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「支配」
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私の名前はノエル・テイラー。イギリスの第一居住区に住んでいる。
2102年から20年間、この退屈な世界で過ごし続けている。
この世界は労働、などない。全て機械がやってくれるからだ。
現代に生きている人らは羨ましいと思うのだろうが、
じっさいは全然違う。
労働、という100年前の人生の一要素がなくなるだけで、
一気に人生というものは退屈になる。
母は5歳のころに防衛管理用AIの誤射により死に、
父もAI管理区へ飛ばされた。私は祖父母に引き取られたが、祖父母もすぐ死んだ。
そして今に至る。
「おはよう」
私の挨拶に対し、
「おはよう」と返事をしてくれる人は誰もいない。
それが日常だ。
私には家族がいない。
友人はいるが、本当に少ない。
私たちは体に埋め込まれている栄養補給モジュールによりご飯など食べる必要はないのだが、
私は100年前の生活を体感するために、「ご飯」というものを食べてみることにした。「今日は何食べようかなー?」
ご飯を食べることなんて、10年ぶりだ。
10歳には栄養補給モジュールを埋め込むことが義務化されており、そのあとはずっとご飯というものを食べていなかった。昔ながらの飯屋に入り、注文をする。極東の「日本」という国で生まれた店だそうだ。メニューを見てみる。……どれもよくわからない料理ばかりだ。
とりあえず「焼き魚定食」なるものを頼んでみた。
数分後、それは運ばれてきた。
魚の切り身のようなものと、味噌汁、そして米がセットで置いてあった。
非常に美味しそうだ。いただきます。
まずは味噌汁を一口飲んでみる。
味わったことのない、しょっぱい、だがバランスの取れている味だ。
それと同時に、口に何かを入れる、ということも10年ぶりだと気づいた。なんだか懐かしさを感じる。それもあってか、非常に美味しい。
次は魚の切り身を箸で掴み、口に運ぶ。
これはとてもうまい。白身の淡泊さと脂身のジューシーさが絶妙なバランスを保っている。
こんなにおいしいのも久しぶりだ。
もはや、味覚というものも衰退していたのだろうか。昔より、味が濃い気がするな。そうして食事を続けていると、あっという間になくなってしまった。少し物足りない気もするが、これ以上はお腹がいっぱいになってしまう。
会計を済ませ、店を後にした。
また来よう。今度は友人を連れてくるのもいいかもしれない。
そうして家に帰る。そうして家にある大型ホログラムスクリーンで100年前の暮らしというものを見ることにした。
そこには私が知っているものから知らないものまで、様々な映像や情報が映し出されていた。私はその中で一番興味を持ったものを検索することにした。
今は64Kのスクリーンで映像が見ることができるため、いくら画像を拡大しても画質が落ちることはなかった。
『今日のニュースです』
ニュースキャスターの声とともに、 画面にはニュースの映像が流れた。
『昨日、防衛管理用AIによる誤射により、5人の死者が出たことが分かりました。』
母も同じように死んだ。100年前というのはいいな。こんなこともおそらくないのだろう。
防衛管理AIというのは、正直いらないと思う。
人を何千人も殺し、しかもその責任は全て人間側に押し付けるのだ。そんなものはAIではなくただの「お荷物」である。
人間が考えることをやめてしまったらどうなるのか? 答えは簡単だ。人間は「機械」に支配されてしまう。
機械とは、私たちの生活を支えてくれているものだ。しかし同時に私たちを殺しうる存在でもある。
もし機械に支配されてしまったら、と考えるとぞっとする。
今以上に自由が制限されるだろうし、なにより私たちはすぐに殺されるだろう。
100年前というのは、いかに素晴らしい世界だったか、わかってきた。
こんな心配も、する必要がないのだから。
2102年から20年間、この退屈な世界で過ごし続けている。
この世界は労働、などない。全て機械がやってくれるからだ。
現代に生きている人らは羨ましいと思うのだろうが、
じっさいは全然違う。
労働、という100年前の人生の一要素がなくなるだけで、
一気に人生というものは退屈になる。
母は5歳のころに防衛管理用AIの誤射により死に、
父もAI管理区へ飛ばされた。私は祖父母に引き取られたが、祖父母もすぐ死んだ。
そして今に至る。
「おはよう」
私の挨拶に対し、
「おはよう」と返事をしてくれる人は誰もいない。
それが日常だ。
私には家族がいない。
友人はいるが、本当に少ない。
私たちは体に埋め込まれている栄養補給モジュールによりご飯など食べる必要はないのだが、
私は100年前の生活を体感するために、「ご飯」というものを食べてみることにした。「今日は何食べようかなー?」
ご飯を食べることなんて、10年ぶりだ。
10歳には栄養補給モジュールを埋め込むことが義務化されており、そのあとはずっとご飯というものを食べていなかった。昔ながらの飯屋に入り、注文をする。極東の「日本」という国で生まれた店だそうだ。メニューを見てみる。……どれもよくわからない料理ばかりだ。
とりあえず「焼き魚定食」なるものを頼んでみた。
数分後、それは運ばれてきた。
魚の切り身のようなものと、味噌汁、そして米がセットで置いてあった。
非常に美味しそうだ。いただきます。
まずは味噌汁を一口飲んでみる。
味わったことのない、しょっぱい、だがバランスの取れている味だ。
それと同時に、口に何かを入れる、ということも10年ぶりだと気づいた。なんだか懐かしさを感じる。それもあってか、非常に美味しい。
次は魚の切り身を箸で掴み、口に運ぶ。
これはとてもうまい。白身の淡泊さと脂身のジューシーさが絶妙なバランスを保っている。
こんなにおいしいのも久しぶりだ。
もはや、味覚というものも衰退していたのだろうか。昔より、味が濃い気がするな。そうして食事を続けていると、あっという間になくなってしまった。少し物足りない気もするが、これ以上はお腹がいっぱいになってしまう。
会計を済ませ、店を後にした。
また来よう。今度は友人を連れてくるのもいいかもしれない。
そうして家に帰る。そうして家にある大型ホログラムスクリーンで100年前の暮らしというものを見ることにした。
そこには私が知っているものから知らないものまで、様々な映像や情報が映し出されていた。私はその中で一番興味を持ったものを検索することにした。
今は64Kのスクリーンで映像が見ることができるため、いくら画像を拡大しても画質が落ちることはなかった。
『今日のニュースです』
ニュースキャスターの声とともに、 画面にはニュースの映像が流れた。
『昨日、防衛管理用AIによる誤射により、5人の死者が出たことが分かりました。』
母も同じように死んだ。100年前というのはいいな。こんなこともおそらくないのだろう。
防衛管理AIというのは、正直いらないと思う。
人を何千人も殺し、しかもその責任は全て人間側に押し付けるのだ。そんなものはAIではなくただの「お荷物」である。
人間が考えることをやめてしまったらどうなるのか? 答えは簡単だ。人間は「機械」に支配されてしまう。
機械とは、私たちの生活を支えてくれているものだ。しかし同時に私たちを殺しうる存在でもある。
もし機械に支配されてしまったら、と考えるとぞっとする。
今以上に自由が制限されるだろうし、なにより私たちはすぐに殺されるだろう。
100年前というのは、いかに素晴らしい世界だったか、わかってきた。
こんな心配も、する必要がないのだから。
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