1 / 26
プロローグ
しおりを挟む「まるで魔女ですよ。ご覧になって、ダーシーのあの目を」
継母が声を震わせて言った。
わたしは逆らうように見つめ返した。何がいけないのか。実母は両の色の違うわたしの瞳を美しいと愛おしんでくれた。
魔女なんかじゃない。
「術師マルグリットの予言通りですよ。我が子爵家を滅ぼす定めの忌まわしい娘です」
この人が、わたしについて父に言うことのほとんどが嘘だ。知人が死んだのも、王宮で風邪が流行るのも、街で強盗があったのも。みんなわたしの影響だと脚色されて、父の耳に入る。
母の死の後で無気力で老いた父は、面倒事を嫌う。すべてが彼女の意のままだ。
わたしが何を言っても、通じない、聞こえない。味方もいなかった。少しでもわたしを庇えば、すぐに邸をクビになるからだ。
「義姉妹をいじめる性悪ですよ。転地させるべきですわ。王都には置けません。純良な娘たちの障害にもなりますもの」
父はわたしをちらりと見て、すぐに目を逸らす。
「お前がいけないよ。お継母様の言いつけに逆らうのだから」
自分の前で、扉が閉じられたのを知った。
わたしは両脇を使用人につかまれて、部屋を出された。
それから父の顔を見ていない。
「僻地の領地なのだから、ドレスやお前の母親の形見など、置いて行きなさい。あんな場所、肌着や着替えなど二、三もあれば十分ですからね」
荷物の検査までされた。着の身着のままが言い過ぎではない状態で、わたしは家を出された。
わたしを切り捨てた、青ざめて冷酷なあの表情こそ魔女だと思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
335
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる