戦人学園

ゆうむ

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空白の時

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 使命感に燃える彼女達、尊い犠牲(破壊された門の鍵)に涙しつつ学園内に潜入……中に入ることに成功したのであった。

 舞い上がった土煙が校庭を覆い隠す、彼女達はそれに紛れ誰にも見つからず、無事校舎内までたどり着くことが出来ていた。

「おかしいわね、いくら休みとはいえ静か過ぎる、それに職員室に誰もいないってのは変ね」

「ん、あれを見て、今日の担当職員」

 ナナが指差す先、それは職員室の後ろのボード、休みの日(臨時休校中)の電話番権、防犯見回りの職員のメンバー名が書かれた表であった。

「ふむ、何々……なるほど、なるほど」

「あぁ、そうだなこの面々なら、まともにこんな役割なんてするわけないか」

「ん、教頭の派閥、名誉と金だけに執着する腰ぎんちゃく」

 簡単に言えば、学園長の命を無視し、サボっているということらしい。

「そんなことなんてどうでもいいって、さぁ、保健室、ん? まだ治療室なのかな。まぁどうせ隣だし向かいましょう」

 

 誰にも発見されることなく、保健室へやってきたメンバー。

 しかしそこには、あの保護された少年の姿はなかった。

「あらっ、あなたたちどうやってここに? 今は誰も学園に入れないはずなんだけど」

「--!!、いっ、いえ私達はーーって、何だミイナ先生か~~、あっそうだ彼は、あの時の彼はどうしていますか、もう身体の再生治療はすんでますよね、どこにいるのか教えてくださいよ」

 不意に現れた保険医のミイナ、その彼女に息をつく暇すらあたえず質問するメル。

 どうやら彼女達、くだけた喋りから察するに、そこそこの付き合いがあるらしい。

「ミイナ先生騒がしくてすみません、俺達はあの時救出された同級生のことが心配で見舞いに着ただけです、まぁ確かに違法的手段で学園に入りましたし、彼の名前すら知らないですが」

「そうだな、私も彼の顔は見覚えがない、一応1年の顔は覚えたと思ったのだが、いや……まてよ1年、同級生にしては幼すぎた気がするが。どうもはっきり姿が思い出せない」

 このメンバーの良心ともいえる男子2人、メルの失礼な態度に頭を下げ、ミイナの質問に再度答える。

「気にしなくていいわよ2人とも、どうせ言いだしっぺはメルでしょ、それと彼はここにも治療室にもいないわよ、治療(仮)も終わったから、え~~と、そうね今の時間ならアテネの部屋にいるはずよーーって、やばっ、今の嘘、冗談よ」

 時すでに遅し、彼女の爆弾発言に固まってしまったメンバー。




 数分後。

 ミイナに詳しい話(説得)に納得したメル達。

 蒼い顔で少し怯えた表情、たどたどしい足取りで職員寮(女子)へ向かっていた。

「~~何も聞いてません、何も聞きませんでした」

「ん、聞いてない、彼はウル教官の古い知り合いの子供、家の事情で一時預かってるだけ」

「そっ、そうね、学園長の許可もあるし何も問題ない、問題なし」

 あきらかに説得ではないようだが、……これも大人の事情ということで放置することにしよう。




 ふらつきながらも、女子寮へたどり着いたメル達。

 正面玄関、その前にある門に多数設置された、モニターカメラが彼女達の方向に動いた。

 メル達は素早く腕のバンドをカメラに向ける。

「ダンシセイトハフキョカ、ソレイジョウタチイルト、キョウセイハイジョシウマス・・・・クリカエス、ダンシセイトハ」

 カメラに取り付けてあったマイク、その警告音により後ずさる男子2人。

「待ちなさい、警告音、カメラ録画停止しなさい」

 突如現れた人物の言葉に、警告音が止まった。

 振り返ると、そこには少し困惑したような表情の、学園長とウル教官の姿があった。

 職員女子寮の玄関隣のロビーに場所を移すことに。




「--とまぁ、そんな状況ですので、この件は内密にお願いします」

 これまでの経緯を簡単に説明する学園長。

「ふ~~んなるほど、そっか、彼は学園の生徒じゃなかったんだ」

「それに、出身地、正体不明なばかりか、記憶喪失ときている、もっとも問題なのが機械類が彼を認識しないということだ」

「--それで、その彼はまだアテネ先生の部屋にいるんですか、一応元気な顔だけでも見ておきたいんですけど」

 彼女の言葉に表情を曇らせる学園長、しかしすぐに答える。

「あなた達に誤魔化しても、どうせ直接会うまで引かないでしょうから、教えておきましょう。彼は今、先ほどあなた達と入れ替わりに治療室へ運び込まれました」




 学園長は語った。

 あのメル達が聞いた爆発音と地響きの原因を。

 学園の校庭、その多数存在する、特殊科専用の能力計測の為に建設されたドーム。

 そのうちの1つ、入学時にのみ使用される適正判断の施設。




 ーー爆発の30分前。

 施設内は体育館のようなつくりになっていた、衝撃吸収の板張りの床、壁には魔法の暴発に備え対魔法障壁が展開されていた。

 その中央に置かれた様々な計器類。

 学園長、ウルと数人のQ先生とアテネ。

 そして仮の義手、義足を装着した謎の少年がいた。

「ジュンビ完了でス、これデ計測でキマす」

「よろしい、え~~と、名前は着ていた服に刻んであったKの文字をとってケイでよかったんですね、ではその模擬刀で目の前の目標物の丸太を叩いてもらえますか、それで君の身体能力を測定します」

「うん、わかった、それ攻撃すればいい?」

 右手で軽く握られた模擬刀、左足を軽く前、右足を後ろに、そして残った左手は顎と心臓がある身体の中心部をしっかりと防御している。

 その仕草、自然な動きであり、よほどの熟練者でなければきずかないレベルであった。

 ウルが学園長に耳打ちする。

 その瞬間、ケイと呼ばれた少年の雰囲気が変わった、一心に目標物を見つめ、全身に力がみなぎっているのがわかる。

 そしてケイの姿が消えたかと思うと、目標物直径50Cm、高さ2Mほどある丸太が消し飛んだ。

 数秒遅れて、衝撃波が地面と前の壁をなぎ払った。

「なっ、まさか……ここまでとは、やはりあの刺青は……」

 その光景に、ウルは思わず呟いた。




「これはまずいですね、仕方ありませんウル教官Q先生、他の教官達がやってきます。あなたたちは機材を持って撤収してください。アテネ先生はケイ君をつれて治療室へ、その義足はもう動かないでしょうから」

「えっ、これは……両足の義足が膝から折れてる、なんでこんな状態に」

 学園長の言葉は本当であった、ケイの義足からは煙が吹き上がり、彼は数M先でうつぶせになって倒れていた。

「ほら急いでください、他の教官達にケイ君を見られるわけには行きません、あとのことは、私が何とか説明して誤魔化しておきますから」

 アテネはケイを抱き上げると、煙に紛れこの場を脱出した。

 彼女達と入れ替わりに、異変を見た数人の教官が破壊された壁からやってきた。

「学園長!!、学園長は無事なのですか、これはいったい何事なんですか、一体何があったのですか説明してください」

「いえ、なんでもありませんよ、ただ私の新しい魔法の実験中に、その魔法が暴発してしまっただけです、人的被害はありませんが、お騒がせしてすみません建物は私がちゃんと弁償しますので」




 アテネは治療室へやってきていた。

 ケイは疲れたのか、運ばれる途中寝てしまっていた。

「なっ、コレはどういウことデス、どうヤレバこの仮とハいえ最新の義足をここマデ破壊できルのデス」

 奥の部屋、ベッドに寝かされたケイ、すぐにQ先生がやってきて驚きの声を上げる。

 彼女は説明した、先ほどの出来事を、ありのままに。

「わかリマした、いま実際見たものからノ伝達が完了シマした、ありえナイですガ強度不足です、こノ彼の力、脚力にこノ義足が耐えられナかッタのデス」

 彼女の言葉を信じていないわけではないが、彼はつながっている心で確認することにした。

「それじゃあQ先生、余・計・なことはしないで、壊れた義足の交換をお願いしますね、私は1度寮に戻り埃まみれのこの服を着替えてきます」

 丁度治療室を出たところ、向こう側の廊下のほうから足音が聞こえてきた。

「この足音、複数ね、足運びからして一般の教師かな……この埃まみれの状態を見られると、あそこにいたとバレるかも」

 彼女は振り返ると、音もなく反対側の廊下へと走り去った。




「さ~~て、保健室にいるかな~~」

「ほらメル、静かになさいな、一応無断進入なのよ私達は」

「な~~にいってんのよ、私達は人命救助にやってきて、その途中に保健室が、そう偶然保健室が見えただけなの」




 その後女子寮へと移動する彼女達。
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