回っている。
……あり得ない。
おかしいのだ。だって凛音は今さっき俺たちと別れて駅へと向かったんだ。車道の反対側にある駅に。
つまり、確実に俺たちよりも車道と距離が離れていた。
なのに、なのに――
「おねーちゃん、すごいね! 魔法使いさんみたいだったよ!」
――どうしてあの子を助けられたんだ?
「……っ」
俺と目があった凛音は、気まずそうに目を伏せた。
……こんなことができる者の心当たりは、二つある。
「……日向さん、少し、お話があります」
異世界からの来訪者と、それに手を貸す人間たち。つまり……悪魔か、『使徒』だけ。
「どうやら、私たちは凛音さんのことを正しく認識できていなかったみたいです」
今の俺には、もうどちらがどんな力を使うのか、明確に区別が付くようになっていた。
〝天界〟のものが放つ、正のエネルギー、〝魔界〟のものが放つ、負のエネルギー。
「彼女は……信じたくない話ですが」
凛音から感じた、強い負のエネルギー。
信じたく、なかった。
信じられなかった。
「凛音さんは……悪魔です」
いつの間にか凛音の姿は消えていた。
現実は、冷たい風となって俺の肌をなでてきた。
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