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二章:哉太編
10・哉太の決断
しおりを挟む────もう、待っても無駄なのかもしれない。
哉太は自分が犯してきた間違いに気づき、玄関先であるにも関わらず頭を抱えた。思い出は美しく残るもの。
いや、違う。自分が犯した間違いに蓋をして、良いことだけを思い出にしたのだ。
────全部、彼女のせいにして。
振り向かないのは、彼女の恋人のせいにして。
それでも、謝罪したいという気持ちだけは変わらなかった。
自己満足かもしれない。
けれどいつまでも終われないまま、ここに立ち止まっているわけにもいかないのだ。
たが、どうやって会うと言うのか。
知っていた住所は以前のもの。
自分は探偵ではない、捜査などできるはずがない。
彼女がサークルに来なくなった当時の記憶を辿る。
───確か、あれは……。
喧嘩をし、突然連絡が取れなくなった。
番号は変わっていなかったようだから、拒否されたのだと思う。
それでも自分はきっと仲直りできるだろう、と安易に考えていたのだ。まだ、サークルという繋がりがあると。
彼女がサークルに来ると信じていた。
除籍の連絡が来ることがないまま二週間が経ち、哉太もさすがに変だと思い始める。名簿に記載された住所を頼りに彼女の家に出向いたが、引っ越した後だった。
────除籍をしないまま、今日まで経つ。
彼女は、連絡をしなくとも放っておけば除籍扱いとなると考えたのか。
連絡すらしたくなかったのか。
それとも、もう関わりたくないという意味なのか分からずに、哉太は彼女の席について放置しているのだ。
どのみち、この考え方では彼女はもう来ないという結論しか出ない。だが自分は彼女が、いつか来るつもりで除籍の連絡をしなかったと信じたい。
「ほんとバカ」
希望的観測。八方塞がりなのに。
諦めの悪い自分から脱したいと思っているはずなのに。このままでは埒が明かない。
────最後にもう一度だけ、あの場所へ。
それはたった一度デートをしたい思い出の場所。
あの場所で始まり、あの場所で終わったのだ。
終わる前へ、始まる前へ。
もう一度あの場所へ立ち、自分が過ちを犯した分岐点へ。
もう時間は戻らないけれど、最後にもう一度だけ。
自分が本当はどうしたかったのか、どういう結末を望んでいたのか、始まりの場所で自分自身と向き合ってサヨナラしよう。
まだ、未練はある。
しかしその未練が彼女に対してなのか、思い出に対してなのかわからない。それを確かめに行くのだ。
哉太は自分がどこへ向かうのか、何処へ向かうべきなのかやっと指針が見え立ち上がる。しかし、思ったよりも長い時間、変な格好で座り込んでいたらしく、両足が痺れており、玄関の上がりに突っ伏した。
「痛《い》って」
────ほんと、決まらないな。俺。
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