30日後に異世界転生するらしいので残りの人生楽しんでみた。

花栗 詩音

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転生までの猶予30日間スタート

残り28日

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今日はアラームが鳴らない。土曜日は心ゆくまで寝ると決めているから、前日まで数分刻みで鳴る設定にしていたアラームを全て切り、寝坊の緊張感を一切捨てて眠る。
目覚めたのが昼過ぎであっても、後悔はしない。なぜなら土曜日だから。今日1日寝過ごしたところで明日も休みだと思うと罪悪感も薄れてしまう。
しかし、これは寝すぎだ。目覚めたのが午後16時。昼過ぎどころか夕方になってしまった。いい香りで目が覚めて、優雅にランチタイムかと思ったが、外を見ると薄暗くリビングに降りると少し早く帰宅した父さんが夕刊を読んでいた。

「おはよう、随分寝たのね。せっかくの土曜日だったのに昨日夜更かししたの?」
「そういう訳じゃないんだけどなぁ…寝溜め出来たから良しって感じ」

母さんがテーブルに料理を並べていく、パジャマのまま席につき、本日1回目の食事を摂る。
朝食と昼食を一緒に摂るのがブランチなら全てが一緒になった食事はブラディナーとでも言うのか、なんか少しエロい感じがして良い。

母さんの飯は美味い。これまでの人生たくさんの人が作る料理を食してきた訳だが、結局のところ母さんの料理が1番美味いのは変わりない。唯一無二とはまさにこの事、男という生き物が伴侶に「お袋の味」を求めるのは至極当然のことのように思う。
食べ始めて少しだった頃、唐突に玄関の呼び鈴が鳴り、母さんが玄関を開けると叶の声がした。
今日約束してたか?疑問に感じた俺は食事を中断し、玄関に向かう。
俺の顔を見ると叶は「おっす」と軽くてを上げて挨拶した。

「叶どうした?」
「うち、今日親居ないからさ。連絡したんだけど…飯まだなら一緒に食べに行こうと思って寄ってみた。邪魔したみたいで悪いな」
「ごめん、さっき起きた」
「そんなことだろうと思ったよ、まあまた今度な!」

叶の家は両親共働きで、どちらも経営者というだけあって家を空けることが多いらしい。
そういう時は大体俺が飯に誘われるのだが携帯を一切見ていなかったせいで気がつけなかった。

「叶くん、うちでご飯食べていきなさいよ」

帰ろうとする叶を母さんが呼び止め、上がってとリビングの方へ手招きする。
俺ももちろんその意見に賛成で、遠慮する叶の手を強引に引っ張りリビングまで案内した。
「お邪魔します」と遠慮がちな声にいつもは無愛想な父さんがニッコリと微笑みながら頷いた。
幼少期からなかなか友達ができない俺が高校生になって友達が出来たと叶の話ばかりしていたせいか、両親は叶を大層気に入っていた。
毎朝友達が迎えに来るなんてことは叶が初めてだった。
俺と叶が席につくとすぐに叶の分の食事が用意された、ニヤける叶を後目に俺も食事を再開する。

「円ママの飯最高に美味い!」
「いっぱい食べてね」

和気あいあいとした食事が終了し、叶が帰ろうとした所を今度は俺が呼び止めた。

「今日、泊まっていかね?明日日曜だしさ」
「えー、さすがに迷惑でしょ」
「いいって、帰っても暇なんだろ?」
「うーわ、よく言う。お前が暇なんだろ?どうせ寝れないから」
「ご名答」

さすが叶さん。俺が言わずとも発言の意図を汲み取ってくれるから会話が楽だし早い。
母さんに叶が泊まることを伝え、俺たちは渡された切りリンゴとジュースを抱え自室に戻ることにした。
熟したリンゴを頬張りながら、最近のアニメについて熱弁していたのだが、突然何が発端になったのか分からないが一昔前のアニメの話題に切り替わった。

「そういえば、ちょっと前はヒットアニメといえばハーレム系じゃなかった?」

叶が思い出しているのはきっとアレやアレだろうな。
思い返してみると確かに一昔前、俺たちが中学生の時は異世界転生モノは少なくて、舞台は学校や自宅。男1に対して美少女が多数。そして全員なぜか主人公に好意を抱いている。というちょいエロハーレムアニメが主流だった。ド直球キャラ、おバカキャラ、ツンデレキャラなどイロドリミドリな美少女の中から主人公は贅沢な選択をする。最初は主人公に嫌悪感を抱いている女の子でも最終話に向かうにつれ惚れていく過程もまた見ものである。舞台設定が身近なだけあって、大多数のヲタクに夢と希望を与えたことだろう。
異世界転生が主流となってきた今、世のヲタクたちは現実逃避を選んだのだろうか。

「確かに、今は異世界転生してハーレムってのもあるね」
「お前、向こうでハーレム作れるんじゃない?」
「あり。作れるなら是非作りたい」
「じゃあさ!じゃあさ!どんな女の子集める?」

ヲタクは妄想が好きだ。いや、これでは語弊が生まれるかもしれないので先に訂正しておこう。
俺と叶は妄想が好きだ。もしも話で夢を語るのがお互いに得意で、2人の時は2次元の世界に行ったら。みたいな話を良くする。
もしかしたらその延長で叶は執筆を始めたのかもしれない。
転生後、ハーレムを作れるとしたらどんな女の子を集めるか。非常に難しい質問だ、何故なら俺には固定された好みは無い。もちろん、女の子は大好きだが推しになるキャラクターの性格や見た目はバラバラで、その時に推しになった子が推し!みたいな一丁前にモテ男のような思考の持ち主なのだ。
実現の有無は別として妄想するだけならタダ。ならば、ここぞとばかりに好みの女の子でハーレムを作る妄想するだけである。

「まずは…色気ムンムンお姉さん系!」
「えー、お前リードして欲しいタイプなの?」
「そういう訳じゃないけど…1人は欲しくない?疲れた時に慰めてくれる存在的な?」
「それは大事です!」
「あとは、あざとい系!確信犯でもいい、むしろ計算されたあざとさで翻弄してほしい。それから超真面目なのに俺の前だと甘えん坊になる同い年の女の子と、ツンデレロリは絶対に欠かせない!生意気はプライスレス!」
「お前ぇ!よく分かってるじゃん!そう、生意気なロリは至高なんだよ、普段ツンツンしてるのに好きな人の前ではデレちゃうの、一生懸命ツンを装って大人ぶってるけど結局はロリなんだよなぁって興奮したい」

ロリを出した途端急に饒舌になる叶は良い意味でも悪い意味でも本当に気持ち悪い。俺が若干引いているのも気にせず、ロリコン叶は続ける。

「他の女の子たちは皆年上で自分だけがまだ幼いことを気にしてて、胸のデカい女子に相談してみたり、まだ恋愛っていうのもしっかり理解できてないからお兄ちゃんと一緒にいると…ここの所が痛いの…って赤面するイベントが欲しい!全エンディング、そしてスチルを集めたい!」
「お前…本当に気持ち悪い…」
「好きな子に一直線なことはいい事だろ?それがリアルか2次元かの違いだけで、俺はロリに真剣に恋してるんだって」
「頼むから、犯罪者にはならないでくれよ?」
「区別はしっかり付けてるから大丈夫だって、そもそもリアルロリに手を出すほど2次元に飢えてないから」

リアルではなく2次元で満足しているのならば、暫くニュースで叶の名前を見なくても良さそうだ。
その発言もどうかと思うが、信念を持って推しを全身全霊で推す姿は同じヲタクとして尊敬する。

「ならいいけど。そういえば、叶って妹属性以外に好みあるの?」
「その、妹属性とかロリなら何でも食うみたいな言い方止めてくれない?あんまり気にしたことはないけど推しキャラの系統は統一されてるかな…黒髪ショートでタレ目なキャラが多いかも」
「なるほどねぇ、せっかくハーレム作るなら色んな推しで固めたいタイプだな俺。固定された好みないから選り取りみどりで両手に花にしたい」
「それもめちゃくちゃ理解出来る!でもタイプが違うとそのうちこう…放置しちゃう子が現れそうでさ、性格的に。だったら好きだけで固めたいタイプだな俺は」
「ああー、叶はそうなりそうだ。ゲームも推しルート以外やらない派だもんな」

ギャルゲー、エロゲーに関しても、俺は全回収タイプ。叶は推しルートをとことんやり込むタイプだ。やり方は違うが、お互いそれを否定したりしない。ヲタクとして…俺たちの暗黙のルールは相手を否定しないことだった。色んな推し方がある、それでいいではないか。自分の固定概念を押し付ける必要はない、好きに楽しむべきだというのが2人の考えで、そこがマッチしているからこそ、俺たちは長く一緒に居れるのだと思う。
好きを否定する相手とは誰も仲良くは出来ない。相手の意見を聞いてこそ、自分の見解を広げたり新たな性癖を見つけられるのだ。
 事実、俺は叶のプレゼンのおかげでたくさんの好きを見つけてきた。逆に叶も今まで食わず嫌いしていたジャンルに挑戦し、俺よりも詳しくなったりしている。

「そうそう、俺の都合で集めたのに放置するなんて可哀想じゃん?あ、でもドMな子だったらそれはそれでいいかもしれない」
「なんだそのプレイ、お前そういうの好きだったっけ?」
「この前やったギャルゲーにさ、そういう子がいて…意外と良かった」
「なにそれ、気になるじゃん」
「今度貸すよ、やってみ?絶対円好きだから!」
「それもハーレム系?」
「そう、攻略キャラは5人かな?お姉さん系、おっとり系、生意気系、ドM…あとは、妹」
「あ、いいね。俺はむしろそのラインナップでハーレム作りたいかも」

求めるものが詰まっている、そんな予感がした。
疲れた時に慰めてくれるお姉さん、おっとりしているのに実はしっかりしている子、生意気設定は大好きだ。むしろ生意気キャラが嫌いな男はいるのか?やりすぎなのは頂けないが、女は少しくらいワガママなのが良いと思う割合は非常に多いのではないか。ドM…はよく分からないが、攻略は楽しそうだ。普段馴れ合うことが無いからこそ、完全攻略した時の達成感が気持ち良いことだろう。
妹キャラは鉄板、何をしても許される。可愛いは正義だ。

「バランスいいハーレムじゃん、死ぬまで楽しめそう」
「そんな余裕のある生活できればいいけどな」
「大丈夫だって、異世界転生といえば?」
「えー…っと、超強い武器とか?」
「それもそうだけど、元々最強バフ付きが鉄板じゃん。イケルイケル」
「適当だなぁ、別にいいんだけどさ」

むしろ前知識が暗すぎるせいで、適当に妄想しているくらいの方が精神衛生上良い気がする。
正直、叶の存在はかなりデカい。もし叶に出会っていなかったら、俺は転生を受け入れないだろう。もしくは猶予など貰わず、そのまま転生してさっさと第2の人生を終えていたと思う。

「そういえば、出会った女神様ってどんな感じ?ロリ?」
「ロリ…見た目はロリだったけど別に中身は普通だった気がする」
「へぇ、優しかった?」

優しかった…か?優しかったかもしれないがドジが目立ちすぎてそこの記憶が曖昧だ。
叶は好きそうなタイプ。

「優しかった…かも?あんまり記憶ない」
「いいなぁ、俺も会ってみたい!」
「転生したいってこと?死ぬよ?」
「円と同じ世界に行けるなら喜んで行く!転生しても親友になれるって凄くね?」
「俺も叶が来てくれるならめちゃくちゃ心強いけどね、生命力エグそう」
「だからさぁ、円は俺をなんだと思ってるの?」
「一家に一人、万能機能叶さん」
「やめろ、そのドラ〇もんみたいなやつ!」

叶は笑いながら最後のリンゴを手に取った。
取られた、と思いながら口に運ぶまでを眺めていると、叶は半分を噛み砕き、残った方を俺に渡してきた。

「え…なに?」
「食う?食べたそうだった」
「いらないよ…嫌だよその関節キス」

本当は食べたかったけど、関節キスはちょっと…男同士で何を言っているんだと言われるかもしれないが、男同士だから尚更だ。

「細かいなぁ、俺の愛を受け取れないのっ?」
「ほんとにいいから!食べろよ!」
「食っちゃうからねー」

しつこく目の前にリンゴをチラつかせてくる叶から視線を逸らし、残りの半分を咀嚼している音を聞きながら随分前から垂れ流しにしていたテレビを見た。
何気なしに付けていた番組だが、どうやら俺たち向けの番組だったらしく、今季の人気アニメについて特集されていた。もちろん1位は晴道先生原作のアニメ、ヲタクを名乗る芸能人たちがこのアニメの良さを熱く語っている。
叶もそれに気がついたようで視線はテレビに釘付けになっていた。

「やっぱ1位はこれだよな」
「だな、グッズとかエグい売ってるし、コンビニコラボも決まってるらしいよ」
「まじか、速攻凸しよ。朝待ち合わせしていこうよ、いつ?」
「えーと、月曜から」
「じゃあ、早めに迎えに来るわ昼飯コンビニで決まりね」
「了解」

芸能人たちのレビューが終わり、プロモーション映像や声優たちのインタビューが一通り流れたあと、突然見覚えのある顔が画面に映し出された。
晴道先生本人だ、あまり顔出しする先生ではないのだが今回の大ヒットを受け、インタビューに答えてくれたらしい。
インタビュアーが晴道先生に異世界転生について質問を投げかける。

「もし晴道先生が異世界転生をするなら、何をしたいと思いますか?」

晴道先生は画面を真っ直ぐに見て、即答した。

「僕は異世界転生をしても可能な限り執筆をすると思います。異世界を全力で楽しみながら、死ぬまで書くと思うんです、僕にはそれしかありませんから。1番大切なのは、どの人生においても自分が楽しむことだと。そう思っています」

かっこいい。素直にそう思った。自分が楽しむこと。現世であっても、異世界であっても。
俺はこの言葉を胸に刻み、今も、次の異世界人生も全力で楽しむことにする。


異世界転生まであと27日
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