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第三章
指輪
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俺は凛音のお金だということも忘れ、UFOキャッチャーに張り付いた。そして……。
「ごめん! 凛音のお金こんなに使い込んじまって……」
結果、五回もかかってしまった。つまり千円分のお金を指輪ごときに使いこんでしまったのである。
やっぱり視界が狭くなるくせは治ってないな。いい加減、治さないといけないとは思っているのだが……。
怒られる覚悟で謝った俺に対して、凛音は優しい笑顔を返してくれた。
「いいよ、千円くらい……それに、この指輪の価値は……千円くらいじゃ足りないよ」
「そ、そうか……?」
実際見てみると、とても安っぽそうだった指輪に、凛音は何かシンパシーを感じ取ったのだろうか。彼女の気持ちが全く分からない。
凛音は何を思ったのか、俺から受け取った指輪を、俺につき返してきた。
「え? 何してんの?」
「……はめて、指輪」
どうやら返してきたわけではないらしい。だが、はめるというのもよく分からない。
人の金をむやみに使いこんでしまった身であるため、何も言わずに凛音から指輪を受け取った。
「えっと……どこにはめればいいんだよ?」
「くす――人指し、指」
一瞬何かを言ったけど、最終的に人差し指って言ったし、まあいいか。
凛音の言う通りに、俺は人差し指へとその指輪をはめてやった。
「……えへへ」
凛音は、指にはまった指輪を見て、幸せそうに笑った。
今日一日何やら様子がおかしかったが……この笑顔を見ていると、もう大丈夫な気がした。
何か形として、家族のつながりの様なものが欲しかったのかもしれない。
凛音は少しだけ照れながら、俺の方へと向いて、俺の胸に顔をうずめた。
「ありがとね、日向」
「お、おう……これくらいで、礼なんていらねえよ」
ぐっと距離を縮めてきた凛音の綺麗さに、俺はたじろいだ。
心臓がドクドクと鳴って、落ちつけようと思っても、全く言うことを聞いてくれない。
俺の声には動揺が現れ、震えてしまっていた。
そんな緊張状態にいると、凛音は――ぎゅっと、俺を抱きしめてきた。
「!」
まるで昨日の放課後だ。一体どうしちまったんだ……?
凛音の心臓の鼓動が速くなっているのが伝わってくる。
しばらくその状態が続き、凛音はそのまま俺の顔を見上げてきた。
その顔は、耳が真っ赤になっていて、表情には恥ずかしさでいっぱいになっていた。
「ねえ……日向?」
「な、なんだ……?」
今の凛音は妙にしおらしく見える。いつもは明るくて元気な妹にしか見えないのに……今はどうしても異性としてしか見れなかった。
「一つだけ、お願いを聞いて欲しいんだけど……」
「お、おう! な、なんでもこい!」
そのためか、頭が混乱して、自分で何を言っているのか分からない始末。変なことは言ってないことを祈る。
凛音はすうっと深呼吸をすると、ゆっくりと、そして緊張を含んだ声で言う。
「わ、私、日向の――」
「わーん! 日向さーん!」
それを口にしようとしたところで、第三者の叫び声によって止められてしまった。
他でもない、なぜか涙目でこちらへと走ってきたシーナによって、である。
シーナの声が聞こえてきた途端に、俺は凛音によって思いっきり突き飛ばされ、後ろにあったUFOキャッチャーの台に背中を打ちつけた。
「いってえ!」
「し、椎名ちゃん、どうしたの?」
凛音は急に態度を変え、今のことを無かったことにするかのようにシーナに話しかけた。
「う……凛音さん、実は『ゆーふぉーきゃっちゃー』に使うお金が無くなっちゃったんです……」
「なんだよ、それだけか……それくらいで泣くなよ……」
戦う時こそかっこいいのに、日常生活はそこら辺の小学生と何ら変わりないな。
小銭はそこまで入れてなかったし、両替の仕方も教えてなかったからそのせいだろう。それに、手ぶらなところをみると、きっと何も取れなかったんだと思う。本当に世話が焼ける少女だな。
と思っていたら、シーナがとんでもないことを口にした。
「神の様なものもお金だと思い、お店の人に『ひゃくえんだま』に変えてもらったのですが……」
「………………今なんつった」
「ひうっ! 日向さんの財布の中身が無くなってしまったと……」
……そうか。
「こんっっっっっっの、アホがああああああ!」
「ひあっ!」
目の前にいるおバカにありったけの力を込めてげんこつを食らわせた。聖霊なのだから、特段問題は無い。
シーナが片手に持っていた財布をひったくって見ると、言われた通り、本当にすっからかんだった。
「マジで全部使ったのか!」
「すいませーん!」
ついには泣きだしたしまったシーナ。だが、これは怒られて当然である。
凛音もさすがに何も言えないのか、苦笑いでこちらを見ていた。
この後、泣いているシーナにくどくどと説教をし、時間は過ぎていった。
「ごめん! 凛音のお金こんなに使い込んじまって……」
結果、五回もかかってしまった。つまり千円分のお金を指輪ごときに使いこんでしまったのである。
やっぱり視界が狭くなるくせは治ってないな。いい加減、治さないといけないとは思っているのだが……。
怒られる覚悟で謝った俺に対して、凛音は優しい笑顔を返してくれた。
「いいよ、千円くらい……それに、この指輪の価値は……千円くらいじゃ足りないよ」
「そ、そうか……?」
実際見てみると、とても安っぽそうだった指輪に、凛音は何かシンパシーを感じ取ったのだろうか。彼女の気持ちが全く分からない。
凛音は何を思ったのか、俺から受け取った指輪を、俺につき返してきた。
「え? 何してんの?」
「……はめて、指輪」
どうやら返してきたわけではないらしい。だが、はめるというのもよく分からない。
人の金をむやみに使いこんでしまった身であるため、何も言わずに凛音から指輪を受け取った。
「えっと……どこにはめればいいんだよ?」
「くす――人指し、指」
一瞬何かを言ったけど、最終的に人差し指って言ったし、まあいいか。
凛音の言う通りに、俺は人差し指へとその指輪をはめてやった。
「……えへへ」
凛音は、指にはまった指輪を見て、幸せそうに笑った。
今日一日何やら様子がおかしかったが……この笑顔を見ていると、もう大丈夫な気がした。
何か形として、家族のつながりの様なものが欲しかったのかもしれない。
凛音は少しだけ照れながら、俺の方へと向いて、俺の胸に顔をうずめた。
「ありがとね、日向」
「お、おう……これくらいで、礼なんていらねえよ」
ぐっと距離を縮めてきた凛音の綺麗さに、俺はたじろいだ。
心臓がドクドクと鳴って、落ちつけようと思っても、全く言うことを聞いてくれない。
俺の声には動揺が現れ、震えてしまっていた。
そんな緊張状態にいると、凛音は――ぎゅっと、俺を抱きしめてきた。
「!」
まるで昨日の放課後だ。一体どうしちまったんだ……?
凛音の心臓の鼓動が速くなっているのが伝わってくる。
しばらくその状態が続き、凛音はそのまま俺の顔を見上げてきた。
その顔は、耳が真っ赤になっていて、表情には恥ずかしさでいっぱいになっていた。
「ねえ……日向?」
「な、なんだ……?」
今の凛音は妙にしおらしく見える。いつもは明るくて元気な妹にしか見えないのに……今はどうしても異性としてしか見れなかった。
「一つだけ、お願いを聞いて欲しいんだけど……」
「お、おう! な、なんでもこい!」
そのためか、頭が混乱して、自分で何を言っているのか分からない始末。変なことは言ってないことを祈る。
凛音はすうっと深呼吸をすると、ゆっくりと、そして緊張を含んだ声で言う。
「わ、私、日向の――」
「わーん! 日向さーん!」
それを口にしようとしたところで、第三者の叫び声によって止められてしまった。
他でもない、なぜか涙目でこちらへと走ってきたシーナによって、である。
シーナの声が聞こえてきた途端に、俺は凛音によって思いっきり突き飛ばされ、後ろにあったUFOキャッチャーの台に背中を打ちつけた。
「いってえ!」
「し、椎名ちゃん、どうしたの?」
凛音は急に態度を変え、今のことを無かったことにするかのようにシーナに話しかけた。
「う……凛音さん、実は『ゆーふぉーきゃっちゃー』に使うお金が無くなっちゃったんです……」
「なんだよ、それだけか……それくらいで泣くなよ……」
戦う時こそかっこいいのに、日常生活はそこら辺の小学生と何ら変わりないな。
小銭はそこまで入れてなかったし、両替の仕方も教えてなかったからそのせいだろう。それに、手ぶらなところをみると、きっと何も取れなかったんだと思う。本当に世話が焼ける少女だな。
と思っていたら、シーナがとんでもないことを口にした。
「神の様なものもお金だと思い、お店の人に『ひゃくえんだま』に変えてもらったのですが……」
「………………今なんつった」
「ひうっ! 日向さんの財布の中身が無くなってしまったと……」
……そうか。
「こんっっっっっっの、アホがああああああ!」
「ひあっ!」
目の前にいるおバカにありったけの力を込めてげんこつを食らわせた。聖霊なのだから、特段問題は無い。
シーナが片手に持っていた財布をひったくって見ると、言われた通り、本当にすっからかんだった。
「マジで全部使ったのか!」
「すいませーん!」
ついには泣きだしたしまったシーナ。だが、これは怒られて当然である。
凛音もさすがに何も言えないのか、苦笑いでこちらを見ていた。
この後、泣いているシーナにくどくどと説教をし、時間は過ぎていった。
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