剣聖の使徒

一条二豆

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第四章

戸惑い

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「……なんでだ……」
「……日向さん」
「なんでなんだよ!」

 日向さんは、人目もはばからずに、そう力のある限りに叫びを上げていました。

 ……複雑なのでしょう。裏切られたようなものですから……。
 私にも信じられません。あんなに明るくて楽しい、素敵な人なのに、まさか悪魔だったなんて……。

 きっと、日向さんはとても心を痛めていらっしゃることでしょう。
 私は、日向さんを少しでも元気づけるために彼に近づきました。

「日向さん、お気持ちは分かりますが……気をしっかり持たれて下さい」
「……」

 私の目から見ても、今、日向さんがどんな心境かくらい察せます。
 私がそんな様子の日向さんを心配していると、どこかで負のエネルギーが発生を感じました。
 恐らく凛音さんかバアルでしょうが……バアルは自ら招待すると言っていましたし、この場合はやはり凛音さんでしょう。

 悪魔の話を信じるというのもおかしな話ですが、奴はそういう悪魔なのです。
 昨日も知らないふりをしたというのに、あちらも知らないふりで返してくるなんて……皮肉のつもりでしょうか。

 ともかく、このエネルギーが凛音さんのものだとして……このことを日向さんに言うべきでしょうか。
 凛音さんの力量が分からない上に、日向さんがこんな状態です。勝機があるとは思えませんし……第一、日向さんも凛音さんとは戦いたくないでしょう。ですが、止めないと何かが起こってしまう可能性がありますし……。

 私が心中で激しい葛藤を繰り広げていると、なんと、日向さんが突然むくっと起き上がってきました。

「……この反応、悪魔が出たのか?」
「……え? あ、はい、そうです」

 私は一瞬、日向さんの言っていることに反応できませんでした。
 日向さんは……三日間だけで気配を、意思の力を感じ取れるようになったというのでしょうか。
 ……信じられません。少なくとも一か月はかかるとされているのに……。

 日向さんは据わった目で、私に尋ねてきました。

「たぶん、凛音のだろ? これ」
「え! いや、それは、その……」
「気なんか使わなくていいよ」
「はい……そうです」

 先ほどのことがあったというのに、日向さんは妙に冷静でした。やはり、悪魔だと割り切っているのでしょうか……。
 〝天界〟にいる者の一人としてはありがたいですが、『奇稲田』としては、なにかもやもやとした気分になってしまいます。
 ですが、そんなことを言うわけにもいかず、私は日向さんの次の言葉を待ちました。

「シーナ、凛音がいるところまで連れて行ってくれ」
「……分かりました」

 全ては神の力を持つ『使徒』と共に。私は自分の感情を押し殺し、術を唱えました。

「『流雲』」

 駅前に突風が起こり、私たちは凛音さんのもとへと消えました。
 ただ、心の片隅ではどうしてか、こう思っている自分がいるんです。



 ――日向さんなら、きっと――


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