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俺が…キングメーカー(予定)!?

プロローグ

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「うっわ、寝坊したー!」

 そう言ってガバッと布団をめくり、俺は飛び起きた。そして、一瞬経ってからベッドの隣に置いてある目覚まし時計を素早く掴み、顔に近づけて見て、現在時刻を確認した。

 良かった、まだ7時30分だ。普段5時起きだから、こんな遅い時間に起きるのは珍しい。まぁ、昨晩残業3時間で済んだのが嬉しくて、推しの出演した劇の生配信見てたから当然なんだけどね。
 残業4時間当たり前、始業30分前に来ないと反省文コースの会社に勤めているから、寝坊なんてしたら寿命が3年くらい縮まる。今朝寝坊したんだけどね!寿命縮まりたてほやほや!


 はい、ふざけました。


 なんて心の中で呟きながら俺は慌てて着替えに取り掛かった。

 朝食?歯磨き?洗顔?

 そんなことをしている場合じゃない。反省文コースなんてマジ勘弁だ。場合によっては終電ギリまで残業を課される。

 ネクタイは後で結べばいいや、なんて考えてカバンとネクタイを手に家から飛び出た。そのまま念の為走って最寄駅へと向かった。会社までは電車で25分(乗り換えあり)、駅まで走って5分強。

 

 5分ほど経ち、駅まであと少しの所まで来た時だった。ちょうど再開発のための工事をしており、そこの一角を走って過ぎ去ろうとする直前。

「お兄さん!危ないよぉ!!」

 上から突然声をかけられ、足を止めて目線を上に向ける。そこには、焼けた肌の壮年の大工さんがいて、そして、大工さんから離れ、俺のもとに近づいてくる細長い何かがあった。


 鉄骨だ。


 でも、そう悟った時にはもう遅かった。俺は他の場所へと進もうとせず、落ちてくる鉄骨をただ見続けるのみ。まるで他人事のようにぼーっとしている自分がいる。

 そんなことをしていて無事なわけがなく、体感では数分、実際には数秒もせず頭部に衝撃が襲いかかり、俺は意識を失った。








◯●◯

「うう゛…」

 どのくらい経ったのだろうか。俺は見知らぬ場所にいた。

 頭を包帯でぐるぐる巻かれ病院にいるわけでもなく、今までの出来事が夢でベッドで寝ているわけでもなく、俺の実家である祖父母の家にいるわけでもなく…

 俺は、雲の上にいた。


Q.何故俺は雲の上にいるでしょーか!?

A.死んだから


 としか考えられないよねー。雲の上だもん。飛行機から見てるわけでもなくマジで雲の上に座ってるんだもん。

 うわー、俺まだ26だヨ、ピッチピチだヨ。なのにこんなに早く死んだヨ!!


 はい、ふざけすぎました。人(自分)が死んだのに不謹慎だったね。


 なんて考えてると背後に何かの気配を感じた。

「あー良かった起きた起きたー」

 振り返ってみると、そこにいたのはショタ?(ロリかも)だ。おかっぱで顔立ちは男の子でも女の子でも通じる。

「えーっと、誰?」

「あ、紹介が遅れたね。どーも『神』でーす」

 なんか変な冗談言う奴来たな。こいつも死人か。

「死人じゃないよー、ガチで『神』だよ。ちょっと君にお話がありまーす。君は死にましたー」

「うん、知ってる」

 頭に鉄骨直撃しても平気なら人間じゃねぇ。少なくとも重傷だろ。

「あ、そう。なら話は早いね。実は君、本当は今日死ぬはずじゃなかったんだよ。うっかり『ぼく』がミスしちゃってさー。そのせいで間違って君が死んじゃったんだー」

 ほんとにごめんねー、と自称神が言った。

「君があと何年も生きれたかと思うと。ブラック企業に耐えられず自殺するまであと2年もあるかと思うと、心が苦しくて」

「表情は全く苦しくなさそうだけど」

 笑顔で心が苦しいとか語んな。

「ごめんねぇ。ってわけで心の底から申し訳なく思う僕が君の願いを一つだけ叶えてあげることにしましたー。生き返るってのだけは無理だけど」

 拍手拍手ー、と言って手を叩く自称神。

「ねぇ、死人と話すってことはできる?」

「できるよ。誰と話したい?死んだ家族?先祖?」

 俺は神の質問に迷わず答えた。

「リチャード3世」

 俺の推し、リチャード3世。シェイクスピアの戯曲で有名な悪王だ。昨晩生配信で見た舞台っていうのは勿論シェイクスピアの『リチャード3世』だ。学生時代、この本をきっかけに彼にのめり込み、彼について調べ続け、彼が登場する書物を読み漁っていた。そして、思うようになったのだ。

 彼と実際に会ってみたい。そして話してどのような人物だったから知りたい。

 そんな叶わない夢を心の底で抱いていたのだ。

「会って、人柄がわかるくらい話すってのはできる?あとは、まぁ仲良くなっては見たいけど。なんかちょっと、畏れ多いって言うか…」

「おっけー。リチャード3世と仲良くなりたいね」

「話聞いてねぇな!」

 ツッコミを入れる俺を無視して何かの用意を始める自称神。

「じゃ、リチャード3世と仲良くなれそうな人に憑依ひょうい(?)転生(?)させてあげるから」

「お、おい!ちょっと待って!俺は話したいとしか言ってな…」

「バイバーイ」

 自称神がそう言って手を振ると、ほどなくして俺は雲の上から落ちていき、そのまま意識を失った。




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