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第五章水の精霊
すげぇよマジックバック
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···なんか思ってたのと違う。
私の予測では、さすがに電気そのままが出てきても意味ないので、電球みたいな、光の玉みたいなのが出てくるんだと思った。でも確かにその時イメージしたのは別荘全体が光で満たされるものだったから、それが思っていたものとは少し違ってしまったのかもしれない。
精霊はきっと暗闇でも目が効くのだろうが、『さっきよりあかるいー!』『あかるいー!』と盛り上がっている。
そしていつの間にか隣にいるフォレがふんと鼻を鳴らして部屋を見渡した。なんだか魔法の出来を審査されているようだが、自信のある私は少しドヤ顔気味でフォレに自慢する。
「フォレの言った通りにイメージしたよ。どう?結構いい感じじゃない?電気魔法!」
フォレは私をちらっと見て、呆れたようにため息をついた。そして今度はじぃっと私を見つめる。
そんな時、ロランの嬉しそうな大声が響いた。
「アリサ、すごいよ!さっすが私と契約した精霊使い!この光魔法すごいねほんと!」
精霊は飛んでくるので足音がしない。故にいつの間にか傍にいて驚かされることも多いのだが···私は驚きながらも、ロランの言葉にしっかり重く頷いた。
ほらやっぱり!
そんなふうにドヤ顔をしたが、何か腑に落ちないキーワードがあった。
···ん?光魔法···?
「···アリサ、それは電気魔法ではないわ。光魔法よ。一人でこれほどの制御が効いた魔法ができたのはいいけど、魔法の属性くらいわかりなさい。精霊が可哀想でしょうが」
はぁと吐き出されたフォレの言葉に、私のドヤ顔が崩れ、顔が赤くなっていくのを感じた。恥ずかしい。顔から火が出そうだ。
「え、こんな結構有名で高度な魔法を電気魔法と間違えたの?」
『アリサ、まちがえちゃったんだー』
『おっちょこちょい!ありさおもしろーい!』
「それぐらいにしてあげなさい。今にもアリサが死にそうだわ」
ーーーーー
「昼食···いやもう夜食ぐらいかな?そろそろ夕方だし。ご飯を作ります!」
「光魔法の時みたいに、何か間違ったりしないように気をつけてね!」
ずさっと心に槍が刺されたような感覚に、顔が固まる。もちろん例えだが、今の発言は完全に私を辱めようとしている。
···いや、ロランは「気をつけてね!」ぐらいの純粋な気持ちで言ったのだろう。顔を固まらせてぷるぷる震えている私に指を差し、フォレは「やめなさい。アリサはもう瀕死状態よ」と、若干私を馬鹿にしたようにロランに注意していた。
「···まあご飯を作ると言っても、主食の米···この世界ではパンとかの麦かな?なんかそれっぽいし」
「人族の食料事情はよくわからないけど、どれもそれっぼいのがあったはずよ」
「そうなの?日本人としては嬉しい!···じゃなくて、今私が持ってる食料は野菜とか果物だけなんだよね。なんかいざと言う時に飢え死になるのを防ぐための。でもどうせいざと言う時はないと思うし、早めに食べたいなぁって」
そう言って取り出したのは···マジックバックだ。マジックバックの中に手を突っ込み、果物を取り出す。その果物は赤く、少し硬い。まるでりんごだ。
「この果物なんて言うの?」
「りんごよ」
「えっ」
いやりんごみたいとは思ってたけどまさかの本当のりんご···。フォレが私に自分から聞いといて何驚いてんだコイツみたいな顔をしていたが、まあもう慣れた。
でも名前が同じだけの別の果物かもしれない。そう思ってこのりんごをまじまじと見る。···やっぱりこれ完全にりんごだわ。
まあそれは置いといて、何故私がこのりんごをマジックの中から出したかと言うと···もちろん楽なのもあるが、なんとこのマジックの中にある食材は、そのまま鮮度を保つことができるのだ!
いやぁなんて嬉しいことだ!主婦の味方!私は主婦じゃないけど!
獣人の街(モフモフパラダイス)に行った時、まぬけな私は果物を爆買いして他の街に行った後、この世界に冷蔵庫も何もないことに気づいたのだ。宿のお姉さんに聞いたのだが、すごい微妙な反応をされた。
聞いてみると、「えっ?食料をどう保存しているのかですか?まあさすがに袋にそのまま入れないので、少しちゃんとしたケースに保管します。長い間なら期限に余裕がある物を保管しますが···。え?野菜や果物?期限が短い生ものはもちろん早めに召し上がりますよ。···えっ。普通、ですよね···?」
最終的にお姉さんは私を変人を見るような目で見ていた。常識がわからない変なやつ的な感じの。
まあその後、ジェシーさんからマジックバックを貰い、ギルドでマジックバックのことについて話している冒険者がいたので聞き耳を立てたのだ。盗み聞きではない。かなりの声量で話してたし。内容は一人の冒険者が念願のマジックバックを買い、もう一人の冒険者がそれを羨ましがってたというものだ。私は軽くジェシーさんから貰ったのでなんだか申し訳ない気持ちになっていたのだが、食料を入れても味も鮮度も温度までも落ちない、無敵の冷蔵庫的な存在であることも知った。
すげぇよマジックバック。もう一度言う。すげぇよマジックバック。
私は改めてジェシーさんに感謝した。···というのがマジックバックを使った経路だ。
そして、マジックバックからどんどんと果物や野菜を取り出す。マジックバックで一番不思議なところは、この一見普通の袋にこんな量の物が入るかだ。宝箱から食材まで入れてるのにへこんだりぐちゃぐちゃになったりもしない。マジックバックの中を見ると、すぐ入れたものは見えるがその奥が見えない。取り出したいと思ったものは、探らなくてもなんか出せる。普通の袋でそんなに大きくもないのに、大量に物を入れると一気に底が見えなくなる。そして···外からマジックバックを触っても、入れた物の感触は一切ない。これは一体どうなって····。
···落ち着け私。ここはファンタジーの世界なんだ。そう、ファンタジーワールド。
深呼吸して自分を落ち着かせる。そして、全て取り出した食材を見る。りんごが一個。その他名前は知らないけど美味しそうな果物が十六個。野菜は大雑把に言うと、カレーの食材の二倍三倍程度だ。
···数についてはつっこまないで欲しい。
私は服の袖をまくった。
どこまでできるかはわからないが、とりあえずやってみようじゃないか。
私の予測では、さすがに電気そのままが出てきても意味ないので、電球みたいな、光の玉みたいなのが出てくるんだと思った。でも確かにその時イメージしたのは別荘全体が光で満たされるものだったから、それが思っていたものとは少し違ってしまったのかもしれない。
精霊はきっと暗闇でも目が効くのだろうが、『さっきよりあかるいー!』『あかるいー!』と盛り上がっている。
そしていつの間にか隣にいるフォレがふんと鼻を鳴らして部屋を見渡した。なんだか魔法の出来を審査されているようだが、自信のある私は少しドヤ顔気味でフォレに自慢する。
「フォレの言った通りにイメージしたよ。どう?結構いい感じじゃない?電気魔法!」
フォレは私をちらっと見て、呆れたようにため息をついた。そして今度はじぃっと私を見つめる。
そんな時、ロランの嬉しそうな大声が響いた。
「アリサ、すごいよ!さっすが私と契約した精霊使い!この光魔法すごいねほんと!」
精霊は飛んでくるので足音がしない。故にいつの間にか傍にいて驚かされることも多いのだが···私は驚きながらも、ロランの言葉にしっかり重く頷いた。
ほらやっぱり!
そんなふうにドヤ顔をしたが、何か腑に落ちないキーワードがあった。
···ん?光魔法···?
「···アリサ、それは電気魔法ではないわ。光魔法よ。一人でこれほどの制御が効いた魔法ができたのはいいけど、魔法の属性くらいわかりなさい。精霊が可哀想でしょうが」
はぁと吐き出されたフォレの言葉に、私のドヤ顔が崩れ、顔が赤くなっていくのを感じた。恥ずかしい。顔から火が出そうだ。
「え、こんな結構有名で高度な魔法を電気魔法と間違えたの?」
『アリサ、まちがえちゃったんだー』
『おっちょこちょい!ありさおもしろーい!』
「それぐらいにしてあげなさい。今にもアリサが死にそうだわ」
ーーーーー
「昼食···いやもう夜食ぐらいかな?そろそろ夕方だし。ご飯を作ります!」
「光魔法の時みたいに、何か間違ったりしないように気をつけてね!」
ずさっと心に槍が刺されたような感覚に、顔が固まる。もちろん例えだが、今の発言は完全に私を辱めようとしている。
···いや、ロランは「気をつけてね!」ぐらいの純粋な気持ちで言ったのだろう。顔を固まらせてぷるぷる震えている私に指を差し、フォレは「やめなさい。アリサはもう瀕死状態よ」と、若干私を馬鹿にしたようにロランに注意していた。
「···まあご飯を作ると言っても、主食の米···この世界ではパンとかの麦かな?なんかそれっぽいし」
「人族の食料事情はよくわからないけど、どれもそれっぼいのがあったはずよ」
「そうなの?日本人としては嬉しい!···じゃなくて、今私が持ってる食料は野菜とか果物だけなんだよね。なんかいざと言う時に飢え死になるのを防ぐための。でもどうせいざと言う時はないと思うし、早めに食べたいなぁって」
そう言って取り出したのは···マジックバックだ。マジックバックの中に手を突っ込み、果物を取り出す。その果物は赤く、少し硬い。まるでりんごだ。
「この果物なんて言うの?」
「りんごよ」
「えっ」
いやりんごみたいとは思ってたけどまさかの本当のりんご···。フォレが私に自分から聞いといて何驚いてんだコイツみたいな顔をしていたが、まあもう慣れた。
でも名前が同じだけの別の果物かもしれない。そう思ってこのりんごをまじまじと見る。···やっぱりこれ完全にりんごだわ。
まあそれは置いといて、何故私がこのりんごをマジックの中から出したかと言うと···もちろん楽なのもあるが、なんとこのマジックの中にある食材は、そのまま鮮度を保つことができるのだ!
いやぁなんて嬉しいことだ!主婦の味方!私は主婦じゃないけど!
獣人の街(モフモフパラダイス)に行った時、まぬけな私は果物を爆買いして他の街に行った後、この世界に冷蔵庫も何もないことに気づいたのだ。宿のお姉さんに聞いたのだが、すごい微妙な反応をされた。
聞いてみると、「えっ?食料をどう保存しているのかですか?まあさすがに袋にそのまま入れないので、少しちゃんとしたケースに保管します。長い間なら期限に余裕がある物を保管しますが···。え?野菜や果物?期限が短い生ものはもちろん早めに召し上がりますよ。···えっ。普通、ですよね···?」
最終的にお姉さんは私を変人を見るような目で見ていた。常識がわからない変なやつ的な感じの。
まあその後、ジェシーさんからマジックバックを貰い、ギルドでマジックバックのことについて話している冒険者がいたので聞き耳を立てたのだ。盗み聞きではない。かなりの声量で話してたし。内容は一人の冒険者が念願のマジックバックを買い、もう一人の冒険者がそれを羨ましがってたというものだ。私は軽くジェシーさんから貰ったのでなんだか申し訳ない気持ちになっていたのだが、食料を入れても味も鮮度も温度までも落ちない、無敵の冷蔵庫的な存在であることも知った。
すげぇよマジックバック。もう一度言う。すげぇよマジックバック。
私は改めてジェシーさんに感謝した。···というのがマジックバックを使った経路だ。
そして、マジックバックからどんどんと果物や野菜を取り出す。マジックバックで一番不思議なところは、この一見普通の袋にこんな量の物が入るかだ。宝箱から食材まで入れてるのにへこんだりぐちゃぐちゃになったりもしない。マジックバックの中を見ると、すぐ入れたものは見えるがその奥が見えない。取り出したいと思ったものは、探らなくてもなんか出せる。普通の袋でそんなに大きくもないのに、大量に物を入れると一気に底が見えなくなる。そして···外からマジックバックを触っても、入れた物の感触は一切ない。これは一体どうなって····。
···落ち着け私。ここはファンタジーの世界なんだ。そう、ファンタジーワールド。
深呼吸して自分を落ち着かせる。そして、全て取り出した食材を見る。りんごが一個。その他名前は知らないけど美味しそうな果物が十六個。野菜は大雑把に言うと、カレーの食材の二倍三倍程度だ。
···数についてはつっこまないで欲しい。
私は服の袖をまくった。
どこまでできるかはわからないが、とりあえずやってみようじゃないか。
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