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最終章:佳奈と哉太編
エピローグ
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────あれから半年が経った。
兄、和宏はとても几帳面で規則正しいが、それを他人に求めることはない。そんなこともあってか、とても快適な毎日を過ごしていると思う。
なんでも出来るし、容姿も良いのに何故モテないのだろうと不思議に思ったこともあるが、この人に足りないのはコミュニケーション能力だということに気づく。
かといって、モテたいと思っているわけでもなさそうので、教えてあげる気はない。
毎日一緒に居て、自分たちが本当の兄弟ではないことも知ってるし、時間もたくさんあったのにまだ好きだと言えないでいる。
自分はこの関係が変わるのが嫌なのだろうか?
──でもまたお兄ちゃんに彼女が出来たら嫌だしなあ。
そんなことを言えばきっと、
『優人じゃあるまいし』
と笑われるのだろう。
弟の優人は尋常じゃないくらいモテる。
そのため、しょっしゅう彼女から抗議されているらしい。
今に始まったことではないが、それもどうかと思う。
──どこが良いのかしらね?
顔は良いよね。母似だし。
愛嬌はあるし、コミュニケーション能力はあるし。
それから、笑うと世界を魅了するとか兄が言っているくらい、笑顔が爽やかで素敵だし。
あとは賢くて気遣いが出来て……老若男女問わず誰にでも優しい。
甘えん坊なところはあるけれど、可愛いしね。
あらやだ! 良いところしかないじゃない。
わたし、なんで優人には恋しなかったのかしら?
佳奈は不思議に思いながら、優人と彼の友人の会話を思い出す。
『おまえ、またフラグ立てやがったな! なに、連絡先なんて貰っているんだよ。彼女にキレられるから止めろって言っているじゃないか』
『人脈大事。貰えるものは貰っておかないと』
と優人。
『そういうところだぞ!』
『なにが?』
──ああ、うん。
彼氏としては、ちょっとねえ。
「佳奈、そろそろ行くぞ」
「あ、うん」
今日は二人で映画に行くのだ。
佳奈は姿見の前でくるりと回転する。
ふわりと白のワンピースの裾が舞った。
兄に買ってもらったお気に入りのワンピース。これを着て、今日こそは告白しようと決めていた。フラれたらその時だ。
玄関まで行くと、兄はいつもと大して変わり映えのしないカッコをしていた。黒のスラックスに白のワイシャツ。ネクタイにカーディガン。
あまりラフなカッコをしないのは以前弟に、
『何を着ても似合わない』
と言われたかららしい。
表へ出ると兄が手を差し出す。
駅まではすぐそこだ。
佳奈が躊躇っていると、
「デートなんだろ?」
と言われ、ドキリとした。
「え、えっとあの……その」
「何今更、照れてるんだ?」
不思議そうにする兄の手を握る佳奈。
なんだか街がいつもと違って見えた。
「あれから半年が経つんだな」
佳奈はぼんやりと空を見上げる兄を見つめる。
「どうかしたのか?」
何も言わない佳奈に、彼は視線を向けた。
幼いころから一緒に居た兄。不器用な優しさがいつでも温かかった。
兄に彼女が出来た時は一人泣いて、翌日弟にビックリされれたものだ。
「大好きだからって、そんなに見つめられると困るんだが」
「え?!」
慌てる佳奈に彼はフッと笑う。
そして、
「俺と恋人になるか?」
と彼は佳奈に問いかけたのだった。
幸せの鐘が、すぐ傍で聴こえていた──。
兄、和宏はとても几帳面で規則正しいが、それを他人に求めることはない。そんなこともあってか、とても快適な毎日を過ごしていると思う。
なんでも出来るし、容姿も良いのに何故モテないのだろうと不思議に思ったこともあるが、この人に足りないのはコミュニケーション能力だということに気づく。
かといって、モテたいと思っているわけでもなさそうので、教えてあげる気はない。
毎日一緒に居て、自分たちが本当の兄弟ではないことも知ってるし、時間もたくさんあったのにまだ好きだと言えないでいる。
自分はこの関係が変わるのが嫌なのだろうか?
──でもまたお兄ちゃんに彼女が出来たら嫌だしなあ。
そんなことを言えばきっと、
『優人じゃあるまいし』
と笑われるのだろう。
弟の優人は尋常じゃないくらいモテる。
そのため、しょっしゅう彼女から抗議されているらしい。
今に始まったことではないが、それもどうかと思う。
──どこが良いのかしらね?
顔は良いよね。母似だし。
愛嬌はあるし、コミュニケーション能力はあるし。
それから、笑うと世界を魅了するとか兄が言っているくらい、笑顔が爽やかで素敵だし。
あとは賢くて気遣いが出来て……老若男女問わず誰にでも優しい。
甘えん坊なところはあるけれど、可愛いしね。
あらやだ! 良いところしかないじゃない。
わたし、なんで優人には恋しなかったのかしら?
佳奈は不思議に思いながら、優人と彼の友人の会話を思い出す。
『おまえ、またフラグ立てやがったな! なに、連絡先なんて貰っているんだよ。彼女にキレられるから止めろって言っているじゃないか』
『人脈大事。貰えるものは貰っておかないと』
と優人。
『そういうところだぞ!』
『なにが?』
──ああ、うん。
彼氏としては、ちょっとねえ。
「佳奈、そろそろ行くぞ」
「あ、うん」
今日は二人で映画に行くのだ。
佳奈は姿見の前でくるりと回転する。
ふわりと白のワンピースの裾が舞った。
兄に買ってもらったお気に入りのワンピース。これを着て、今日こそは告白しようと決めていた。フラれたらその時だ。
玄関まで行くと、兄はいつもと大して変わり映えのしないカッコをしていた。黒のスラックスに白のワイシャツ。ネクタイにカーディガン。
あまりラフなカッコをしないのは以前弟に、
『何を着ても似合わない』
と言われたかららしい。
表へ出ると兄が手を差し出す。
駅まではすぐそこだ。
佳奈が躊躇っていると、
「デートなんだろ?」
と言われ、ドキリとした。
「え、えっとあの……その」
「何今更、照れてるんだ?」
不思議そうにする兄の手を握る佳奈。
なんだか街がいつもと違って見えた。
「あれから半年が経つんだな」
佳奈はぼんやりと空を見上げる兄を見つめる。
「どうかしたのか?」
何も言わない佳奈に、彼は視線を向けた。
幼いころから一緒に居た兄。不器用な優しさがいつでも温かかった。
兄に彼女が出来た時は一人泣いて、翌日弟にビックリされれたものだ。
「大好きだからって、そんなに見つめられると困るんだが」
「え?!」
慌てる佳奈に彼はフッと笑う。
そして、
「俺と恋人になるか?」
と彼は佳奈に問いかけたのだった。
幸せの鐘が、すぐ傍で聴こえていた──。
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