33 / 65
第33話
しおりを挟む
「どうして俺が魔族の国に?」
「これは過去にもあった事なんだが、龍人化スキルを持つ者を魔王は嫌っている」
「龍人化スキルは魔王に勝つ事ができるからですか?」
「いや、おそらく違う。実は昔にも龍人化スキルを解放した冒険者がいた。その者の名はレイーサ。別名、龍殺し。ドラゴンばかり倒していたSランク冒険者の女剣士だ」
「そんな人がいたというのは聞いた事がないですね」
「この世界から消えた理由が理由だからな」
「どういう理由なんですか?」
「魔王に殺された」
ギルドマスターは苦々しそうな顔で言う。
「レイーサの別名である龍殺しの意味はそのままだ。ひたすらにドラゴンを狩り続けた。ああ、ダンジョンじゃないぞ?ドラゴン討伐の依頼ばかり受けていたんだ。それで倒したドラゴンの返り血を浴び続けた。それで龍人化というスキルが発現したらしい」
そんな方法でも龍人化が解放できるようになるのか。よほど沢山のドラゴンを倒したんだろうな。
「レイーサも魔王に呼ばれたんですか?」
「そうだ。そしてレイーサは魔王と闘うことを選んだ。みすみす殺されるなんて嫌だろうからな」
「そして力及ばず殺された、と」
「ああ。ご丁寧に遺体が送られてきたらしいからな。欠損はあったものの、本人だと確定できる証拠はあったようだ」
「そうなんですか…それじゃあ俺も魔王の元に行けば闘う事になるんですね」
「たぶんな。どうする?」
「俺が行かない場合はどうなるんですか?」
「人族に戦争を仕掛けてくるらしい。タロウやゼルス、キーサがいれば勝てるかもしれないが、被害を0にはできないだろう」
ギルドマスターの言葉に俺は頷く。
「この問題を穏便に解決するには魔王が呼んでいるお前を魔族の元に送った方が良いんだ」
ギルドマスターは辛そうに言う。魔王の言葉通りに行動するのが嫌なんだろう。
「そんな!どうにかできないんですか?!」
その場にいるルミンが声を荒げる。そりゃあ、そうだろうな。彼氏が魔王に殺されに行くのだから。逆の立場なら俺だって反対する。
「どうにもならん。これは王様からの命令でもある。簡単に断る事はできん」
「どうして…タロウ、一緒に逃げる?」
「逃げ場所なんてないだろ。それに俺が魔王に殺されると思うか?」
「思わないけど」
「だったら良いじゃないか。たまには強い敵と闘ってみたかったんだ。それにレイーサの敵討ちにもなるしな」
「そう言ってくれると助かる」
「いつまでに行けば良いんですか?」
「期限は半年以内という事だ」
「それなら、あと5ヶ月は自分を鍛えられますね」
「そうだな。強くなっておくに越した事はない」
魔王のレベルが分かれば対策もできるんだけどな。まあ、力量の分からない相手と闘うのも悪くないか。弱者との闘いは飽きていたし。
「それから、タロウの実力を信じていないわけではないが、ゼルスとキーサも一緒に行ってもらおう」
「2人に連絡が取れるんですか?」
「とれない。ただ姿を見せたら連れてくるようにギルド職員に言ってある。それだけじゃない。王国の兵士も協力してくれる」
「それは…すごいですね」
「魔王が相手だからな」
「魔王と交渉ができれば普通に帰ってきたいんですけど、交渉ができない状況になったら、魔王は殺してしまっても良いですか?」
俺の言葉にギルドマスターが驚く。
「そんな事は考えた事もないな。……そうだな、殺してしまっても構わない。俺が生まれる前から続いてきた人族と魔族の均衡だが…これを機会に崩すべきだろう。いつまでも魔族に怯えてはいられないからな」
「分かりました。それでは、その時に備えて鍛錬をしておきます」
「うむ。あぁ、魔王の件は誰にも言うなよ?この事を知っているのはごく一部の人間だけなんだ」
ギルドマスターの言葉に頷き、俺はルミンと一緒にギルドマスターの部屋から出て、ロビーに行った。
「大変な事になったね…」
「ああ」
「その割には楽しそう」
「強敵と闘うのは久し振りだからな!」
「そうなの…タロウは負けないと思うけど、やっぱり心配…」
「そこは大丈夫だ。俺1人でも不安はないけど、ゼルスとキーサが一緒に行く可能性が高い。人族の中では現在世界最強の俺達3人が挑むんだぞ?」
「…確かに、そう考えたら不安はないかも」
「そうだろ?」
それからも俺は不安がるルミンを安心させて、街の外の草原に向かった。
「本当ならダンジョンでレベル上げをしたいところだけど、期間を間違えて俺が魔王に会いに行かなかったら戦争になるからな」
だから、鍛練すると言ったけど、する時間がない。正確な時間が分からないからだ。
だから取り敢えず、気の強化をおこなう事にした。今でも気は強い方だけど、魔王はどれだけの強さなのか分からない。できる事はしておかなければな。
元いた世界では気が淀んでいる場所が多かった。人が多いし、排気ガスなどもある。空中を電波も行き交っている。そういったものが少ないほど、気の質が良い。この世界には人が、そこまで多くないし、自然が多い。排気ガスや電波などもない。だからこの世界は素晴らしい…なんて安直すぎるかな。
「あれ?師匠?!」
俺が気の強化を始めた時、ソフィアが傍にやって来た。
「ソフィア、久し振りだけど、また強くなっているな」
ソフィアの纏う気配が前回会った時より強くなっている。レベルも295に上がっていた。
「ありがとうございます!師匠も前より強くなってますね!」
「まあな。弟子に追い抜かれないように必死なんだ」
「私以外に、お弟子さんを持ったんですか?」
「ん?」
「追い抜いてきそうな弟子がいるんですよね?」
「いや、弟子はお前だけだ。お前に追い抜かれないように、って話だ」
「私が師匠を追い抜くなんて、あり得ないですよ!…追いつきますけどね!」
よし、いい言葉だ。最初から俺に追いつけないなんて考えていたら、成長なんてしないからな。
「師匠はどうして、ここに来たんですか?」
「気の強化をおこなうためだ。この世界は気の質が良いからな」
「分かります!それで私も気を強化するために、ここで鍛錬してるんです」
「そうだったのか。俺は今日からだ。何ヶ月かはすると思う」
「そうなんですか!師匠と一緒ですね!」
「そうだな」
それから俺とソフィアは気の強化をおこなった。気を強化するには体力と睡眠時間が大きく関係してくる。不眠不休で強化をしてもマイナスになりかねないから、夜はきちんと宿で寝るようにした。
そして3ヶ月近くの時が流れた。俺はギルドに行き、ギルドマスターの部屋に案内される。中に入ると、そこにはギルドマスターの他に、ゼルスとキーサがいた。
「魔王の話は聞いたわ。大変な事になってるわね」
「タロウ、聞いたぜ。龍人化っていう強そうなスキルを手に入れたんだってな!今度、見せてくれよ!」
「今はそれどころじゃないでしょ!」
キーサに割と本気で怒られている。
「キーサが声を荒げるなんて珍しいな」
「私のいた世界にも魔王は存在したの。人間と頻繁に戦争していたわ。魔族も殺したけど、かなりの人が殺されたの」
「そうだったのか。その魔王はどうしたんだ?」
「私が率いた魔法使いの軍勢で倒したわ。大変な戦いだったから、今回の闘いも油断はできないと思うの」
キーサにそんな過去があったのか。それにしてもキーサが率いる軍勢か…恐ろしいな。
「ゼルスとキーサは協力してくれるのか?」
「当たり前じゃない」
「強い奴との闘いは楽しみだからな!タロウもそうだろ?」
「あ、ああ。まあな」
キーサの話を聞いた後に、俺も楽しみだ!、とは言えないな。ゼルスはその辺を気にしないんだろうか。
「俺が龍人化スキルを解放してしまったから、こんな事になってしまったんだ。こんな事態になってしまって、すまない」
「何言ってんだよ!お前の責任じゃないだろ」
「そうよ。気にしなくて良いわ」
「…ありがとう」
2人は俺に責任がないと言ってくれる。でも俺が何も考えずに龍人化スキルを解放した事がきっかけなんだよな。だから絶対に魔王は倒す!
「よし!それじゃあ行くか!」
俺が言うとゼルスとキーサが頷く。
「それじゃあ行ってきます」
「頼んだぞ。戦争もしたくないし、お前達を失いたくない。無事に帰ってくるのを待っている」
ギルドマスターはそんな事を言ってくれる。
そして部屋を出ると、そこにはルミンがいた。
「ルミン、行ってくるよ」
「タロウ…絶対に帰ってきてね?」
「勿論だ」
「心配無用だ!俺達も一緒だからな!」
「ゼルス、ちょっとこっちに来て」
「え?なんで?」
キーサにつれられてゼルスがギルドのロビーの方に歩いて行く。キーサは空気を読んだんだろうけど、ゼルスってあんなに空気を読まない人だったっけ?まあ、そこまでゼルスを知ってるわけでもないしな。
「ルミン、前にも言ったと思うけど、俺は強い。それに加えてゼルスとキーサが一緒に来てくれる。これで負ける方が難しいだろ?」
「…うん」
「心配するのは仕方ないとしても、できれば笑顔で見送ってほしいな」
俺の言葉にルミンは笑顔になる。
「分かった。無事に帰って来てね?」
「ああ。行ってくる」
そう挨拶をしてロビーの方に歩いて行く。そこにはゼルスとキーサが待ってくれていた。
「話は済んだのか?」
「ああ。でも堅苦しい話はしなかったぞ。単なる討伐依頼だからな」
「ふふふ、すごい余裕ね。でも緊張しない方が良いから、今の状態が良いわね」
「よし!それじゃあ行くか!」
ゼルスの掛け声で俺達は魔王の居る城に向かった。
「これは過去にもあった事なんだが、龍人化スキルを持つ者を魔王は嫌っている」
「龍人化スキルは魔王に勝つ事ができるからですか?」
「いや、おそらく違う。実は昔にも龍人化スキルを解放した冒険者がいた。その者の名はレイーサ。別名、龍殺し。ドラゴンばかり倒していたSランク冒険者の女剣士だ」
「そんな人がいたというのは聞いた事がないですね」
「この世界から消えた理由が理由だからな」
「どういう理由なんですか?」
「魔王に殺された」
ギルドマスターは苦々しそうな顔で言う。
「レイーサの別名である龍殺しの意味はそのままだ。ひたすらにドラゴンを狩り続けた。ああ、ダンジョンじゃないぞ?ドラゴン討伐の依頼ばかり受けていたんだ。それで倒したドラゴンの返り血を浴び続けた。それで龍人化というスキルが発現したらしい」
そんな方法でも龍人化が解放できるようになるのか。よほど沢山のドラゴンを倒したんだろうな。
「レイーサも魔王に呼ばれたんですか?」
「そうだ。そしてレイーサは魔王と闘うことを選んだ。みすみす殺されるなんて嫌だろうからな」
「そして力及ばず殺された、と」
「ああ。ご丁寧に遺体が送られてきたらしいからな。欠損はあったものの、本人だと確定できる証拠はあったようだ」
「そうなんですか…それじゃあ俺も魔王の元に行けば闘う事になるんですね」
「たぶんな。どうする?」
「俺が行かない場合はどうなるんですか?」
「人族に戦争を仕掛けてくるらしい。タロウやゼルス、キーサがいれば勝てるかもしれないが、被害を0にはできないだろう」
ギルドマスターの言葉に俺は頷く。
「この問題を穏便に解決するには魔王が呼んでいるお前を魔族の元に送った方が良いんだ」
ギルドマスターは辛そうに言う。魔王の言葉通りに行動するのが嫌なんだろう。
「そんな!どうにかできないんですか?!」
その場にいるルミンが声を荒げる。そりゃあ、そうだろうな。彼氏が魔王に殺されに行くのだから。逆の立場なら俺だって反対する。
「どうにもならん。これは王様からの命令でもある。簡単に断る事はできん」
「どうして…タロウ、一緒に逃げる?」
「逃げ場所なんてないだろ。それに俺が魔王に殺されると思うか?」
「思わないけど」
「だったら良いじゃないか。たまには強い敵と闘ってみたかったんだ。それにレイーサの敵討ちにもなるしな」
「そう言ってくれると助かる」
「いつまでに行けば良いんですか?」
「期限は半年以内という事だ」
「それなら、あと5ヶ月は自分を鍛えられますね」
「そうだな。強くなっておくに越した事はない」
魔王のレベルが分かれば対策もできるんだけどな。まあ、力量の分からない相手と闘うのも悪くないか。弱者との闘いは飽きていたし。
「それから、タロウの実力を信じていないわけではないが、ゼルスとキーサも一緒に行ってもらおう」
「2人に連絡が取れるんですか?」
「とれない。ただ姿を見せたら連れてくるようにギルド職員に言ってある。それだけじゃない。王国の兵士も協力してくれる」
「それは…すごいですね」
「魔王が相手だからな」
「魔王と交渉ができれば普通に帰ってきたいんですけど、交渉ができない状況になったら、魔王は殺してしまっても良いですか?」
俺の言葉にギルドマスターが驚く。
「そんな事は考えた事もないな。……そうだな、殺してしまっても構わない。俺が生まれる前から続いてきた人族と魔族の均衡だが…これを機会に崩すべきだろう。いつまでも魔族に怯えてはいられないからな」
「分かりました。それでは、その時に備えて鍛錬をしておきます」
「うむ。あぁ、魔王の件は誰にも言うなよ?この事を知っているのはごく一部の人間だけなんだ」
ギルドマスターの言葉に頷き、俺はルミンと一緒にギルドマスターの部屋から出て、ロビーに行った。
「大変な事になったね…」
「ああ」
「その割には楽しそう」
「強敵と闘うのは久し振りだからな!」
「そうなの…タロウは負けないと思うけど、やっぱり心配…」
「そこは大丈夫だ。俺1人でも不安はないけど、ゼルスとキーサが一緒に行く可能性が高い。人族の中では現在世界最強の俺達3人が挑むんだぞ?」
「…確かに、そう考えたら不安はないかも」
「そうだろ?」
それからも俺は不安がるルミンを安心させて、街の外の草原に向かった。
「本当ならダンジョンでレベル上げをしたいところだけど、期間を間違えて俺が魔王に会いに行かなかったら戦争になるからな」
だから、鍛練すると言ったけど、する時間がない。正確な時間が分からないからだ。
だから取り敢えず、気の強化をおこなう事にした。今でも気は強い方だけど、魔王はどれだけの強さなのか分からない。できる事はしておかなければな。
元いた世界では気が淀んでいる場所が多かった。人が多いし、排気ガスなどもある。空中を電波も行き交っている。そういったものが少ないほど、気の質が良い。この世界には人が、そこまで多くないし、自然が多い。排気ガスや電波などもない。だからこの世界は素晴らしい…なんて安直すぎるかな。
「あれ?師匠?!」
俺が気の強化を始めた時、ソフィアが傍にやって来た。
「ソフィア、久し振りだけど、また強くなっているな」
ソフィアの纏う気配が前回会った時より強くなっている。レベルも295に上がっていた。
「ありがとうございます!師匠も前より強くなってますね!」
「まあな。弟子に追い抜かれないように必死なんだ」
「私以外に、お弟子さんを持ったんですか?」
「ん?」
「追い抜いてきそうな弟子がいるんですよね?」
「いや、弟子はお前だけだ。お前に追い抜かれないように、って話だ」
「私が師匠を追い抜くなんて、あり得ないですよ!…追いつきますけどね!」
よし、いい言葉だ。最初から俺に追いつけないなんて考えていたら、成長なんてしないからな。
「師匠はどうして、ここに来たんですか?」
「気の強化をおこなうためだ。この世界は気の質が良いからな」
「分かります!それで私も気を強化するために、ここで鍛錬してるんです」
「そうだったのか。俺は今日からだ。何ヶ月かはすると思う」
「そうなんですか!師匠と一緒ですね!」
「そうだな」
それから俺とソフィアは気の強化をおこなった。気を強化するには体力と睡眠時間が大きく関係してくる。不眠不休で強化をしてもマイナスになりかねないから、夜はきちんと宿で寝るようにした。
そして3ヶ月近くの時が流れた。俺はギルドに行き、ギルドマスターの部屋に案内される。中に入ると、そこにはギルドマスターの他に、ゼルスとキーサがいた。
「魔王の話は聞いたわ。大変な事になってるわね」
「タロウ、聞いたぜ。龍人化っていう強そうなスキルを手に入れたんだってな!今度、見せてくれよ!」
「今はそれどころじゃないでしょ!」
キーサに割と本気で怒られている。
「キーサが声を荒げるなんて珍しいな」
「私のいた世界にも魔王は存在したの。人間と頻繁に戦争していたわ。魔族も殺したけど、かなりの人が殺されたの」
「そうだったのか。その魔王はどうしたんだ?」
「私が率いた魔法使いの軍勢で倒したわ。大変な戦いだったから、今回の闘いも油断はできないと思うの」
キーサにそんな過去があったのか。それにしてもキーサが率いる軍勢か…恐ろしいな。
「ゼルスとキーサは協力してくれるのか?」
「当たり前じゃない」
「強い奴との闘いは楽しみだからな!タロウもそうだろ?」
「あ、ああ。まあな」
キーサの話を聞いた後に、俺も楽しみだ!、とは言えないな。ゼルスはその辺を気にしないんだろうか。
「俺が龍人化スキルを解放してしまったから、こんな事になってしまったんだ。こんな事態になってしまって、すまない」
「何言ってんだよ!お前の責任じゃないだろ」
「そうよ。気にしなくて良いわ」
「…ありがとう」
2人は俺に責任がないと言ってくれる。でも俺が何も考えずに龍人化スキルを解放した事がきっかけなんだよな。だから絶対に魔王は倒す!
「よし!それじゃあ行くか!」
俺が言うとゼルスとキーサが頷く。
「それじゃあ行ってきます」
「頼んだぞ。戦争もしたくないし、お前達を失いたくない。無事に帰ってくるのを待っている」
ギルドマスターはそんな事を言ってくれる。
そして部屋を出ると、そこにはルミンがいた。
「ルミン、行ってくるよ」
「タロウ…絶対に帰ってきてね?」
「勿論だ」
「心配無用だ!俺達も一緒だからな!」
「ゼルス、ちょっとこっちに来て」
「え?なんで?」
キーサにつれられてゼルスがギルドのロビーの方に歩いて行く。キーサは空気を読んだんだろうけど、ゼルスってあんなに空気を読まない人だったっけ?まあ、そこまでゼルスを知ってるわけでもないしな。
「ルミン、前にも言ったと思うけど、俺は強い。それに加えてゼルスとキーサが一緒に来てくれる。これで負ける方が難しいだろ?」
「…うん」
「心配するのは仕方ないとしても、できれば笑顔で見送ってほしいな」
俺の言葉にルミンは笑顔になる。
「分かった。無事に帰って来てね?」
「ああ。行ってくる」
そう挨拶をしてロビーの方に歩いて行く。そこにはゼルスとキーサが待ってくれていた。
「話は済んだのか?」
「ああ。でも堅苦しい話はしなかったぞ。単なる討伐依頼だからな」
「ふふふ、すごい余裕ね。でも緊張しない方が良いから、今の状態が良いわね」
「よし!それじゃあ行くか!」
ゼルスの掛け声で俺達は魔王の居る城に向かった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる