シンデレラフィットの異世界で、愛される伯爵夫人を目指していいですか?

帆々

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眠りの前のおとぎ話(5)前

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休暇中は判で押したような日々が続く。

朝食の後は午後の間で過ごし、そのままガイは、声をかけるのをためらわれるほど読書にふける。

わたしはその気配を感じつつ、邸内に飾る温室の花を選んだ。束にして腕に抱えるのは気分がよく好きな作業だった。

午後の間、書斎、自分の寝室。よく使う部屋に活けて回るのだ。既にある花瓶から、傷んだ花を選り分け、バランスを見て入れ替える。

水を替えると長持ちするから、ついでにそれも忘れない。

作業を終えて午後の間に戻ると、寝転んで本を読んでいたガイが身を起こした。彼の部屋にも花を活けてほしいと言う。

「あなたが面倒でなければ」

思いがけない言葉で、返事が遅れた。彼の部屋には入ったことがない。場所もよくわからないのだ。

「入っていいの?」
「いいですよ。どうしていけないの?」

ガイはわたしの驚きが楽しいらしく、ちょっとからかうような声だ。

「僕が財宝でも隠していると思ったの?」
「嫌なガイ」

彼を置いて、選んだ花を抱いて階上へ向かった。自分の寝室より奥だったはず。途中行き交ったメイデルの一人にたずねた。

案内してもらった部屋は、この邸の主寝室になるという。

大きな部屋だった。わたしの寝室とは違い、庭へ面した両開きの窓からバルコニーに出られる。

開けた窓からの風がカーテンを揺らし、ふわっと庭の木々のさわやかな香りが漂ってくる。

「花瓶はこちらでよろしゅうございますか?」

今は使われないものを出して来てくれたのだ。青い陶器の大きなものだ。それでいいとうなずいた。

礼を言ってから、バルコニーに出た。

そこからは緑の庭が眺められた。手入れをする庭師の姿も目に入る。温室の向こうにある池も見え、その池に、わたしはいつか帽子を落としたことを思い出した。

部屋に戻り、用意してもらった水差しを受け取る。花瓶に水を移し、花を手に取った。

「こちらも内装をお替えになるのでございましょうね」

空の水差しを手に、メイデルが言う。

ガイの指示なのだろうか。装飾の控え目な室内は男性的であるが、古びた様子もなく、調度類も美しい。

「新しい奥さまがいらっしゃれば、こちらがご夫妻のご寝室になるでしょうし。もう少し、華やいだ雰囲気がよろしゅうございましょうね」
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