R18【同性恋愛】リーマン物語if１『いじめてあげる』

１章『いじめてあげる』

13：デートしようよ

＊＊＊＊♡Side・塩田

────(株)原始人・休憩室にて

「塩田、何処か出かけよう」
「わかった」
「希望があれば聞いてやらないこともないぞ。俺様は寛大だからな」
　いつものように大げさなジェスチャーに尊大な態度で話しかけてくる皇を塩田は見上げる。その言葉を受け、塩田には行ってみたいところがあった。付き合って少し経つが、まだ行ったことがないところである。
「じゃあ、皇の家」
　素直に希望を告げたつもりだったのだが。
「えええええぇぇ」

──……ん？

　皇は”デートしたかったのに……”と呟いてしょぼんと俯いてしまった。
　そこで塩田は、先日の約束のことを反芻する。皇は急遽、社長の命によって家畜の世話を……もとい、接待ゴルフに行くことになってしまったのだった。
　あの後、塩田の家でのんびりイチャイチャし、満足したものと思っていたがどうやら違ったらしい。塩田はいつものように皇に意地悪をしようとして、同僚の電車でんまの言っていたことを思い出した。

『塩田さー。あんまり副社長に意地悪ばかりしてると、そのうち振られちゃうかもよ』
『は？　俺がか？』
『優しい人のほうが好きッ。とか言ってさ。副社長モテるんだしさ』
『あいつが？』
『塩田はほんと、周りに興味ないんだからなー』

──フられるのは、不本意だな。

「塩田？」
　塩田は徐に皇の腕を掴み引き寄せる。
　すると態勢を崩した彼がソファーに腰かけている塩田の元に倒れこんできた。結果、塩田の膝の上に向き合って座ることになってしまう。
　そんな彼を塩田は優しく抱きしめると、
「何処に行きたいんだ？」
と、問う。
「えっ」
「皇の行きたいところに連れてけよ」
「……うん」
　嬉しそうな顔をして抱きつく彼の背中をそっと撫でてやる。可愛いな、と思いながら。
「今日の塩田、優しい」
「いつも優しいだろ」
「いつもは意地悪だ」
　塩田から身を起こして、じいっと見つめる彼にちゅっと口づける。
「嫌？」
「好き……塩田が好き」
「じゃあ、今日は皇に家連れてけよ」
「きょ……今日⁈」
「なんだよ、何か見られて不味いモノでもあるのか？」
　ぐいっと腰を引き寄せ、
「浮気してるとか」
と冗談を言えば、
「俺は、塩田一筋だッ」
とムッとした。

「可愛い」
「証拠を見せてやろう、今夜来るがいい」
　皇は単純だ。そして、負けず嫌いでもある。だからこそ、扱いやすい。
「楽しみだな」
「言っておくけど、うちは何もないからな！」
　付き合い始めてから、彼は塩田の家に居ることが多くなった。意外と寂しがり屋なんだなと感じている。
「いいよ、見てみたいだけだから」
と塩田は微笑んだのだった。