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3章 レベル上げの苦難

21話 レベル上げ2

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 俺達は夕暮れの中その魔物を見上げていた。シロネもこんなに大きいとは知らんかったようなアホ顔で俺と一緒に呆けていた。

 目の前にいるそれは大ハマグリだ。丸みを帯びた三角形の貝殻をしている2枚貝で、中には身がぎっしりと詰まっており、ネバっとした液体が垂れている。貝殻には放射状の茶色い模様が広がっており大きいのでより鮮やかに見える。



 シロネがそのハマグリに手を付き呼びかける。



「おーい起きとるかの?」



 大ハマグリは無反応。ていうかまだ俺は魔物だという認識に至っていない、だって貝じゃん……まだ美味しそうの方が勝っているくらいだ。





 すると、急に貝殻が開き中の身の奴が喋りだす。





「これはこれはシロネ殿ご無沙汰しております」



 大ハマグリはすごい丁寧な口調でどこか人間味のある喋り方だった。ていうかまず魔物が喋ることが不思議なんだが……





 OOPARTSオンラインの時のハマグリなんて釣りしてたら付属で釣れるアイテムで基本料理にしか使われてなかった奴だぞ。



 それが、こんなにでかくなるとは……こういうOOPARTSオンラインとは違うところもあって面白いな。





「これからはこの大ハマグリのマグリに特訓を手伝ってもらうのじゃ。こやつは昔冒険者



だった頃に出会って仲良くなってのそれからちょくちょくこうやって遊びにきとるのじゃ。



こやつはこの砂漠でしか召喚出来んからの最近は行けてなかったんじゃが……よかったのじゃ」



「これまで通りのスケルトンに加え、このマグリを倒すのを目標とする!!」





 そう言うと、マグリは興奮しているのか大量の砂塵をあたりに撒き散らす。



 突然のことで俺は目や口に砂が入り悶絶する。





 俺は涙目になりながら、マグリを見る。







 すると先ほどとは打って変わり殻が閉じ中が見えない状態になっている。





「こやつはアキトじゃ、これからの特訓相手になるやつだからの頼んだぞマグリ」





「アキト殿、拙者は不器用なもんで手加減ができぬ…そこのところよろしく頼む」







「ああ、問題ない」





 手加減はいらない、俺は早くレベルをあげる必要があるからな。





「ではあと19日で目標はスケルトン100体+マグリを倒すことじゃ!わしもその辺りで魔法の特訓をしているから何かあったら呼ぶように」





 そう言いスケルトンを召喚してシロネは行ってしまった。







 さぁて始めますかね。







 俺は眼前にいるスケルトン15体とその後ろに控えているマグリを見据える。







 これまでと変わらないスケルトンはともかくマグリがどんなことをしてくるのか謎だが、そこはこれからちょっとずつ観察していきますかな。









 するといきなりスケルトン4体が合計16本の矢を放ち、前衛の大剣持ち3体と片手剣持ち4体が左右に別れ別々に攻撃を仕掛けてくる。後ろにいる4体の杖を持った魔法系のスケルトンが前衛全員に攻撃と防御をあげる魔法を放つ。



 俺はまずスキル『重力圧縮波/グラヴィティウェブ』を放ち上空から向かってくるやを全て撃ち落とす。



 その隙に大剣持ちスケルトン2体が両上段からタイミングをずらしながら大剣を振り下ろしてくる。



 3体目はその間に俺の後ろに周り下段から大剣を俺に向かって振り上げようとする。





 この前より連携が上手くなっててかなり驚きながらもなんとか振り下ろされてくる2本の大剣を体を捻りながら後方に飛び回避しそのまま後ろに回ったスケルトンが下段に構えた瞬間、俺はスキル『重力拳/グラビティナックル』を使い左拳をスケルトンの頭にめがけ捻りながら回避した反動を使い殴打する。


 一瞬でそのスケルトンの頭は後方へ飛ぶ、間髪入れず片手剣持ちのスケルトン4体が代わりがわりに斬りかかって来る。


 大剣持ちのスケルトンは態勢を立て直すと一旦後方へ退避する。そして4体のうち2体の片手剣持ちスケルトンが交互に俺の顔を狙って斬りつけてくる。



 残り2体は後ろに回り込み退路を断ち、片手剣で応戦する。


 今俺は4体に囲まれている。このままでは回避ができないのでスキルを放とうとした瞬間だった。



「スキル『水刃/スラッシュ』」


 マグリがスキルを放ってきた。『水刃/スラッシュ』は水を圧縮した水弾で、鋭い切れ味がある技だ。それが約10発も飛来してくる、スケルトンごと周囲に降り注ぐ。





 ぐぅっ





 何発か回避しきれず被弾してしまう。水刃が被弾する瞬間俺はスキル『重力要塞/グラビティウォール』を使いダメージを軽減する。

 『重力要塞/グラビティウォール』はダメージを軽減することができレベルが上がりスキルレベルが上がると一度に守れる範囲が大きくなる。

 そしてスケルトン4体が水刃により倒されていたのですぐに態勢を立て直し、後方にいる8体のスケルトンに対し重力範囲魔法『重力場/グラビティフォース』を放つ。8体のスケルトンは一斉に膝を折り地面に手をつく、そしてそのまま徐々に地面へ埋まっていく。

 『重力場/グラビティフォース』はある一定範囲の重力を重くしたり軽くすることができる。今回は重くすることでスケルトンは自分の重さに耐えきれず徐々に地面に沈んでいく。



 魔法を放ち、そのまま最後方にいるマグリの元へ一瞬で到達しスキル『重力拳/グラビティナックル』を放ちマグリの外皮(貝殻)に渾身のパンチを叩き込む。



 ミシッと音をたていけるかと思ったがそう簡単には崩せず、スキルと外皮の衝突の反動で弾き返されてしまう。



「固すぎでしょその貝殻」


「当然だ、この貝殻が軟ければ拙者は今頃誰かしらの胃袋の中となろう」





 残っていた大剣持ちスケルトンが背後から襲いかかって来るがそれは把握済みで、斬りかかる瞬間腕を上にあげたその時にスケルトン2体の腕の関節に向かってスキル『重力圧縮波/グラビティウェブ』を放ち二点に向かって放たれた重力圧縮波は関節で収束しスケルトンの腕を木っ端微塵に粉砕する。



 そして落ちた2本の大剣を手にし、重力範囲魔法『重力場/グラビティフォース』を発動し、範囲を大剣だけにする。



 俺は振り返りにやりと笑いながら、マグリの頭上まで飛び。その2本の大剣をマグリに向かって全力で投げる。





 マグリは大剣で斬りかかって来る予想で態勢を取っていたので俺が投げた大剣に反応が少し遅れ、2本の大剣が外皮にぶつかる瞬間、重力場で大剣2本の重さを5トン近くに設定する。





 口の中で塩抜きをあまりしなかった貝を食べてなる不快な音が耳に響いて来る。





 刺さった大剣2本を中心としてそこから放射状に亀裂が入り粉々に砕けてしまう。





 まさか……1日で終わってしまうとはなーー




 上の殻を砕かれ中身が丸見えのマグリは、驚いたようにこちらを見て来る。





「まさか1日で拙者の殻を破るとはさすがシロネ殿が連れてきただけはある」





 おぉこれは素直に受け取っておこう。俺も実はここまで上手くいくとは思っておらず驚いていた。ていうかマグリさんの殻って治るよね……知らんぞ……



 その思想から逃げるべく減ったスケルトンの数を増やしてまた再戦だなと思いスケルトンを召喚してもらうべくシロネがいる場所へ向かう。







 さっきまで辺りが砂埃まみれだったのに気づいたら収まっており静かな雰囲気になっていた。





「シロネ、終わったぞ~次のスケルトンの準備してくれえ」





 気怠そうに伝えると座った態勢からこちらを振り向き”ん”と頷きスケルトンを20体召喚する。





 いや……いきなり増えすぎじゃありませんかねシロネさん……





 俺は召喚されたスケルトンの方へ出向くべく元いた方向へ踵を返す。







 さぁて第2ラウンドと行きますかねーー
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