R18【同性恋愛】『報われなくても、春は来る』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
8 / 51
0章──それが恋に変わる時

6・子供っぽい反撃【微R】

しおりを挟む
****♡Side・楠

「和馬、先生にあの態度は良くないとおもうぞ?」
「はいはい、正論」
 奏斗に先ほどの態度を指摘され、棒読みでそう返せば、
「何かあったのか?」
と心配そうに問われた。
 あれだけ嫌そうにしていた奏斗の態度が変わったのには訳がある。
 先生に振られたのはお前のせいだと言わんばかりに義姉に腹いせとして、奏斗の妹風花の集めている黒猫シリーズの超限定品をネットオークションで落札させ、それを献上したからだ。

 ウン万円もする小さなぬいぐるみを指し、
『義姉さん、これ買ってよ』
とノートパソコンのモニターを指さすと、彼女は綺麗な髪をかき上げ、
『和馬、こういうのが好きなの?』
と微笑む。
 モノを強請らない楠が自分に甘えるのが気に入ったらしい。
『友達にあげるんだ』
『ふうん』
 ウン万もするプレゼントを強請るなんてと怒り出すかと思いきや、
『いいわよ』
と簡単に了承してくれた。
 その代わり、夜の相手はたっぷりさせられたが。好きな人に振られた以上、もうどうなったところで変わりはしない。
『和馬、友達いたのね』
『相手には嫌われてるけどな』
『そう、じゃあこれを機会に仲良くなれるといいわね』
と言って彼女は楠の首筋に口づけた。

 後日商品が届き、
『妹さんにあげてよ』
と、奏斗に渡すと、
『え、これ絶版の激レアなやつだろ?』
と驚き、
『以前強請られたけど、何処にも売ってなくてさ』
と眉をよせ、
『ホントに貰っていいのかよ?』
とすごく嬉しそうな顔をした。
『義姉さんもコレクターだっていったろ?二個持ってるから一個くれるってさ。でも、俺集めてないし』
 姉がコレクターなのは真っ赤な嘘だが。あれ以来、奏斗は楠への警戒心が無くなった様だ。


「和馬」
「何もないって」

──先生はどうせ、俺のことなんて何とも思っちゃいないんだ。
 そんなんじゃないって否定しながらも、白石のことがお気に入り。
 だったら、白石を奪ってやる。

「お前ってさ、自分の中にため込みそうだから心配だよ」
「白石は、優しいね」
「茶化すなよ」
 ため息をつき、呆れ顔の奏斗。
「まあ、言っても無駄なのも分かってるが」

──白石が俺と違っていい奴なのも知ってる。
 先生だって、素直で可愛い奴のほうが、扱いやすいだろう。
 俺みたいに捻くれてる奴なんて……。

「そうだ、風花が帰りにスイーツ食べたいって言うんだけど、和馬も来る?」
「行く」
「正門で待ってるみたいだから」
「じゃあ、急ごう」
「ん」
 利用するつもりで近づいた楠であったが、正直なところ白石兄妹の傍にいると癒されたし、爽一のことを考えずに済んだ。だが楠は気づいていなかった、自分の作戦が十分成功していることに。

**

翌日────。

「楠」
「ん?」
 クラスメイトに声をかけられ、教室を出て行こうとしていた楠は立ち止まる。
 クラスメイトは、
「白石の奴、またコクられてるみたいだぞ」
と、中庭を指しながら。

──何故、俺に報告する?

「白石って、なんで誰とも付き合わないん?」
「知らん」
 そんなこと知ってどうしたいんだと、思っていると、
「実は白石って、楠のことが好きだったりして」
と、ありがちな冷やかしが始まる。
 そんなわけあるか、とため息をついていると、
「そういや、白石って楠のことだけ名前で呼ぶよな?」
と言われる。
「友達だからな」

──バーカ。あれは当てつけで呼ばせてるだけだ。

「え? 白石、俺のこと名前で呼ばねーぞ?」
「友達じゃないんだろ」
「な!」
 ショックだったのだろうか、相手は言葉を失った。
 阿保らしいと思いながら、そのまま教室を出ようとすると、
「じゃあ、なんで楠は白石のこと名前で呼ばないんだよ」
と反撃を受ける。
「俺は恋人以外、名前で呼ばない主義」
と、手をひらひら振って今度こそ教室を後にする。

──しっかし、白石はなんであんなにモテるんだ?
 どーみても、ただの世渡り下手な……。

「おわっ……」
 中庭で女子に告白を受けているだろう奏斗を救出に行こうとしていた楠は、教科準備室のある廊下で突然、腕を掴まれ中に引き込まれた。
「え? ……先生」
 楠を引き込んだのは、爽一。先日、自分を振った教師。昨日の態度が気に入らなかったのだろうか。じっと彼はこちらを睨みつけている。
「楠」
「なんです?」
「白石と……付き合ってるのか?」
「は?」

──また白石かよ。
 なんであんたの頭の中には、白石のことしかないんだよ。

「白石、白石って。これ以上俺を傷つけて楽しいですか?」
 腕を振り払いドアに背を預けズルズルと座り込む、楠。
 そりゃ当て付けで白石と仲良くしているのは、自分だ。だが、原因を作ったのはあんたじゃないかよと、心の中で悪態をつくと顔を覆う。
「じゃあ、なんで」
「?」
「白石は、お前のこと名前で呼ぶんだよ」
 爽一は、膝をつくと楠の腕を掴む、こっちを見ろというように。

────やきもち?
 先生は、下の名前で呼んでもらうわけにはいかないもんな。
 ざまーみろ。

「先生だって、呼びたきゃ勝手に……」
「和馬」
「は?」
 驚く楠。
 彼が腕を伸ばし、部屋のカギをかけるのが分かった。
「ちょっと待て、呼ぶ相手まちが……」
「間違ってない」
「先生?」

──なんなんだよ、わけわかんねーよ。

「せん……やめっ」
 楠は床に押さえつけられ、口づけられた。
「和馬」
「いやだ……やめろ……んんッ」
 上から全体重をかけられては、身動き取れない。
 悔しさに涙を溢しながらも、彼からの口づけを受け止めるしかなかった。前回とは比べ物にならない、官能的で執拗な口づけ。

──なんでこんな嫌がらせするんだよ。

「嫌がってなんかないくせに」
「先生? ……っ……どこ触って」
 制服のズボンは柔らかい生地だ。その上から楠自身を温かな手で撫で上げる。
「しっかり反応してるくせに」
「なんでこんなことするんだよ」
 楠が唇を歪め、彼を見つめると、
「ムカつくんだよ!」
と怒鳴られる。
 さすがの楠も普段は温厚な爽一に怒鳴られ、身を縮めた。その隙にズボンのジッパーがおろされ、下着の中に手が滑りこんでくる。
「いや……」
 楠はブンブンと首を横に振り、両手で彼の手首を掴む。
 すると、彼は楠の耳元に唇を寄せ、
「和馬……大人しくしてろ」
と囁いたのだった。


**

「和馬?ど うしたんだ?」
「……白石」
 楠が屋上への階段のところで膝を抱え座っていると、
「授業さぼるの珍しいから探したよ」
と、奏斗。
 隣に座り、購買で購入したパンを一つ取り出すと、楠に差し出す。

──因果応報だ。
 俺が、白石にちょっかい出したから、先生はあんなに怒って。

『純情ぶるなよ、義姉さんとはもっと凄いことしてるくせに』
 言われたことを思い出すと辛い。
 好きな人から辱めを受け、しかも罵倒されるなんて。
『手だけじゃ、嫌なら口でしてやるよ』
『先生、嫌だ……止めて』
『和馬』
『お願い……先生』
『止めねえよ。止めてなんてやらねえ』
 爽一は、どんなに懇願しても楠がくまで止めなかった。

「和馬。顔色悪い」
「平気だ」
 奏斗は優しい。
 彼には邪心が全くない。自分をホントに友達だと思って優しくしてくれているだけなのだ。自分が蒔いた種ではあるが、こんなところを爽一に見られでもしたら、また怒らせるかもしれない。そう思うと、気が気ではなかった。
「保健室が嫌なら、岸倉先生のところ行こうよ」
「え?」
「あそこなら、ソファーあるし、休ませてくれる」
「いや、でも……」
 断ろうとする楠の腕を彼は掴んだ。

──いや。
 厚意は嬉しいが、白石といるとまた怒らせるんじゃ?

「白石、いいって」
「そんなに顔色悪いのに、良いわけないだろ」
 なんでそんなに強引なんだと思いながら、引きずられるようにして気づけばまたここにいた。
 そう、今一番、会いたくない人の居る場所に。
「岸倉先生!」

──ああ、呼ばなくていいのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...